欧州データ保護委員会が措置決定
欧州連合(EU)のデータ保護委員会(EDPB)は11月1日、EUと欧州経済圏(EEA)で、「Facebook」や「Instagram」などを運営するメタ社に、行動ターゲティング広告のための個人データ処理を禁ずる措置を決定したと発表した。
10月31日、アイルランドのデータ保護局を通じ、同国にあるメタの欧州本社に通達した。アイルランド・データ保護局は並行して、メタ社による「同意の取得によってターゲティングする」という提案について、関係当局と審議しているという。
EU非加盟国であるノルウェーのデータ保護局はことし7月、同国におけるメタ社のターゲティング広告のための個人データ処理を一時的に禁止。メタ社は差止請求を提起したが、9月にもオスロ地方裁判所が請求を退け、ノルウェー・データ保護局の決定を支持していた。また、同局はEDPBに対し、データ処理の禁止をEU・EEA全域に広げることを要請していた。
メタは10月30日、「Facebook」や「Instagram」を広告なしで利用できる有料プランを欧州圏で開始すると発表した。合わせて18歳未満の利用者には広告表示を一時的に停止するとみられる。
広告なしの月額プランは11月開始で、18歳以上が対象。価格はWeb版では月額9.99ユーロ(約1590円)、スマートフォンアプリではiOS、Android共に月額12.99ユーロ(約2060円)で提供する。アプリ版はアップルやグーグルの手数料分を上乗せした。
欧州で昨年11月に施行されたデジタルサービス法(DSA)やデジタル市場法(DMA)などへの対応とみられる。DSAでは、未成年者へのターゲティング広告の表示を禁じており、メタではことし4月から10歳代のみをターゲットとした広告を停止。ターゲットに10代と成人の双方を含む広告でも、地域によって18歳未満、20歳未満、21歳未満の利用者には配信されなくなっている。
メタは広告なしプランに合わせ、「10歳代の若者に、有益で責任ある広告体験を提供する方法を模索し続ける」と発表した。
未成年への影響を問題視する動きは米国でも強まっている。10月24日には、若者の精神上の健康に害を与えたほか、連邦法に違反し、親の同意を得ずに13歳未満の子どものデータを日常的に収集しているとして、米33州の司法長官が連邦訴訟を起こした。サービス上でも、利用者のサービスの滞在時間を長くするための仕組み(アルゴリズム)や、「いいね!」、フィルター機能などが、若年層に悪影響を与えているとしている。
メタの23年12月期第3四半期の広告売上高は、欧州で前年同期比35.3%増の77億2100万ドル、米国とカナダで同比17.2%増の149億5600万ドル。