【前回はこちら】パーソナルブランディング市場成長の背景にある「エゴ化」
消費者の「エゴ化」分析の一歩先へ
- 「マーケティングの本質は、心理戦」
- 「マーケティングは市場活動の成功確率を向上するもの」
この2点は、私たちエゴラボの二人の共通認識です。
第4回までのコラムで、「エゴ化による社会と個人への影響」を検討してきました。エゴ化という現象を私たちなりに分析し、解釈してきたしてきたつもりです。
私たちは、「ポジティブなエゴ」というテーマを無責任に評論し、投げ出すつもりはありません。この先、「エゴ化する消費者に対するマーケティングアプローチ」を試みていきます。ただ、正直ここからは「未踏の地」です。ですから私たちは、この活動に対して「lab」という概念で臨むことにしたのです。
エゴ化を価値観の変化と捉えてしまうのは簡単です。かつて、例えば「一億総中流化」という言葉があり、それが日本人の価値観としてマーケティングの前提になっていた時代もありました。
現在はそこから「格差社会」という分断の構造に変貌しているようですが。これはマーケティング的には「マクロ環境の把握」ということになり、解答を導出するための条件設定になります。
また、エゴ化に対応するマーケティングを「顧客から個客へ」という言い方のなかで、だから「One to Oneマーケティングである」と結論づけるのも簡単なことです。たぶん、結論的にマーケティングのフレームとしては「究極のOne to Oneマーケティング」が解答になることは十分考えられます。
しかし、それではエゴ・マーケティングをソリューションにしたい私たちは深みが足りないと思っています。もっとマーケティングの本質である「心理」を捉え、アプトプットを導出したいのです。
クリエイティブを生み出す方法論
エゴ・マーケティングは、「消費者のエゴである自己意識にアプローチするマーケティングの形態のひとつ」と私たちエゴラボは規定しています。エゴ・マーケティングでは、消費者が自分のアイデンティティや自己価値、自己表現を重要視するという心理的なニーズに働きかけ、それを刺激し購買行動がされることがイメージです。そしてエゴ・マーケティングは商品、サービス開発からマーケティングコミュニケーションにおいても適応させることができると考えています。
エゴを「自己意識」としたとき、それにねらいを定めたマーケティングはすでに存在しています。これはマーケティングの4P(今風には4C?)でいうところのプロモーション(クリエイティブ)で使用されてきました。広告のクリエーターは消費者の態度変容を促すことを目的に、ココロを動かすクリエイティブで人のエゴにアプローチします。この心理を捉えることを「インサイト」というのだと思います。
例えば、クリエイティブを生み出す方法論で「リスク査定」があります。これは広告プランニングのメソッドに組み込まれているものです。消費者は購買時に商品、サービスに対して3つのリスクを考え、クリエイティブがそのリスクを回避するように開発されるという心理アプローチです。3つのリスクとは以下となります。
- ①機能リスク:
- その商品、サービスは自分にどのような機能をもたらしてくれるか?
- ②自己イメージリスク
- その商品、サービスを利用している自分を、自分はどのように思うか?
- ③社会的リスク
- その商品、サービスを利用(使用)している自分を社会はどのように思うか?
いかがでしょうか?よければ、みなさんも最近購入したモノでこの3つリスク査定をしてみてください。きっと、自分自身では気が付かなった自己の購買意識が見えてくるはずです。そして、そこには商品、サービスそのものだけではなく、その商品、サービスの周辺環境や背景情報が自分自身を購買行動に向かわせていることに気がついたのではないでしょうか。このフィルターを通して開発されたクリエイティブはエゴを刺激し購買行動を誘発することにつながります。
消費者のパーソナルブランディングを理解する
エゴ・マーケティングのアウトプットとして、心理的なアプローチをプロダクト(商品、サービス)からおこなうことはできないか?と考えています。プロダクトがあって、それを売るために苦心して心理市場のポジショニングを獲りに行くマーケティングコミュニケーションの上流からエゴに対してアプローチをするのです。
その入口として「カスタマイズ」がキーワードになった商品が多く登場してきています。例えば、大手コーヒーショップでは好みのミルクを選ぶことができますが、最近ではそのカスタマイズのレシピを顧客が考えSNSで拡散し、そのレシピ画面をショップで店員に見せて注文するなどのやり方も流行っているようです。またD2Cの世界では、自分の髪質に合わせて数万通りの組み合わせの中から選べるシャンプーなども出ています。
これらは商品開発の時点で消費者のエゴを想定しているといえます。広告クリエイティブで反映していた時より上流工程にエゴ化対応を進めることができます。
まだ仮説ではありますが、さきほどの「リスク査定」を「チャンス発想」に転換して考えてみる方法があるのではないかと考えています。
- ①パフォーマンスチャンス
- 自分の現在状況を打開するために必要な機能とはなにか?
- ②自己イメージチャンス
- 自分の現在の状況を考えた時に自分自身は納得できる商品、サービスとはなにか?
- ③社会的チャンス
- 自分の現在の状況を考えた時に社会が肯定する商品、サービスとはなにか?
このように考えた時に、重要になるのは消費者のパーソナルブランディングを理解することになります。前述のカスタマイズは、あくまで「既製品を注文に応じて改変すること」なので、まだ主体は提供者にあります。これをさらに進化させるためには、消費者がどのような志向によってエゴ化しようとしているのかをしっかりと把握することがエゴ・マーケティングとしてのアウトプットに近づくと想定しています。
一方、エゴ・マーケティングにおいて世代による価値観は大きな要素であると考えています。なぜなら、世代によって異なる時代の文脈を持ち、心理的ニーズが求める自己に対する価値も異なると考えられるからです。
エゴラボでは、最低限以下の世代分類でエゴ化の特性があると考えています。
- ● ベビーブーマー世代
- ● X世代
- ● ミレニアル世代
- ● Z世代
次回(11月18日)は、この中から消費行動として注目していきたいX世代に関しての考察を進めていきます。