仙台市は2024年3月にも、市民や来街者向けの統合的な情報発信アプリを開始する。ことし3月に「デジタル田園都市国家構想」に採択された市のモデル事業の一環。24年度以降の機能追加も視野に、情報発信だけでなく、行政手続きなども可能な「ポータル(入り口)」として整備する。
日常生活における情報発信と、災害時などの情報提供を区別しない「フェーズフリー」の情報発信を目指す。基盤として、NTTデータ関西が開発・提供する「EYE-Portal(アイ・ポータル)」を導入する。公募プロポーザル方式で採用した。
仙台市の担当者は「モデル構想に沿った提案で、24年度以降にログイン、手続き等の実装も考えており、機能追加が可能なこと、操作性や見栄えなども踏まえて評価した」と話す。市は「防災環境“周遊”都市・仙台モデル推進事業」として、デジタル技術の積極的活用による市民サービスの充実や地域経済の活性化を打ち出している。事業費は全体で約1億8000万円。
既存の「LINE」や、X(旧Twitter)、Instagram、YouTubeなどのSNSは維持する。「アプリは文字通り、統一した“入り口”という位置づけ。このアプリを起点に、仙台市に関して必要な情報が得られるようにしたい」(市の担当者)。防災関連情報にXを活用しているほか、Facebookページなどで観光・イベント情報を伝えていたり、YouTubeで市政情報の音声版を配信していたり、発信源が分散している現状もある。
「EYE-Portal」の発信機能や閲覧履歴などデータに基づいたレコメンド(推奨機能)も生かす。閲覧状況に合わせて、関心があると推測された情報をプッシュ通知する。災害時だけでなく、市外からの来街者や市内の回遊なども促す。
「次年度以降の実装になると考えているが、行政手続き機能を搭載することも考えている。さらに、たとえば子育てに関して、ある手続きをしたら、同様に必要な手続きや、活用いただけると便利と思われる制度などをレコメンドするなどして、市民の利便性を高めたい」(同)
「EYE-Portal」はNTTデータ関西がことし10月に提供を始めた。政府が推進する、情報コミュニケーション技術(=ICT)を活用して地域の課題解決を図る「スマートシティ」構想も背景にある。個別の機能をあとから追加し、統合的に提供する「スーパーアプリ」にでき、自治体だけでなく、地域企業などが販促や集客に活用することも可能。仙台市のように自治体による直接導入のほか、自治体や地域企業などが立ち上げたコンソーシアムでの利用などを想定する。費用はサービス利用料の形態。
NTTデータ関西は「EYE-Portal」で、2026年度末までに全国で20団体への導入を目指す。同社は独自のサービス開発も進めており、市民の健康づくりを支援するアプリ「アスリブ」などの例がある。三木市(兵庫県)などが、歩数に応じて地域ポイントを付与する取り組みを行っている。
自治体による「スーパーアプリ」には、佐賀市のケースがある。「ごみカレンダー」「地域の天気」「電子申請」「防災・防犯プッシュ通知」「施設予約」「佐賀市公式SNS」などの個別機能(ミニアプリ)をまとめたもので、ことし6月に一般公開した。開発はオプティム。