ボルボ・カー・ジャパンは2023年8月、同社最小の新型SUV「EX30」を発表した。それに合わせ、全国4都市でキャンペーンを展開。街角にミニチュアのショールームを設置した。
商品コンセプトを活かしたキャンペーン
大型のフォルムに頑丈なボディ。ボルボといえば、こうしたボリュームのある車というイメージが強い。今回発表された「EX30」はそのイメージと異なり、“ボルボ史上最小”を打ち出す電気自動車の新型SUV だ。
「道幅の狭い日本の道路事情やタワーパーキングの利用にもマッチした、コンパクトなSUV を開発しました。従来よりも若い方の購買を想定していますが、若年層はそもそも車への関心度が低い状況もある。車を所有しない人も多いため、ショールームに足を運ぶきっかけがないわけです。そこで車を中心としたPR ではなく、世界観や狙いが伝わるようなアプローチで、気軽に接点を持てないかと考えました」。
そう話すのは、ボルボ・カー・ジャパン ブランドマネージャーの北川美由紀さん。新型SUVの特徴を活かしたキャンペーンを画策した。企画を手がけたのはグレイトーキョーCCO の多賀谷昌徳さん率いる新チーム。従来の車の広告の文脈にはない表現を模索していった。
「今までボルボに興味のなかった人、さらに言うと車に興味のない人へのリーチを目指すとなると、これまでのボルボの広告のあり方とは違う発想が必要だなと。そこで、『EX30』の“Small is mighty(小さくても大きな魅力)”というコンセプトを元に、商品の特徴でもある小さいという部分を活かした見せ方や体験を考えました」。
そこから生まれたのが、ミニチュアのショールームをつくり、街角に設置するというアイデアだ。「街行く人のほとんどは、ボルボのことを考えて歩いてはいません。でも予想外の場所で、ふと目に入るような位置に、このショールームが存在したら、新しい体験をつくれるのではないかという発想です」と多賀谷さん。既存のメディアやショーケースのような場所も考えたが、小回りの利くコンパクトな「EX30」のキャンペーンだからこそ目立つところではなく、街角の小さな隙間に設置することに。
設置場所は制作チームだけでなく、ボルボのマーケティングチームも案をだし、直接土地のオーナーに交渉。最終的に設置したのは東京・名古屋・大阪・福岡の4都市11 カ所で、それぞれ50 カ所ほどの案から選定した。場所探しから設置までは1 カ月ほどかかり、電源の有無など、複数の条件に合致する場所を探していった。
新たな顧客接点になる可能性も視野に
ミニチュアは、東京・青山のショールームを再現した。「“小さな営み”というのを大事にしています。青山のショールームには車の後ろにスクリーンがあります。それを再現するため、スマートフォンのような小さな液晶をミニチュアにも設置し、プロモーションムービーを流しました。また、接客風景は顧客とブランドアンバサダーの実際のやりとりを撮影し、ホログラムで投影し出現させました」と多賀谷さん。併せてミニチュアの制作風景を撮影し、その動画をキャンペーンの開始前にティザーとして公開した。この取り組みも、これまでのボルボのPR とは一線を画すアプローチだ。
SNS 上では多くの反響があり、特に子ども連れや若者がミニチュアの前で撮った写真を投稿するなど、当初の狙い通りに情報が広がっていることが確認できた。
小型のショールームについては今後、街頭での新たな接点として活用可能性を探っている。「ルーフ部分に配した二次元コードから、試乗やサブスクの予約に繋げるなど、新しいユーザーインターフェースとしての機能も試みています。実際のショールームを構えるには莫大なコストがかかるので、こうしたミニマムな接点を複数持つことはこれからの新しいモデルになるのではないでしょうか」(多賀谷さん)。
スタッフリスト
- 企画制作
- GREY Tokyo+東北新社+メディアコンシェルジュ
- ECD
- 多賀谷昌徳
- CD
- 阿部光史
- ACD+AD
- 栗波亮
- AD
- 田中琢也、赤井一成
- STPL
- 小口弘太郎
- Pr
- 小尾奈央子、伊東宏
- PM
- 荒井美月
- TD
- 森正徳
- 演出+DoP
- 野澤亮介
- 照明
- 濱田博史
- 美術
- 野沢瑶平
- ミニチュア制作
- カーリアン
- AE
- 岡咲匡彦、宇田川直、福田恵、内田さやか、阿久津花奈
- 設置場所
- 東京(原宿・表参道)、愛知(名古屋・栄)、大阪(大阪・梅田)、福岡(天神)の4都市11カ所