そこで広報担当者に求められるのは、平時から不祥事などの有事を想定した対応フローを頭にいれておくことです。「記者会見」に向けた5ステップを記載している本記事を参照し、いざという時の適切な対応の参考にしてください。
文/佐々木政幸 アズソリューションズ 代表取締役社長
※本記事は、広報会議2024年1月号 『危機を乗り越える広報対応』の転載記事です。
対応方針の明確化を
クライシスの対応は、時間との勝負ともいえる。発生から3時間以内に情報収集・集約を終えることが、その後の企業イメージに大きく関わってくる。
過去のクライシス事例が証明するように、表面的な対応に終始したり、隠蔽を重ねた末、内部告発などにより不祥事が次々と発覚したりすることで、企業価値の失墜を招いてしまうこともある。
このためにできるのは、クライシス発生後に「どのようなプロセス」で、「いつ」「どんなこと」を遂行すべきかを頭に入れておくことだ。
いざクライシスが発生したら、冷静さを欠き不適切な対応を招きやすい。日頃より大まかな対応プロセスを頭に入れ備えておくことで、有事での企業イメージの低下を最小限にとどめたい。
ここでは、不祥事が発生した後、記者会見を開いて事後対応をするまでのシミュレーションを見ていきたい。
1 初動対応(直後~3時間)
※何度でも言います。初動が最も重要!
広報の責任者と危機管理担当者が中心になり、行動開始。何が起きたのか、正確に把握する。
① 全社の対応方針の決定
- ●対策本部設置の号令後、関係者は30分以内に集合すること
- (出張等で不在のときは、代理が出席)。
- ●対応方針は、発生した(または認識した)直後から3時間以内に決める。
- 対策本部長(大概の企業は社長)を中心に状況把握に努め、即断・即決が重要。
- 迷いは最大の敵!
- ●メディアへの対応方法の決定
- 【電話対応】の対応者を徹底
- メディア対応は広報および発生部署の社員で一元化し、他の社員には対応させない。
- とくに、会社の敷地外でのコメントを求められるインタビュー等には「広報に訊いてください」で統一するよう社内に徹底する。
- 【公表方法】の方向性確認
- この時点では、資料配布にするか記者会見を行うかは決められない場合がある。被害の程度、社会的影響度等で判断していくことになる。
NG 当事者意識のない対応や責任転嫁がにじむ対応
- ② 情報収集、情報集約、情報整理の開始
- ●下記3班に分けて対応する。
- 情報収集班→すべての情報を迅速に集める
- 情報集約班→情報収集班が集めた情報を、時間、対象者、事象内容等に整理する
- 情報整理班→集約された情報をもとに、想定問答(Q&A)を作成する
- ●対策本部で決めていくが、要は平時に役割分担を決めておくこと(各班は広報だけでなく他部署も一体となって対応する)。
NG 「これは関係ない情報だから」と無視することがひとつでもあってはならない
NG 「俺は仕事が忙しいから手伝えない」などと忙しいふりをする社員はもってのほか!
③コメントの準備
- ●メディアから必ず求められる。謝罪なのか、説明なのかをしっかり判断すること。
- ●平時にクライシスを予測しあらかじめ作成しておくこと。
- 【公表方法】の決定
- コメントを準備する段階になると、事案の性質が判明してきている。資料配布にするか記者会見を行うかの判断が明確になっているはず。
NG 真っ先に思い浮かべるのは…被害に遭われた方々への対応、取引先への対応、株主対応。だが、社員への説明を忘れないこと(社員を置き去りにしない!)
ここまでが、3時間以内にすべき対応である。3時間はあっという間に過ぎていく。事前の心構えと準備がないと、対応は後手に回ってしまうことになる。
1 初動対応(直後~3時間)に続く、2 電話対応、3 発表資料の作成、4 記者会見の開催、5 記者会見の事後対応のシミュレーションについては、本誌からご覧ください。
広報会議2021年1月号『危機を乗り越える広報対応』ではこのほか、2023年に発生した不祥事への対応分析やネット炎上の傾向と対策なども掲載しています。
広報会議2024年1月号(12月1日発売)
- 1000人が選ぶイメージが悪化した出来事は?
- 「不祥事ランキング2023」発表
- CASE 1
- ビッグモーターの不正から学ぶ
- 不祥事が起きうる企業の予兆とは
- 白井邦芳 社会構想大学院大学
- CASE 2
- ジャニーズ問題で振り返る
- 「不誠実」のレッテルが貼られる対応とは
- 浅見隆行 弁護士
- CASE3
- 日大アメフト部の薬物問題にみる
- 危機管理広報における2つの問題
- 畑山 純 エイレックス
- COLUMN
- 心理的安全性の欠如が招く危機
- 企業の不祥事への道
- 石井遼介 ZENTech
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- 佐々木政幸 アズソリューションズ
ほか