私は前職の花王時代には、EC事業を担当し、日本企業がDX推進していく様を体験してきました。改めて言うまでもなくデジタル技術を使えば、お客さまと「いつでも」「どこでも」コミュニケーションをとることが可能です。
当然のことながら、そのコミュニケーションは国境をも越えます。現在は下妻一高の副校長を務める私ですが、学校でもDX(デジタル・トランスフォーメーション)を推進し、生徒たちに新たな体験を提供すべく奮闘をしています。
先月は下妻市の友好提携都市であるフランス・エソンヌ県の高校生と英語でオンライン交流を行いました。「将来の夢」をテーマに語り合うなど、下妻一高の生徒は堂々とした会話でコミュニケーション力を発揮しました。
今回、交流したのはフランソワ・トリュフォー高に通う日本語選択の生徒20人です。両校の生徒を7グループに分けて進行しました。本校の生徒はそれぞれノートパソコンやタブレット端末を使い、準備した文章を基に英語で話しかけ、「ボンジュール」「メルシー」など片言のフランス語も交えながら「将来の夢」やフリートークで意見交換をしました。
また日本の文化を伝えるために、琴を音楽室で演奏して、オンラインで披露しました。しっかりと練習して臨みましたので、生徒の演奏も見事でした。
私も新たな気づきになったのですが、日本の学校は、行事がたくさんあるのが当たり前です。本校でも、姉妹校との定期戦や文化祭など学校行事が目白押しですが、フランスでは学校行事がないそうです。この文化の違いにも刺激を受けて、日本の当たり前が、当たり前ではないことに生徒も気づいた様子でした。
私は、これからの産業界にはより多くのグローバル人材が必要と考えています。そして、その育成のためには中高校生からの教育が不可欠と考えており、そうした想いもあって民間から副校長への転身を図りました。グローバル人材になるためにはこのような多様性を理解しなくてはなりません。まさにこれを肌で体感できる経験となりました。
私はこのイベントを通じて、先生方のDX推進に対する意識が高まったのも大きな収穫だったと思います。オンライン会議ツールを使うことで、下妻一高とフランスを繋ぎ、お互いの交流会ができる。これはデジタル技術を使わなかったらできないことですよね。琴演奏の配信もあったので、ICTの先生が中心となり、どのようにしたら実現可能か、議論を重ねました。
今回のようにデジタル空間を中心としたイベント行事の設計は、これまでリアル中心で考えてきた先生方には、少し戸惑いを隠せないところがあります。ただ、デジタル=苦手意識を、少しずつ払拭させていくためには、「デジタルツールを実際に使ってみると、こんなことができるのだ」という経験値を積み上げていくことが必要です。
今回はビデオカメラ2台とテレビモニターを使い、2次元中継を見事に実現しました。このスキームを使えば、来年の学校説明会のハイブリッド開催に応用できますねと、来年に向けたDX推進も視野に入れて取り組みました。ハイブリッド開催のイメージがつかめたようです。
デジタル技術の進歩で、国境を超えた仲間とこのような交流ができる。まさにDX推進により、新たな体験が創り出されています。
DXの取り組みをもうひとつ紹介します。高校1年生は、9月から10月にかけて文理選択を行います。この選択に際しての保護者向けた説明を、YouTube動画を使って行いました。高校1年生の学年主任が音頭を取り、DX推進をしてくれています。
YouTube動画を使うことにより、
- 1、いつでも好きな時間帯に見ることができる
- 2、わからないところは、何回でもくり返し見ることができる
など、今まで紙の資料を配っていた時にはできなかった新たな価値がうまれています。
このように、新たなチャレンジをするためには、課題を見つける能力、それを解決する能力が必要です。またそれを行動にうつす、チャレンジ精神と実行力が必要です。
高校1学年の取り組みは、学校全体にとってもいい影響を与えます。まずはモデル事例を作り、それを水平展開しながら、学校DXを推進していきたいと考えています。