CMブレイク時にひっそり感じていたジレンマ(田中麗奈)【前編】

【前回コラム】キュンキュンが止まらない!映画『街の上で』長回し撮影の裏側(中田青渚)【後編】

今週のゲストは、俳優の田中麗奈さん。すぐおわメンバーの世代にドンピシャの「あのCM」についてもたくさんお話いただきました!

今回の登場人物紹介

(左から)中村洋基、権八成裕(すぐおわパーソナリティ)、澤本嘉光(すぐおわパーソナリティ)、田中麗奈

※本記事は2023年8月20日放送分の内容をダイジェスト収録したものです。

 

それぞれの「なっちゃん」の思い出

澤本:はい、皆さんこんばんは。CMプランナーの澤本です。

権八:こんばんは。CMプランナーの権八です。

中村:はい、こんばんは! Web野郎こと中村洋基です。皆さま、近況いかがでしょうか?

澤本:自分のではないんですが、(広瀬)すずちゃんが「プレモル」(サントリー「ザ・プレミアム・モルツ」)のCMに出ていたじゃないですか。で、ビールって25歳じゃないと出られないじゃない(酒類業界の自主規制により)。

中村:それを世に知らしめましたよね。

澤本:なんかね、もう25歳なんだと思って。

権八:あ、広瀬すずちゃんがね。親目線でね。

澤本:とてもおいしそうよね。

権八:おいしそうね。そうそう。

澤本:なんか本当にただ飲んでるだけだけど、うまそうに飲むなと思って、それに感心してたっていう。

権八:なるほど、そういうことね。

澤本:でもこう言うとサントリーの回し者みたいだからさ(笑)、なんかさ。

権八:いやでもほら、すずちゃんはずっとお仕事やってるから。大人になりましたよね。

澤本:そうですね、たしか14ぐらいのときに最初にお仕事してからだから。

権八:もう10年以上見ているんですね。つい親目線で見ちゃいますよね。

澤本:うん、それと同時に、私も老いたなって。

権八:プレモルのCMから、そっちもいっちゃう!?(笑)。

中村:ははは(笑)。

権八:でも同じように、昔からみんなが下の名前で呼んでいた女優さんが今日は来てくれています。

澤本:そうだね。

中村:そういう意味で言いますと、澤本さんや権八さんともお仕事をされたことありそうな。

澤本:命の恩人ですね。

権八:恩人(笑)。ということで、今夜も素敵なゲストにお越しいただいております。田中麗奈さんです。よろしくお願いします。

田中:よろしくお願いします。

権八:すいません、お待たせしました。

田中:いえ、3人のトークがちょっと楽しくて。ちょいちょい吹き出してしまいそうでした(笑)。

権八:まったく使えない話をね。

田中:楽しいですね、やっぱり。

中村:田中麗奈さん、当然のことながら、私どもの世代におかれましては。

権八:「おかれましては」って。なんか緊張してます?

一同:はははは!

田中:急に自分に対して敬語なんですね(笑)。

権八:なんで自分に敬語。

中村:田中麗奈さんは、澤本さん、権八さんとお仕事されたことあるんですか?

田中:はい。

澤本:ありますね。でもそもそも、僕ら的にはもう「なっちゃん」(サントリー)のCMなわけですよ。

権八:そうですよね。なんといっても。

澤本:もう「なっちゃん」って言えば、田中麗奈さん。田中麗奈さんと言えば「なっちゃん」っていう時期があったので。そのときの「なっちゃん」のCMすごい全部良かったからね。

権八:だから当時、「なっちゃん」って呼んじゃっていたところありますよね、当時ね。

田中:今でも「なっちゃん」って呼ばれることありますよ。

権八:そうなんだ!

中村:でもあのとき、十何歳ですか。

田中:18とか17とかですね。

澤本:最初の「なっちゃん」はオーディションだったんですか?

田中:たしか面接形式のオーディションだったと思いますね。

権八:高田雅博監督ですよね。

田中:そうです。高田さんには演技指導とかもしていただいて。なっちゃんがスタジオで鏡に向かって1人で「下手くそ」ってつぶやくみたいなシーンでも、ニュアンスの調整をいただいたりとか、「すっきり味のオレンジ、サントリーから」っていうナレーションをもっとボソボソっと言ってみてとか。コマーシャルだと「すっきり味のオレンジ!サントリーから!」って元気いっぱいに言うことがあの頃一般的だったとは思うんですけど、そうじゃなくてつぶやくようにっていうのがすごく新鮮だったと思います。

澤本:「なっちゃん」の田中さんがお喋りになってたセリフで、あの野球選手の同級生を上から見て、「すごいすごいすごい」っていうやつ。

田中:ありましたね。

澤本:あの「すごいすごいすごい」っていうセリフがすごい好き(笑)。

田中:三上くんすごいすごいすごいって言うやつ。覚えてますね。

澤本:大好きなんですよ。あの「すごいすごいすごい」。

権八:なるほど。なんかでもいろいろキュンキュンさせられた記憶あるけど、僕が記憶にあるのは、加賀まりこさんが出ているやつでしたね。

田中:最初の方ですね本当に。なっちゃんデビューのところだと思いますね。あの舞台に立って、カーテンコールがあって、「なっちゃーん」って拍手があって、で、加賀さんが……。あっその前か。その前に「たくさん泣きなさい」って。

権八:ああ〜!言ってた。

田中:「あんた下手くそなんだから」みたいなことでしたね。

権八:なんかでもちゃんと自信持ってね、「胸張って行きなさい」みたいに舞台袖でやってるのも何となく覚えてるし。いやあ名作揃いで。

 

「命の恩人」の真相

中村:そして実は澤本さんとは、2008年に公開された田中麗奈さん主演の映画『犬と私の10の約束』(2008年3月公開)でね。

澤本:もうね、本当にありがとうございます。

中村:これですね命の恩人は。

田中:命の恩人だなんて。

澤本:僕がはじめて映画の脚本を書いたやつだったんで。で、当時って広告の人が映画の脚本とか書いたりとか演出とかしたりやっちゃうと、広告の人間が片手間で……みたいに言われて。「どうせ当たらないだろ」とか、「どうせ人入らないだろう」みたいに言われていたなかで、田中さんがやっていただいたおかげで、たくさんの方々に見ていただき。

田中:いや、とんでもないです。これは本当に脚本のお力とあの本木(克英)監督と加瀬亮さんもね、出てらっしゃって、本当に皆さんの力でっていう。今も言われますよ。『犬と私の10の約束』見ましたって。親子で話しかけてくださったりとか、犬を飼う前に見ましたってお手紙いただいたりもしますね。

澤本:ありがたい。

田中:ありがたいですよね。

澤本:でもあれがきちんと皆さんに見ていただいたおかげで、その後も映画をつくれるようになったから、大感謝ですよ。命の恩人です。

田中:恐縮すぎてどうしましょう。

中村:そっか。澤本さんが映画を手がけたのはこれが1本目だったんですね。

澤本:そうそう。

権八:じゃあ本当にそうなんじゃないですか。それがもうすっかりヒットメーカーに。

田中:いやでもこれは私の力ではないので、松竹さんの。

一同:あはははは!

中村:なるほど。by松竹の。

田中:はい、お客さまのおかげなので。

澤本:お客さまありがとうございます。

田中:ありがとうございます。

 

福岡・久留米の名誉大使の田中さん

中村:もっといろいろと深く聞きたいんですが、毎回ゲストの方にお願いしている20秒自己紹介というコーナーがございます。

権八:すいません、自己紹介する前にどんどん聞いちゃった。

中村:あとなんかむしろ田中麗奈さんをはじめBIGすぎて、俺ら3人のおじさん、お前らの方が自己紹介しろよっていつも思っているんですけど、でもこんなコーナーがあるんです。はい。この「すぐおわ」は一応広告の番組ということでして、ラジオCMの秒数が20秒なんですね。ご自身の自己紹介をその20秒に合わせてやってみてくださいということで。でも本当になんでもいいです。

田中:はい。緊張する。はい、頑張ります。

中村:大丈夫でしょうか?では、どうぞ。

田中:田中麗奈です。43歳です。福岡県久留米市出身です。久留米市は……親善大使。だめだ!ちょっと緊張してる。久留米の特産物は久留米絣(かすり)と……あー!

一同:はははは!

田中:だめだ。ここに来る前に練習してたときの方がめちゃくちゃ上手に言えてた気がする。ちょっとだめだ、やっぱ緊張しちゃった。

権八:すごい緊張していましたよね(笑)。

田中:なんか急になんなんだろうこのドキドキ感。だめだ、マイナス5点ぐらい。

権八:いやいやいや。全然初々しくてかわいらしかったけど。久留米市の親善大使なんですか?

田中:はい、そうですね。あ、今は名誉大使でした。10年特別大使をやってその後、名誉大使をさせていただいてるんですけども。

権八:久留米の名物・特産品は何だったんでしょうか。

田中:久留米絣と籃胎(らんたい)漆器とそれからブドウもおいしいですし、いちご、あまおうですね。焼酎も有名ですね、えっと名前なんだったかな……。

澤本:さすが大使だね。

中村:そうですね。

田中:焼酎は「紅乙女」ですね。甘酒もおいしいですね。

権八:(スマホで調べて)久留米絣ってこんな綺麗なんだ。

田中:そうですね。

権八:面白い。そんな。

田中:はい、20秒自己紹介でした。

中村:ほとんど久留米の話。

田中:そう。なんか「所属はテンカラットでとか言おうかな」とかってマネージャーさんに意気揚々と言ってたんですけど、一切言うことなく。

一同:あははははは!

 

権八・澤本と挑戦した攻めた企画

澤本:久留米の話からですけど、久留米にいらっしゃった頃から俳優を目指していたんですか。

田中:そうですね、久留米にいた頃から「俳優をやりたい」って想いは密かに思ってはいましたね。

澤本:なんで久留米にいるとみんな俳優とか。

権八:久留米にいるとみんな。そうなの?久留米人そうなの?

田中:これはやっぱり土地柄じゃないですかね。松田聖子さんだったりチェッカーズさんだったりっていうスターが出たことで、久留米市からあんなキラキラした街へ、都会へ行けるんだっていうところもあったんじゃないかなと思うんですけど。……土地柄があるんですかね。

権八:お友達とかにも目指している人結構いました?

田中:いました。

権八:そうなんですね。芸能界というか女優デビューはいつになるんですか?

田中:これは本当の本当を言うとですね、15歳の時に九州だけで制作する映画があって、それが本当の本当は最初なんですよ。そこでオーディションを受けて。一応「妖精A」役ですね。

権八:妖精、フェアリー?

田中:フェアリーですよ。

中村:じゃあそのときはまだ無所属だが、芸能界を夢見ている頃。それで本気で所属してやってみたいな、みたいな。

田中:そうですね、福岡のレイ・ワールドっていう事務所なんですけども、そこの社長との出会いがあって。それでそこからコマーシャルからちょっとずつ映像のお仕事のオーディションの話が来てっていう感じですかね。

権八:「なっちゃん」のときはもうこっちにいたんですか。

田中:「なっちゃん」のときは、テンカラット所属になりまして。住まいは福岡県久留米市でした。

権八:そういうことなんだ。じゃあ福岡から仕事のために東京に来てたんだ。

田中:そうですね。

権八:(プロデューサーの)玖島(くしま)裕さんとかいて。

田中:はい。「なっちゃん」と富士フイルムのCMでご一緒して。

権八:僕もその流れで、って言ったらアレだけど、多分麗奈ちゃんが20歳ぐらいかな。富士フイルムの「写ルンです」のね、CMでご一緒してるんです。さっきまだ出てなかった話で言うと2005年、澤本さんと一緒にやった「LIVE/中国」。

田中:はい。

中村:ANAね。

権八:「LIVE/中国/ANA」っていうシリーズで、あれ二十何人出ていただいたんですけど、そのうちの1人として、中国に行っていただいて、自分でカメラ回してもらいましたよね。覚えてないですか?

澤本:覚えてないよね。

田中:それは……。滑り台とか?

権八:滑り台もありました。

田中:あ〜、ちょっと待ってください。なんかすごい長い滑り台。あ、滑って、私の足しか写ってなくて。最後「わ〜怖かった」みたいな。で、田中麗奈みたいな。攻めてるやつですね。

権八:そうそうそう。攻めた企画だったんですよ。

田中:攻めた企画ですね。

 

プリクラ機の前で囲まれる!?

権八:そう考えるとやっぱり田中麗奈さんも結構広告とも繋がりが深いというか、CMにたくさん出ているっていうイメージですね。

中村:ずっと出てる。ずっと主人公みたいな。

権八:そうだから「写ルンです」のときも、すごいお忙しいんだろうなって思ってましたもん。

田中:申し訳ないですね。

権八:いやいや、疲れていらっしゃるなって思ったんですよ。だってあの頃すごい忙しかったでしょ。

田中:それがまた。東京に住んでいたらまた違うんでしょうけど。睡眠時間が飛行機の中ですよね。

澤本:日帰りってこと?

田中:日帰り。で次の日学校行ったりして。

澤本:すごい……。

田中:日数が足りなくて卒業できないっていう話もありました。

権八:なるほど。

田中:「学校は卒業しよう」っていう話に社長や両親ともなっていたので。

権八:まあそれは大事ですよね。

田中:ええ。でもコマーシャルをたくさんやらせていただいていた時期でしたね。

澤本:忙しかったんですね。

中村:それこそ「なっちゃん」でね、大ブレイクしてからちょっと世の中変わったんじゃないですか?地元に戻ってきても。

田中:そうですね、たしか駅行って友達と普通に「プリクラ撮ろう」ってなったらなんかいろんな人に手を引かれて、「私とも撮ろう」「私とも」ってプリクラ機械の周りで高校生たちにすごい囲まれたりとかしました。

中村:それは地元の?

田中:地元のです。あとはバスから降りた瞬間、富士フイルムの広告の自分の等身大のポスターがバーンってあったりとかしました。

一同:ははははは!

田中:うれしいような、でも恥ずかしいような感じで通り過ぎていったりとか。学校を休むこともよくあったので、「休んで何をしているんだ?」っていうところから、「なるほどこういうことしてるんだ」っていうふうに先生たちからも見てもらえるようになったりとか。

権八:うん。いっぱい出てましたからね。特にCMはほら、当時はやっぱり放送の量も多いし。

田中:そうですね。

権八:契約社数も多かっただろうから、もうみんな知るところとなっちゃいましたよね。田中麗奈を。

中村:結構ちっちゃい頃から、それこそ5〜6歳の頃から俳優を目指されていたって書いてあるんですけど、「これはついに私の時代きたかも!?」と思いました?ぶっちゃけ。

田中:いやそんな何かを思う暇もなく……。あとはお芝居をしたかったので、そこのもどかしさといいますか、コマーシャルに出させていただくことの喜びはあるんですけど、とにかくお芝居をしたかったですね。

権八:舞台?

田中:舞台っていう発想にはまだ馴染みがなかったんですけど、映画だったりドラマだったり、少しずつ少しずつステップアップしたいといいますか。だからコマーシャルで急にね、自分自身が世間に知られたりとか、お芝居も「なっちゃん」とかだとちょっとできたりはあったんですけど、もちろん商品が主人公ですし、だから何かそこでジレンマはあったかもしれないですね。

 

デビュー作だからこその自然さ

田中:『がんばっていきまっしょい』(1998年9月公開)っていう映画に、ちょうどその頃参加させていただいていて。お芝居以外でも、役者が待っている時間の使い方であったりとか、スタッフさんの動きを見て学ぶことであったりとか、映画をつくることへの思いといいますか、そういうのを見るなかで、やっと自分は前に進んでいけるって思えたんですよね。やっと「お芝居やっていけるかな」って思えたというか。

そんななかで、まずコマーシャルをたくさんいただいて、コマーシャルで認知されるようになってきたので、そこのスピード感にはちょっと圧倒されてたところあると思いますね。

澤本:でも『がんばっていきまっしょい』もすごく褒められましたよね。

田中:褒められましたよね(笑)。

澤本:みんな褒めてましたね(笑)。

中村:「全然俳優大丈夫じゃん!」って思っちゃいますけどね。

田中:いや、だってああいうことはですね、私あれがデビュー作なんですけども、やっぱり新人ならではの、1回目ならではのね。

権八:あー、なるほどなるほど。

田中:素朴感といいますか、できないなりの想いでやっているので。本当にもう2時間回して、30秒出たかな、10秒出たかなっていうのを、多分かいつまんで映画にしてくださってるわけですから、まったく自分の力なんてものではないんですよね。

権八:いやいやいや!自分の力だと思いますけど、でもたしかに一発目とそれから先とまた違うというか。

澤本:あれロケだったじゃないですか。ロケの中で演じてらっしゃるっていうのがすごく自然でよかったって印象ありますけどね。

田中:自然……。そうですね、本当に自然でしたね。たしかにね、撮影の本当に1カ月前ぐらいにもう現地に入って、ずっとみんなでボートを漕いで練習して、方言の練習も含めてお芝居の練習もしていったので。その自然さをきっと磯村(一路)監督が撮ってくださったんですよね。自然だけど、決して自然ではない。もちろんそこには脚本があって、演出の意図があってっていうところに出る、かすかな「これだ」っていうものを、きっとつないでつないでっていうことですよね。

澤本:結果として僕らは「上手いな」って思って見たっていう。

田中:上手いですか?

澤本:上手いって思って見てましたよ。

田中:えーっ。いやいやいや、上手いって言ってくれた方ははじめてです。

澤本:いやでも、上手いっていうのはつまりなんでしょうね、こんな言い方するとよろしくないですけど、CMばっかり見ていたので、やっぱその人が映画出ますって見たときに、多少やっぱり色眼鏡で見ちゃうじゃないですか。「CM出て有名になった方の第1作だったらこんな感じかな」と思って見てみたら、面白いし「あ、これ上手いなっ」て思って。

田中:うれしいな〜。でも想いですよね、気持ち。気持ちが出たのかな、もしあるとすれば。

 

あの田中麗奈ちゃんがこんな役を!

権八:僕は小説家の燃え殻さん原作の『あなたに聴かせたい歌があるんだ』(2022年5月配信、Hulu)あれ見たときに、不勉強かもしれないですけど、僕の印象では「写ルンです」とか「なっちゃん」の、あの田中麗奈ちゃんがこういう役柄やるんだみたいなのは、ちょっとうれしいようでショックというか。こういう役柄でこういうお芝居をされるんだな、すごいなってちょっと思ったんですよね。

田中:あら、うれしいです。自分では反省ばかり思い出してしまうんですよね。もう少しこうした方がよかったなとか、少し固めすぎちゃったのかなとか。たとえばいろいろ想いがありすぎても駄目なんだなっていう。やっぱりちょっと距離を取らないと、表現としては軽やかに動けてなかったんじゃないかとかすごく考えてしまうんですけど。燃え殻さんの原作もすごく面白かったですし、役柄も権八さんがおっしゃっていただいたように、本当にセンセーショナルで、ちょっとデリケートな役だったので。

権八:そうですよね。

田中:それも私としては楽しかったですね。ストーリーがある方が、やりがいがあるといいますか。

権八:やっぱ自分の中でも、イメージをかなり固めていく方なんですか?

田中:いや〜、固めちゃいけないんですよね。固めちゃいけない、だけど知りたいっていうところの距離感ですよね。もっと知りたい、これはこういうことだって思う。でも、もうここで終わりにしようっていう。あとは現場に行って、俳優さんとの空気感だったりやり取りのなかでやらないとっていう。だから距離感はずっと測ってますよね……。

権八:あんまり前もってつくりすぎちゃうとそれはそれで良くないってことなんですね。

田中:やっぱ動けないっていうか、心が凝り固まってしまうから。たとえば自分の理想形を求めてしまったり、そのイメージで動いてイメージ通りでいってしまおうってしてしまうかもしれないですし。あとは心も凝り固まって、頑固になっちゃったら動きづらいみたいなことあるじゃないですか。やっぱ柔軟にしておかなきゃいけないので。作品入る前には調べたりとか見たりとかしたい方なので、それはしていきますけど、ある程度で「もうやめよう」ってスパッて切ってますね。そうしておかないとよくないんじゃないかなって最近は思いますけどね。

権八:特にね、先生役でその生徒たちと対峙し合うとかだと、めちゃくちゃ緊張感があるし、お互いの呼吸もありますもんね。

田中:そうですね、やっぱり現場の空気感だったり監督の演出もありますし。

権八:萩原(健太郎)監督ですよね。

田中:そうです。萩原監督はすごいコンテをお書きになっていて、それこそ教室のシーンだと黒板にコンテをもう百何枚とかバーって貼ってあって、「このカットで行きます」みたいに進んでいって。2日間かけて、もうみんなでそのコンテにはまりに行くっていう感じでしたね。体力勝負でした。

澤本:はは。

権八:面白いですね。『あなたに聴かせたい歌があるんだ』。

田中:ありがとうございます。

中村:Huluでしたっけ。

田中:Huluですね。

権八:ぜひ皆さん見てください。

<次回へつづく>

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