今回は、船舶用電子機器で世界トップシェアを誇る「古野電気」のオウンドメディア「Furuno Style」について、話を聞きました。自社のアピールだけでなく、販売促進にもつなげる、メディアの戦略が見えてきました。
※本記事は10月1日発売の月刊『広報会議』2023年11月号 の転載記事です。
DATA
- 開設
- 2010年3月
- 所管部署(うち担当者数)
- 舶用機器事業部 営業企画部 宣伝課(内2人)
- コンセプト
- 魚群探知機を使った釣りの楽しみ方を伝える。
- 制作体制
- 社内担当者2名と外部ライターで制作。外部ライターは当社契約のフィールドテスターや元社員など。
- 更新頻度
- 月1~2本
- 総記事数
- 約243本(9月1日時点)
- PV数
- 約3~4万/月
- CMS
- 不使用。HTMLとCSSで制作。
- 効果測定
- PV数
船舶用電子機器で世界トップシェアを誇る古野電気。同社は2010年に魚群探知機(以下、魚探)に特化したメディア「Furuno Style」を立ち上げた。
当時、ボートフィッシング(フィッシング装備を施したボート)市場では、「魚探は持っているが使いこなせていない」という人が多く、魚探の活用方法を広めるという課題があった。
そこで、同社では魚探の使い方や映像の見方を、展示会の講演やビデオの制作販売などのオフラインで発信。するといずれも反響があり、特にボートフィッシングの第一人者であり、同社のフィールドテスターでもある小野信昭氏の講演は毎回盛況となった。
魚探の使い方を伝授することに使命を感じ、有益な情報をより幅広い層に発信するべく、同メディアを開設した。ボートフィッシングの魅力を伝えることで、ファン獲得はもちろん、「海に行ったあとに、もう一度記事にアクセスしてもらう」といったサイクルづくりを目指している。
営業色を排除し、ファンを獲得
ターゲットは「釣りが好きな人」と広く設定。既に魚探を持っているユーザーには実用的な内容を提供しファン化。ボートや魚探を購入検討している人にはボートフィッシングの醍醐味を伝える情報提供で、将来のユーザー醸成を目指している。
最も重視するのはユーザーに「役に立つ」こと、ひいてはボートフィッシング界全体の盛り上がりへ貢献すること。そのため、営業色は出さず、他社の魚探を使用している人にとっても参考になる情報を提供している。
「『どうせ広告でしょ』と途中離脱されないように配慮しています」(舶用機器事業部 佐々木幸代氏)。
同社のフィールドテスターでもある小野氏の連載記事「魚種ごとの反応」では、魚の動きを魚探の画像とともに解説。使用する魚探の周波数や水深や海底質など、様々な条件ごとに網羅的に記事を作成している。
すると、検索ワードが開設から1~2年ほどで「古野電気魚探」から「古野電気鯛」などに変化。「魚を釣りたいときには古野電気」という価値観が醸成された。
識者による執筆で価値向上
現在は、月に1、2本のコラムと1本の映像を更新。記事制作は、フィールドテスターの小野氏をはじめ、マリン媒体専属ライター、釣り好き社員など、魚探やボートフィッシングに造詣が深いライターと連携している。写真やイラスト・動画を掲載し、知識だけでなく現場の臨場感を伝える、ターゲットに刺さるコンテンツに。
企画会議ではSNSのアナリティクスの分析などから、発信方法や企画を検討するほか、小野氏や社内開発部から記事・動画の企画をもらうことも。社内でも「プレジャー関係は『Furuno Style』に掲載したら効果が出る」という認識が広がってきている。
メディア→SNS→販促へ活用
同メディアではSNSも活発に活用することで、販売促進にもつなげている。メインターゲットの……続きはこちらの記事からご覧いただけます。
広報会議の連載「オウンドメディアの現場から」では、ほかにも様々な業界・業種のオウンドメディア制作の裏側に迫っています。