Cookieレス時代の到来、広告・マーケティング業界への影響を読み解く

2024年からいよいよGoogleもCookieを削除する事を正式発表した。Appleは既に2017年以降から削除しており、Googleの発表によりインターネットからCookieが消えることが事実化される。Cookieレスがもたらす影響と今後広告主や各代理店はどうしてゆくべきかを考えていく必要がある。そこで、グローバルメディアエージェンシーIPG Mediabrands のロンドン支社でメディア営業を担当する忍久保恵太氏が、Cookieレスがもたらす現実と今後の影響を解説する。

Cookie利用制限の背景とは?

サードパーティ Cookie利用の規制に伴い、プライバシーを保護した新しいリターゲティング技術の開発が必要になっている。デジタル上での対象顧客へのリーチに悩みを持つ広告主も多いのではないだろうか。

それでは、改めてここでCookieとは何か。おさらいをしておきたい。Cookieとは、Webサイトを訪れた際にコンピュータにダウンロードされる、文字と数字のファイルを指す。多くのWebサイトで使用され、使用者のWeb履歴を記憶したり、ショッピングカートに入れた商品を記録したり、Webサイトを見ている人の数を数えたりすることができる。Cookieにもいろいろと種類があり、ファーストパーティCookieからサードパーティCookieなどがある。

  • 〇ファーストパーティCookie: ユーザーが訪れたWebサイトのドメインによって保存、所有およびドロップされるCookie
  • 〇サードパーティCookie:ユーザーが訪れているWebサイト以外によって作成および保存されるCookie

現在、Cookie規制で問題となっているのは、上記で言えばサードパーティCookieのことだ。では、なぜサードパーティCookieの利用が制限されるようになったのか、その背景を列記すると以下の通りとなる。

【サードパーティCookieの課題・問題】

  • •同意が明白でないこと
  • •すべてのブラウザとすべてのチャンネルで使用は出来ない
  • •寿命が短い
  • •廃止のプロセスがもう既に始まっている

 

Cookieレス(Cookieが排除されること)がマーケティングに与える影響

デジタル広告のマーケットでは長らく、主にユーザーエクスペリエンス向上を目的としたWebサイトの最適化と、広告の最適化を図るためにCookieに頼ってきたが、データプライバシー侵害に対する懸念から、大手テック企業はサードパーティのトラッキングを排除している。具体的にはFirefoxは24時間後にCookieを削除、SafariはサードパーティCookieがブロックされ、Google ChromeではCookieは段階的に廃止される(Googleは2023年5月からCookieを削除し始めた。今後プライバシーも保ち、最も価値のあるデータを整理し、活用する新しい方法を見つける必要があることを意味する。

 

数々のマーケティング戦略にも影響を及ぼす

これまでCookieを通して、リターゲティングやルックアライクモデリング(主要な特徴を分析し、対象と似た特性を持つユーザーを見つけ出す手法)など、オーディエンスをターゲットする手法がCookieレスの時代にはできなくなる。

キャンペーンの効果を測定する手法、フリークエンシー コントロール(ユーザーに対して広告が表示される回数を制限する手法)、オプティマイゼーション(望むキャンペーン結果を得るために、Webサイト、広告キャンペーン、プロダクト、顧客サービスなどを改善する手法)、クロスサイトトラッキング(オンライン行動を追跡し、ブラウジングの習慣を理解する手法)なども今後対応が可能なのかを検討する必要が出てきた。

注1) UMロンドン

この影響を見越して、Cookieの利用規制で影響を受ける広告ビジネスの関係者はそれぞれファーストパーティーデータの蓄積やコンテクストを中心に対処方法を検討している。

•ビッグテック

  • 〇プラットフォーム内収益化に焦点を当て、自社のファーストパーティーデータを活用している。
  • 〇責任をユーザー/広告主に委ねる傾向にある。

•媒体社

  • 〇ファーストパーティーログイン、データ協同体の構築。
  • 〇コンテクスト手法を模索中。
  • 〇スケールを大きくするために合併と買収を見計らっている。

•マーケティングテクノロジー

  • 〇Cookieから転換し、新しい手法を開発中。
  • 〇コンテクストに重点を置く。
  • 〇法的に適合したプライバシーソリューションを主張。

•ブランドおよび広告主

  • 〇スケールを見つけるためのファーストパーティーデータ戦略への転換増加。
  • 〇プライバシーコンプライアントな手法を作成。

認知獲得や購入意向の向上を目的としたマーケティングファネル上部における広告手法は、コンテクストターゲティングやGoogle、Amazon、Metaなど自家データを所有している媒体社の広告データを通じ、ターゲティングの精度を維持し続けることは可能だが、購入時・コンバージョン時に成果を最大化することを目的にしたターゲティングやパーソナライズド広告の配信などの手法を用いる際には、Cookieレスの時代においては、代替手段が激減する。

注2) UMロンドン

 

今後のデジタル広告及びにデータ管理の課題

また、広告代理店は認知獲得について、以前はサードパーティCookieに頼っていた手法以外の手法を検討すべきである。主にコンテクストターゲティングなどを検討する必要性が出てきている。

顧客が購入意向を持つ段階では、Google、Amazon、Metaなどの媒体社を通じ行動や趣味をもとにターゲティングするデータおよび長期の解決策を共に考える必要がある。広告主と広告代理店はファーストパーティーデータやCRMデータを蓄積、長期に渡って使える方法を共に考える必要があるとみられる。Cookieレスがもたらす影響は大きく、今後のデジタル広告及びにデータ管理を再度検討し、長期にわたって使用可能な戦略を立てる必要性が今もうすでに迫っている。

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IPG Mediabrands
忍久保恵太氏

ユニバーサル・マッキャンで様々な得意先のヨーロッパビジネスをグループディレクターとして営業を束ねる。得意先のビジネス・コミュニケーション目標設定から、全体的なマーケティングコミュニケーション開発からターゲット層に合ったプランを設計し、効果を図るソリューションを提供。




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