花王サクセスが理容店で専用コース ブランドパーパス浸透図る

花王が、男性向けヘアケアブランド「サクセス」のブランドパーパス(=存在理由)の浸透施策に力を入れている。

11月17日には、高級理容室と共同で「サクセス」によるカットコースの提供を始めた。花王で「サクセス」のブランドマネジャーを務める林裕也氏は、「『サクセス』がお客さまにとって、『自分の可能性を引き出してくれる、前向きにしてくれるブランドだ』、そうしたイメージを高められれば成功」と話す。

写真 花王サクセスが「かっこつけない理容室」を展開する店舗のひとつ「PREMIUM BARBER 渋谷原宿店」
花王サクセスが「かっこつけない理容室」を展開する店舗のひとつ「PREMIUM BARBER 渋谷原宿店」。理容店とのコラボレーションは「ほぼ初めてと言えるのではないか」と「サクセス」の林裕也ブランドマネージャーは話す

HIROGINZA(東京・中央)との共同企画。同社が運営する高級理容室「ヒロ銀座」「PREMIUM BARBER(プレミアムバーバー)」35店舗で、「かっこつけない理容室」と銘打ち、専用のカットメニューを用意した。「なりたい自分キーワードシート」を用いてカウンセリングし、ヘアカットとスタイリングを行う。金額は8250円(税込)。

写真 「PREMIUM BARBER 渋谷原宿店」の個室
写真 キーワードリストとヘアカタログ
(写真左)「PREMIUM BARBER」は完全個室が特徴。「かっこつけない理容室」は予約時に選ぶことができる。(写真右)「なりたい自分」を表すキーワードのリストを用意。「どんな髪型がいいか」というオープンクエスチョンに比べ、キーワードがきっかけとなって、「実はこういうふうにしたかったという思いをお聞かせいただきやすくなったと感じます」(HIROGINZA 仙台支部代表取締役の稲垣心氏)

「『今もこれからも自分に納得ができて、誰もが明るい未来を描ける社会にしていく』という『サクセス』のブランドパーパスを実行する手立てのひとつ」と話すのは、花王ヘアケア第1事業部ブランドマネージャーの林裕也氏だ。

「『サクセス』は自分の可能性を引き出してくれる、前向きにしてくれる。そうしたブランドイメージを高めることが目的です。1年に1回程度のペースでブランド調査をしており、こうした項目を数年かけて高めていくことを指標として設定しています」(林氏)

企画時には、男性の“自己肯定感”に着目した。男性20歳〜79歳600人を対象とした花王の調査では、「自分に自信がある」という設問に対し、60%が「当てはまらない」と回答。「自己肯定感について」は51%が「低い」とした。

世代別では、20〜40歳代で「自己肯定感について」、「低い」を選んだ人の割合が平均を上回った。割合が最も大きいのは40歳代で、68%が「自己肯定感が低い」とした。「自分に自信がある」の設問では76%が「当てはまらない」とした。

髪や髪型の手入れについても差が出た。「自己肯定感が低い」グループは、髪や髪型の手入れへの関心で、「全くない」「ややない」を選んだ人が50%に上った。

グラフ 世代別の自己肯定感の高低
グラフ 自己肯定感の高低による、髪や髪型への関心度の違い

「学生時代には関心が高かったとしても、次第にこだわらなくなっていくという印象があります」と話すのは、企画に協力したHIROGINZAの稲垣心氏(仙台支部代表取締役)だ。

「いつもの、であったり、ちょっと短くするだけ、というリクエストにももちろんお応えします。ただ、理美容の技術を培ってきた私たちとしても、ぜひ真のご要望をうかがって、お客さまが理想とする髪型やスタイリングの実現をお手伝いできればと考えています」(稲垣氏)

林氏は「いまの時代の男性の“成功”とは何か、実はここ3年ほど当ブランドとも見直してきたテーマでした」と話す。「サクセス」はそのものずばり“成功”。ブランド名とは切っても切り離せない概念だ。

「サクセス」はことし36年めを迎えたロングセラーブランドだ。ブランドが生まれた当時の男性の成功は、より高い地位や名誉、より多くの資産、そういったものの獲得にあり、それを目指すことがある種の『男らしさ』であったと言える。

「では、いまの時代の“成功”は何か。それは自分のあり方に納得できていることではないか、とたどり着きました。しかし調査のとおり、自分を肯定し、納得している方は多くありません。ブランドとしてコミュニケーションする中で、ターゲットである男性が前向きになれることをしていこうと考えました」(林氏)

「あのころの自分に会って…」編 カット
「あのころの自分に会って…」編 カット
「あのころの自分に会って…」編 カット
「あのころの自分に会って…」編 カット
花王は9月15日から、ブランディング目的の動画として、タレントの原田泰造さんと、俳優の中村蒼を起用した「あのころの自分に会って…」編を配信している。AIを用いて再現した20歳代の原田さんも登場。実際に原田さんが小学生のころに書いた作文のタイトルをカギに、“いい年のとり方”について語り合う

「前を向くチカラに」というブランドコピーには、2020年に実施したリニューアルへの総括も込めている。ブランドの若返りを図り、シャンプーやリンスなどは好調なスタートを切った。市場リーダーの地位も維持していたが、「やはり生活者の価値観や、市場環境の変化というものがありました」と林氏は話す。

かつては、男性の清潔感、身だしなみという点では『サクセス』はユニークなものだった。しかし、現在は男性向けのヘアケアブランドは数多くある。そればかりか、ブランドのユニセックス化も進み、男性でも男性向け商品だけを手に取るわけではなくなってきた。

「ブランドとして、生活者とより情緒的な絆を結ぶ上で、ブランド名から想起される気持ちは何かというと、施策前は圧倒的に『フレッシュ』でした。『サクセス』という名前の通り、前向きになってやる気になれる、そういうブランドになることが、10年後の『サクセス』から逆算したときに重要だと考えたんです」(林氏)

しかし、商品が提供できるのは“髪と頭皮を元気にする”という機能的価値。それ以上のことをするには、今回のようなブランドコミュニケーションが必要だというわけだ。

「ブランド名がなぜ『サクセス』という名称なのか。企画前から極めて重要視したのが、ブランドの核がどこにあって、その核をいまの時代にどうフィットさせるか。ブランドパーパスの浸透には一定の時間を要します。さまざまな形で施策を続け、しっかりと蓄積していくことが大切だと考えています」(林氏)

「かっこつけない理容室」は期間限定で、12月17日まで。

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写真 「かっこつけない理容室」の看板
「かっこつけない理容室」の看板。「サクセス」はかつて、“かっこいい”ヘアスタイルカタログを頒布していたことも。今回の「かっこつけない理容室」の名称は、“成功”の観念の移り変わりも反映している



 

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