小売アプリ横断の広告配信も
NTTドコモは10月25日、流通小売業向けのマーケティング支援事業として「リテールDXプログラム」を立ち上げた。集客だけでなく、出店計画や商品仕入れの最適化などバリューチェーン全体を担う。NTTドコモは同プログラムを含むマーケティングソリューション事業全体で、2023年度に1000億円超の売上を目指す。
ドコモの共通ポイント「dポイント」会員約9600万人の属性や位置情報のほか、スマホ決済サービス「d払い」、「dポイント」加盟店のID-POSデータを活用する。「dポイント」加盟店は10万2224店舗、「d払い」加盟店は実店舗だけで数えると270万3471店舗の規模を持つ。
流通小売業向けにデータ提供をするほか、インテージホールディングスやフェズを通じてDX(デジタルトランスフォーメーション)の実行支援に乗り出す。インテージHDは10月23日付で買収し、子会社化。ID-POSなど購買データを基に消費者分析などを行うフェズには、10月25日付でCVCのNTTドコモ・ベンチャーズを通じて出資し、NTTドコモと業務提携した。昨年、両社間ではマスターデータを連携させるなどして相乗効果を得ていた。
広告による流通小売業の収益化も支援する。NTTドコモ子会社のDearOneは10月25日、流通小売業が個々で提供する会員向けのスマートフォンアプリを横断して広告を配信できるサービスを開始した。同日時点で13社9276店舗、月間利用者数で1427万ユーザーに対して広告を配信できるという。ことし7〜8月に実施したテストでは、「一般的なディスプレー広告の平均クリック率の3〜5倍となった」と手応えを得た。
NTTドコモは中期経営計画で、個人向け携帯電話事業以外の売上比率を2025年度までに50%以上に伸ばす目標を掲げている。マーケティングソリューション事業は、その「非通信」事業の片翼を担っている。
リテールメディアは世界的に伸び
小売業の持つメディア(=リテールメディア)に対する広告費は、世界的にも伸長している。広告市場調査などを手がけるWARCの予測では、リテールメディアの広告費は2023年に1282億ドル、2024年には23年比10.2%増の1417億ドルとなる。アリババの強い中国市場と、世界トップのアマゾンを除いても22年の55億4000万ドルから、23年は63億ドルと増加した。
「小売やショッパーマーケティングの世界はデジタル広告の巨人へと姿を変えた。リテールメディアがもたらすデータが、キャンペーン全体に影響を及ぼし始めるだろう。検索広告だけでなく、動画や音声、OOHへも移行してきた。広告主にとってリテールメディアは、『ペイ・トゥ・プレイ』〔支払うことが参加条件〕の環境になりつつある懸念もある」(WARC)