(本記事は月刊『宣伝会議』1月号巻頭特集に掲載されているものです)
電通デジタル
BIRD部門
クリエイティブプランニング第1事業部
マネージャー シニアコンサルタント
有益伸一氏
生成AI等の最新テクノロジーを統合的に活用し、企業の経営課題・事業課題を解決に導くことを強みとする。また、国内外の最新デジタルツールの発掘・アライアンスも得意とし、デジタルマーケティング関連の講演・寄稿多数。
慶應義塾大学
理工学部教授
慶應義塾大学共生知能創発
社会研究センター センター長
栗原 聡氏
慶應義塾大学大学院理工学研究科修了。博士( 工学)。NTT基礎研究所、大阪大学、電気通信大学を経て、2018年より現職。科学技術振興機構(JST)さきがけ「社会変革基盤」領域統括。人工知能学会副会長・倫理委員会委員長。
生成AIの登場によりマーケティングファネルも変化
―ここ1年でバズワード化した生成AIですが、今後の市場トレンドにどのような影響を与えるでしょうか。
栗原:まずは「AIを使える人/使えない人」による格差の広がりが懸念されます。生成AIを始め高い能力を発揮するAIですが、それでも私たちが使う道具であることには間違いありません。そして、使える人は単なる効率化にとどまらず、よりイノベーティブな使い道を生み出していくでしょう。OpenAIやMeta、Googleといった巨大IT企業がイノベーションを起こす度に世の中は大騒ぎするわけですが、それって、見方を変えれば我々は踊らされるだけの存在になってしまっている。自らの意思で踊るのならよいのですがね。
一方で有益さんを含め、ごく少数ながらAIを使える層はどんどん世の中をリードして、新たなイノベーションを続々と生み出し、世の中に大きな変化をもたらしている。私にとっては刺激的な状況ですね。
有吉:ちょうど昨晩(インタビュー前日)、OpenAI の新しいリリースを受けて睡眠時間を削りながらコードを書いていました。まさに踊らされているなという感じです(笑)。マーケティングにもたらす影響でいうと、生成AIの登場後、「認知→関心→購買→利用→継続利用」と流れていくマーケティングファネル上に「対話」や「相談」というフェイズが生まれました。例えば、購入検討のタイミングで生成AIと話せる対話型広告や、日々寄り添いながら悩みや購入後の不満を聞いて答えてくれるチャットボットがあれば、確実に購買率やリピート向上が見込めると思います(図1)。
マーケティングのプロセスを見ると、もはや生成AIが関与しないところは、ほぼありません。非常に変化が激しい中我々支援側も支援先の事業会社側も、必死にアダプトしようとしているところではないかと思います。
―マーケティングにおいて、今後どのように生成AIを活用できるでしょう。
栗原:ユーザーがネット上に書いたクレームや商品・サービスの評価など、言葉で表現されたものは全て生成AIによって貴重なデータとして生まれ変われるようになりました。ただ、生成AIは間違えたり、ハルシネーション(事実に基づかない情報を生成する現象)が起こり得る技術なので、しっかりとした分析や整理を行うには、電通デジタルさんが培ってこられたようなデータ処理のためのノウハウが必要となる。つまり、生成AIという新しい技術が出てきたことによって、レガシーな技術もさらに本領発揮できるようになるということなのです。生成AIとそれ以外の技術を横連携できる能力も重要になるでしょう。生成AIは、単に言語を扱えるようになったこと以外にも大きなパワーを持っていると思います。
有吉:生成AIは決して銀の弾丸ではなく、統計的なアプローチや機械学習のモデリングも併用していく方がよいということですよね。それでは、ビジネスやマーケティングの観点で、生成AIを既存の分析手段と絡めると、どのような可能性が生まれるのか。
…この続きは12月1日発売の月刊『宣伝会議』1月号で読むことができます。
『宣伝会議』1月号(12月1日発売)
- 特集
- トップランナーたちの予測と展望
- 広告、メディア、マーケティング 2024年は、こう動く。
- 〇パーソナライズと個人情報保護を両立させ、生成AIから得られるデータを活用するには?
- 2024年はどうなる?①「生成AI」
- 有益伸一(電通デジタル)× 栗原 聡(慶應義塾大学)
- 〇規制は真の顧客理解を考える契機にマーケティングの本質に原点回帰する
- 2024年はどうなる?②「Cookie規制」
- 遠藤智史(LIFULL)× 友澤大輔(イーデザイン損害保険)
- 〇コンテンツ力を活かしたユーティリティの向上TVer、radikoと考えるテレビ·ラジオのDX
- 2024年はどうなる?③「電波メディアのDX」
- 坂谷 温(radiko)× 蜷川新治郎(TVer)
- 〇マーケティング投資の説明責任にどう応える?施策のビジネス貢献度を可視化するMMM
- 2024年はどうなる?④「MMM(マーケティング・ミックス・モデリング)」
- 友松重之(アクセンチュア)× 越智道夫(ミイダス)
- 〇メーカーと小売、広告会社が三位一体となり生活者に心地よいコミュニケーションを提供
- 2024年はどうなる?⑤「リテールメディア」
- 野田大輔(トライアルカンパニー)×濱口洋史(電通 データ・テクノロジーセンター)
- 〇電通×博報堂の若手プランナーに聞く1億総クリエイター時代、「広告」の向かう先
- 2024年はどうなる?⑥「広告クリエイティブの行く末」
- 花田 礼(電通)× 小渕朗人(博報堂ケトル)
- 〇顧客、消費者ではなく「共創パートナー」「α世代」に目を向けてもらうためには?
- 野田絵美(博報堂DYメディアパートナーズ)
- 【各社トップに聞く2024年の展望】
- 〇課題は効果的·効率的なデータ戦略と共感を呼ぶコミュニケーションの両立
- 川村和夫(日本アドバタイザーズ協会)
- 〇マーケティング=経営の時代にAIの浸透はCMOの役割を拡張する
- 奥山真司(グーグル日本法人)
- 〇業種専門性を高め知見を蓄積 伴走型の支援で「クライアントの顧客を知る」
- 大山俊哉(ADKホールディングス)
- 〇AIへの投資を引き続き強化Facebook Japanが支えるコミュニティ
- 味澤将宏(Facebook Japan)
- 〇LINEを起点に「繋がり続ける仕組み」をつくる新会社で目指す統合ソリューション
- 池端由基(LINEヤフー)
- 〇リサーチ·メディア·AIプラットフォームまでトータルマーケティングソリューションを提供
- 石角裕一(楽天グループ)
- 〇電通グループ新経営方針から、変わるコミュニケーションビジネスを考察する