(本記事は月刊『宣伝会議』12月号巻頭特集に掲載されているものです)
川島佑太氏
オープンハウス
マーケティング部 事業推進グループ グループマネージャー 次長
慶應義塾大学理工学部卒業後、2014年度に新卒でオープンハウス入社。営業職として戸建仲介営業を経験後マーケティング部へ異動。自社独自のCRMツール改善を担当。その後リードナーチャリング・マーケティングオートメーション等のCX業務を行い、現在は事業推進グループ長として戸建、マンションや買取事業を担当。
デジタル施策を起点に2つのフローでKPIを管理
当社が扱う戸建て住宅やマンションなどは、高額なため慎重に比較検討した上で購入に至る、いわゆる高関与型の商材です。多くの人にとって人生で一度きりの買い物。コミュニケーションによってLTVを上げるといったマーケティング設計ではないことが、ひとつの特色です。
そこで、本稿では事業の拡大に寄与し、かつ従業員のモチベーションを高めるためのKPI設定方法について説明したいと思います。
【図表1】では、計測の起点となるデジタル施策(黄)から、大きく2つの計測指標に分かれていきます。上の青枠内に示すのが直接、計測可能な指標で、費用対効果を測るためのKPI。対して下の赤枠内に示すのは、独自に設定したモデル指標で、施策の「ヘルスチェック」を行うためのKPIです。
1.費用対効果を測る(青枠)
まず青枠内について、デジタル施策を経てWebサイトに着地し、最終的に契約に至るまでにいくつかのコンバージョンポイントを設定しています。大切なのが、Webサイトで得られる「オンライン情報」の先にある、営業担当がお客さまと接点を持つ「オフライン情報」。案内率や、そのお客さまがご購入に至ったかという「契約率」までを計測可能にしている点です。
2.個々の施策を計測可能に(黄枠)
そして次のポイントが、個々のデジタル施策を細かい粒度まで測定できるようにしていること。Web広告であれば、広告媒体の種類だけでなくその検索ワードは何かなど、青枠以降のデータと連動した分析が可能です。
3.振り返りと未来予測(赤枠)
「1回きりの買い物」であると考えると、青枠のフローで後半になればなるほど、ボリュームが少なくなり、KPIとして評価しづらくなってしまいます。そこで設定したのが、赤枠内の「間接的なモデル指標」です。
「ヘルスチェック」は、マーケティング施策の健康状態。お客さまに与えている影響が健全なのか、または異変があった場合に早く気付くためのものです。一般的にLTV最大化を目指しエンゲージメントを重視する商材で用いられる「ヘルススコア」にも似ています。
当社では独自の指標でお客さまの熱量を5段階のファネルで分け、毎日、各ファネルに何名のお客さまがいて、その中で購入に至った人は何人いるのかを可視化しています。
これにより直近のマーケティング活動がお客さまに、どのような影響をもたらしているかを確認でき、各ファネルのボリュームに応じて、次にとるべき施策を検討できるようになるのです。
大きく感情が動かないとクリックにはつながらない
マーケターとして忘れてはいけないのが、最終的に「データを感情に戻すこと」です。
…この続きは11月1日発売の月刊『宣伝会議』12月号で読むことができます。
『宣伝会議』12月号(11月1日発売)
- 特集
- 業種・施策別にトップマーケターが解説!
- マーケティング活動
- KPIの設計と運用
- 〇AI全盛の今、マーケターに求められる
- ビジネスを成長させる「一段上」の視点
- 今西陽介氏
- 〇認知から購入まで距離がある商材は
- どのようにKPIを管理すべき?
- 川島佑太氏
- 〇縁をひとつも無駄にしない!
- KPIは顧客との「対話」のための道標
- 松下沙彩氏
- 〇マス媒体×デジタル媒体における
- 事業起点のリソース配分の考え方
- 南坊泰司氏
- 〇Brand・Trust・Demandの3つの観点で
- フルファネルのアプローチ状況を補足
- 渡邊隆尚氏
- 〇「なんとなくの運用」を脱する!
- サービス獲得につなげるSNS活用
- 西川貴規氏
- 〇どこまで共有、どうやって連携?
- 外部パートナーとのKPI共有
- 田中奏真氏
- 〇適切な戦略・戦術でKPIは決まる!
- 中小企業のマーケティング
- 大森研治氏
- 特集2
- バズるだけでは終わらせない!
- SNSマーケティングの成功事例
- 特集3
- 商品を魅力的に見せる!
- 「売りにつながる」文章の書き方
- 特別企画
- 第61回「宣伝会議賞」