2023年10月27日から30日にわたって、米国の自治領であるプエルトリコで「IPRN(International Public Relations Network)」という国際的PRネットワークの年次総会が開催されます。
本コラムでは、この年次総会のレポートを通じて、「国際的PRネットワークとはどのようなものか」「ネットワーキングを通じて得られた海外のPR動向」やグッドプラクティスなどを紹介します。
企業の広報担当者にとって、国内だけでなく、海外におけるコミュニケーションの潮流への理解を深めておくことも重要です。コミュニケーションに携わる皆様にとって、学びのある連載になれば幸いです。
ここで私の自己紹介を。私は、コミュニケーション・PRのコンサルティング会社、Key Message International(以下、KMI)代表取締役の岩澤康一です。
これまで国内/外資のファームなどで積んだ、デジタル・グローバルな広報・PR経験を踏まえながら、グローバルPR市場の課題をお伝えします。
国際的PRネットワークとは?
さてまず、「国際的PRネットワーク」について解説します。「国際的PRネットワーク」とは、広報に携わるさまざまな国の会社や個人が参加する、組織・ネットワークのことです。
国際的PRネットワークに属すると、日本市場以外で活躍する他国のPR会社とのメンバーシップをテコにした連携が叶うほか、さまざまな国や地域のPR業界動向やノウハウ、資料、グッドプラクティスなどを知ることができます。また、メンバー間のネットワーキングを通じてこそ実現できる国際的なPR業務への参加などが挙げられます。
ではこうしたことは、国際的PRネットワークに属さないと叶わないのでしょうか。広告・PRのグローバル市場の特性から、その背景を少しだけ解説します。
4大メガエージェンシーと外資系PR会社
世界の広告市場では、電通に加えて、4大メガエージェンシーと呼ばれる広告代理店グループが売上高上位を独占しています。4大メガエージェンシーとは、WPP(英)、オムニコム(米)、インターパブリック(米)、ピュブリシス(仏)のグループです。
外資系PR会社もこれらのグループに属していることが多いです。
例えば、WPPにはヒル・アンド・ノウルトン、オグルヴィ・パブリックリレーションズ、バーソン・コーン&ウルフ。オムニコムにはフライシュマン・ヒラード。インターパブリックにはウェーバー・シャンドウィック、ゴリン。ピュブリシスにはMSLなどが関係企業です。これらのグループに属さない会社は、いわゆる独立系と呼ばれます。エデルマンは代表的な、独立系の外資系PR会社です。
これらのグループに属していないと、国際的な案件の取得などは難しいのが現状なのです。これは、私自身も実感していることです。
私は現在、自分で立ち上げたKMIの代表をしていますが、以前は4大メガエージェンシーに属する外資系PR会社で働いていました。当時、グループに属する世界的に有名な広告会社やブランド会社などとスムーズに連携できたことは、大きなメリットでした。もちろん、外資系PR会社の日本オフィスに勤務していれば、他の国の自社オフィスとの連携は十分に可能でした。
しかしながら、KMIを立ち上げてからは違いました。当社はその名に“International(=国際的)”を冠しているものの、国内にだけ目を向けている限り、外資系PR会社の日本オフィスにめぐってくるような国際的な案件や、会社間の連携、ネットワーキングによる関係構築機会には、縁遠くなっていきました。
そんな懸念を抱いていた折、以前関わっていた組織へコンタクトしてきたIPRNという国際的PRネットワークを思い出して入会希望を提出。晴れてIPRN、国際的PRネットワークの一員になりました。
その成果はというと、入会以来3か月の間に、スペインの会社からの紹介で米国の大きな観光案件や、東欧からは2025年の大阪万博関連の業務、ドイツからはIPRN内のテーマ別グループへの誘いなど、国際的なPR案件に携わることにつながっています。
では次に、IPRNについて簡単に説明します。
国際的PRネットワーク、IPRNとは?
IPRNとは“International Public Relations Network”の略で、日本語ではまさに、「国際的PRネットワーク」です。
設立は1995年。2023年10月現在、世界30カ国以上から、50以上のメンバー会社や個人が、100以上の大都市で活動する規模の組織に成長しています。独立系のPRに携わる会社や個人による国際的ネットワークとしては、世界最大級とのことです。テクノロジー業界や観光業界に強いメンバーで構成した産業別グループも立ち上がっています。
いざIPRNプエルトリコ年次総会へ
このIPRNは、毎年、世界各国のメンバーが一同に会する年次総会を開催しています。
総会では、IPRN内のアワード受賞者発表や新メンバーのプレゼンテーション、ゲストスピーカーによる基調講演、さらには、グローバル市場でのPRの未来などについての議論やブレーンストーミングなどが行われるなど、PRのグローバル動向がタイムリーに分るコンテンツが満載です。
新メンバーである当社も英語でのプレゼンテーションをする予定です。もちろん、年次総会への参加は私自身、初めてです。
今年の案内には、「パブリック・リレーションズの将来を占うグローバルな集い。新たな視点を発見し、貴重な人脈を築き、業界の多様性を称えましょう」、「プロフェッショナルな卓越性とカリブ海のホスピタリティが融合した魅惑の島で、みなさんをお待ちしています」(筆者訳)などの文言が躍り、メンバーをカリブ海の「美しい港」(プエルトリコ=Puerto Ricoの和訳)へと誘います――。
次回の連載第2回では、IPRNの年次総会の意義やコンテンツについて、より詳しく紹介します。ぜひご期待ください。