X世代の価値観やニーズをエゴ・マーケティング視点で分析する

【前回はこちら】エゴ化する消費者にどうアプローチすべきか

エゴ・マーケティングと世代論

私たち「エゴマーケティングラボ」の二人はX世代です。

どうもこのX世代という呼ばれ方にしっくりとしません。まだバブル世代と呼ばれるほうが自虐的な意味も含めて実は納得感があります。

正直、私たちは世代論には懐疑的です。「✖✖✖世代は〇〇〇だよね」というような証明されたこともないことをもっともらしく結論づける風潮に多少うんざりもしています。ただ、世代論はある人によれば血液型より「当たらずとも遠からず」のようであり、因果関係はなきにしもあらずということらしいですが……。

さて、そのような私たちがエゴ・マーケティングにおいて世代論を持ち出したのには二つ理由があります。

一つは、エゴ・マーケティングは「心理戦のマーケティング」であるため、その時代に育った人たちにとっての社会環境、経済環境が変数として必ず作用しているであろうと考えています。

また、もう一つは、この連載の第1回でお伝えした通り、そもそもエゴ・マーケティングという発想に至ったきっけが私たちの世代への問題提起だったため、この世代を知ることが必要なのです。

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エゴ化は個人差があり、全てのX世代の人々が同じようにエゴ化するわけではないでしょう。社会的な要因、家庭環境、価値観、個人の性格などが、エゴ化の度合いに影響を与えるはずです。そしてそのなかで共通項を見出すならそれは世代論ではないかと考えたわけです。そのためここではあえて私たちはX世代を取り上げてエゴ・マーケティングに対する考えを深めていきます。

絶えず変化への対応を求められたX世代

人生100年と言われ始めている今日この頃、X世代はマーケティング的にこれまでにない性格の世代になると私たちは考えています。

X世代は、1965年から1980年までに生まれた世代を指します。2023年時点では、X世代の年齢は約43歳から58歳です。だからと言って1981年生まれのキャラクターがガラッと変わることはあろうはずもありません。X世代はベビーブーマー世代に次ぐマーケット規模を誇ります。社会的には上層のポジションにいる人も多く、富裕層の含有率も高めだと思われます。

この世代の上はいわゆるベビーブーマーでマーケティング的には「量的に魅力があった世代」と言えます。一時期、この世代を狙ったシルバーマーケティングなるものを様々な企業で志向しました。しかし、あまり成功したという話は聞きません。

たぶん、安定した環境で過ごし、変化を求めない世代であるためマーケティングの刺激に対しての反応が薄いのではなかと私たちは思っています。そしてなによりも、この世代は「逃げ切れる」世代なのです。

それに対して、X世代は「トランスフォーメーション」が求められる世代です。テクノロジー進化の真っただ中にいたと言っても過言ではありません。

私たちが入社した当時は、手書きの企画書でした。ワープロが普及し始めた時はワープロ室があり、ワープロの取り合いです。そしてパソコンが一人一台になり、そのパソコンがネットワークでつながっているのが現在で、さらに会社に出社しなくても許される在宅勤務まで登場しました。適応しなくては生きていけなかったというのが本音でしょう。

また、バブル崩壊もありました。中には超就職氷河期の年代の人たちもいます。リーマンショックもありました。ちょうど景気が緩やかに上向いた時に起こった出来事でした。企業はそのようなリスクを前提にした運営に姿を変えていきました。

終身雇用はあたり前ではなくなり、「自己責任」が求められてきてもいます。もちろん悪いことばかりではなく、それなりにこの変化のなかでいい思いをした人もいるはずです。このようにX世代はいい意味でも、悪い意味でも安定した環境で過ごしていないのです。

私たちはX世代を「吸収力と適応力」がある世代だと考えています。ですからマーケティング的に考えて質的に魅力があると結論づけているのです(私たちに同世代に対する贔屓目があることは許してください)。

X世代はなぜエゴ化を志向したのか

X世代のエゴ化傾向は、その人に対しての先天的な要因、後天的な要因によって異なってくるはずです。以下に、X世代がエゴ化する可能性のある要因を考察してみました。

  • 1. 経済的安定:
  • X世代は、多くが安定した職を持ち、経済的な余裕がある。そのため、価格よりも品質を重視する傾向があり、個人のニーズをより追求する。またニーズを追求できるだけの金銭的な余裕がある。経済的な成功は、エゴの発達を支援する要因となり得るのではないか。
  • 2. テクノロジーと体験主義:
  • X世代はデジタル革命の途中で成長し、テクノロジーの発展を経験しつつも、アナログな体験も尊重する。デジタルツールを駆使するだけでなく、実際に手に取って自分のニーズ(エゴ)を確認する行動をとるのではないか。
  • 3. ワークライフバランス:
  • X世代はワークライフバランスを重視し、仕事とプライベートの調和を追求する傾向があると考える。自己実現と生活の質の向上に焦点を当てることで、エゴ化が進むのではないか。
  • 4.ブランドへの信頼
  • X世代はブランドが提供する品質に信頼を寄せている。彼らにとって、
  • 一度信頼したブランドの製品は品質が保証されていると感じ、そのブランドの製品を選び続ける。数多いブランド体験から自身のパーソナルブランドを築きやすく、エゴ化しやすいのではないか。
  • 5. 教育と成長:
  • X世代は教育に価値を置き、終身学習を奨励する社会的トレンドに従う傾向があるとされる。個人の成長と自己実現に注力することで、エゴ化が促進されるのではないか。

X世代のエゴ化要因はまだまだあると思います。これはエゴラボとして、もっと追求していかなくてはならないテーマです。ただ、このようなエゴ化要因がX世代のニーズになることの可能性を感じざるを得ません。このニーズを前回の第5回で提示した自己心理の分析プロセスを通すことで有効なマーケティングが実現できるのではないか、というのが私たちエゴラボの仮説です。

マーケティングや広告の観点から、X世代の価値観やニーズを理解し、そのニーズに合致する製品やサービスを提供することが重要だと考えます。それはエゴ化を支援する製品やサービスであったり、エゴ化した人を維持する製品やサービスであったりするのでしょう。彼らのエゴと自己実現の要求を刺激することで成功したマーケティング戦略を構築できると信じています。また今回はX世代を取り上げましたが、当然ミレニアム世代、Z世代にもそれぞれの世代特有のエゴ化要因があるはずです。

次回(11月25日)はこの連載の最終回となります。私たち二人のエゴラボの展望をチラ見せできれば、と考えています。

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青谷宣孝/明海司(エゴマーケティングラボ)
青谷宣孝/明海司(エゴマーケティングラボ)

青谷 宣孝(オークローンマーケティング代表取締役副社長)
1987年 日本電信電話に入社。翌年には、NTTのハウスエージェンシーであるNTTアドへ出向し、ゲーム会社、化粧品会社、自動車保険、アパレルなどの広告マーケティング、新規事業企画等を担当する。在籍中には、Jリーグ初のITパートナーカテゴリーを企画創設し、広告代理店の領域を超えてNTTグループが行うJリーグのIT基盤構築を推進した。その後NTTドコモプロモーション部に異動し、フジテレビ「踊る大捜査線」携帯動画初の本格ドラマをプロデュース。dポイントキャラクター『ポインコ』の生みの親。現在TVショッピング『ショップジャパン』を運営するオークローンマーケティングにて、ダイレクトマーケティングを探求している。


 

明海 司(D2C エグゼクティブ・プロデューサー)
1988年I&S(現I&S BBDO)に新卒入社。ストラテジック部門で主に流通のマーケティング戦略、コミュニケーション戦略に携わる。1994年 NTTアドに参画。NTTドコモを担当し、携帯電話市場の成長過程において、モバイルやインタラクティブを絡めた数々のプロモーションを実行。2006年 ブランドコンサルティング会社であるフューチャーブランドに参画し、エグゼクティブダイレクターとして顧客のコーポレートブランディングを担当。2011年、講談社の広告代理である第一通信社に参画し、2015年 同社取締役に就任。新事業及び管理部門を担当。2016年1月 D2Cに参画しデジタルマーケティング事業を推進。

青谷宣孝/明海司(エゴマーケティングラボ)

青谷 宣孝(オークローンマーケティング代表取締役副社長)
1987年 日本電信電話に入社。翌年には、NTTのハウスエージェンシーであるNTTアドへ出向し、ゲーム会社、化粧品会社、自動車保険、アパレルなどの広告マーケティング、新規事業企画等を担当する。在籍中には、Jリーグ初のITパートナーカテゴリーを企画創設し、広告代理店の領域を超えてNTTグループが行うJリーグのIT基盤構築を推進した。その後NTTドコモプロモーション部に異動し、フジテレビ「踊る大捜査線」携帯動画初の本格ドラマをプロデュース。dポイントキャラクター『ポインコ』の生みの親。現在TVショッピング『ショップジャパン』を運営するオークローンマーケティングにて、ダイレクトマーケティングを探求している。


 

明海 司(D2C エグゼクティブ・プロデューサー)
1988年I&S(現I&S BBDO)に新卒入社。ストラテジック部門で主に流通のマーケティング戦略、コミュニケーション戦略に携わる。1994年 NTTアドに参画。NTTドコモを担当し、携帯電話市場の成長過程において、モバイルやインタラクティブを絡めた数々のプロモーションを実行。2006年 ブランドコンサルティング会社であるフューチャーブランドに参画し、エグゼクティブダイレクターとして顧客のコーポレートブランディングを担当。2011年、講談社の広告代理である第一通信社に参画し、2015年 同社取締役に就任。新事業及び管理部門を担当。2016年1月 D2Cに参画しデジタルマーケティング事業を推進。

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