人的資本経営を推進するユナイテッドアローズ。なぜ、同社は学びの機会提供に力を入れているのか。オリジナル研修を宣伝会議と共同開発した経緯などを交えチーフヒューマンリソース オフィサー・人事本部 本部長の山崎万里子氏と全社教育を担当する人材開発課の松橋和久氏に話を聞いた。
教育は社員の不安を解消し、会社と自分の未来を重ねるきっかけに
ーユナイテッドアローズの人材戦略についてお聞かせください。
山崎:当社では長期ビジョンとして、「美しい会社 ユナイテッドアローズ、真善美を追求し続けることでサステナブルな社会の実現に貢献し、お客様に愛され続ける高付加価値提供グループになる」を掲げています。
人事本部では、このビジョン達成に向けて必要な人的資本価値を高めるために「会社と自分の未来を重ね合わせられる”高いエンゲージメント”」「成長のためにチャレンジをし、トライ&エラーを繰り返すことができる”高い心理的安全性”」「個人と組織の能力の向上とそれを発揮できる”高いケイパビリティ”」という3つの柱を策定し、運用しています。
ー教育への注力を行うことになったきっかけをお聞かせください。
山崎:社内でもパラレルキャリアや、部門の異動など多様なキャリアを歩める環境を整えるべきだと考えたからです。当社ではコロナ禍に入って以降、ファッション業界の将来に対する不安感から退職が増えていました。その際に行った社内アンケートで、社員たちの声として「もっと学んで、会社の成長に貢献したい」「今までにない能力を身に着け、会社に貢献したい」などがあがったのです。コロナ禍という危機を経ても頑張ってくれている社員は「これまでの自分から進化しなければいけない」「なにかを学び成長したい」という気持ちを持っている、ということに気づかされました。その声に応える施策の一つが教育機会の提供でした。これまでにも、各部門のモノづくりや接客スキルなどの職務に応じた研修プログラムを用意していましたが、内容を刷新しました。もちろん、職務強化の場は引き続き用意していますが、いまの部門や職域を問わない教育機会の提供を始めたのです。
松橋:私はキャリア面談や店舗の現場教育を行うことも多いのですが、そこでの実感として、「先行きの不安がある社員は、職務に即したスキルや知見だけだと、退職リスクが高い」という感覚がありました。アパレル業界は、職人集団といいますか、一つの事を深く掘り下げるキャリアパスが多いというのが現状です。一度販売員になると販売に特化してキャリアを形成することがほとんどで、他の部門も似たような形で、キャリアの途中での異動の機会が少ない。そのような環境で、職務に特化した教育だけを行っていると、社員が「この先どうしようか」と考えたときに変えられることが、会社という”環境”だけになってしまうんです。ですが、会社の中にはさまざまな部門があり、幅広い職種があります。ユナイテッドアローズには、本人の希望やフィットした部門があれば異動をしてもらう文化がもともとありました。なので、職務を超えた学びの機会を提供し、「社内には今のポジション以外にも自分を活かせる場所がある」と知ってもらうことで、転職をしなくても多様なキャリアプランがあることを提示したいという思いがありました。
ーそのような背景を踏まえて、教育プログラムを刷新する際にどのような点を意識されたのでしょうか?
山崎:「階層別など会社から受講者の選別はしない」「1回の学びで終わりにしない」「学ぶことで見えてきた個人の特性や希望を活かして業務的機会提供に繋げる」の3点を意識しました。
ユナイテッドアローズでは、社内で「束矢大学」という実務・企業理念の浸透プログラムを運用してきました。外部には委ねられない、社員としてのマインドの部分をインプットすることでユナイテッドアローズでのキャリアを豊かにするためのプログラムです。そこに、会社の仕組みを経営の面から理解するための「社会人向けの経営研修」、そして会社を成長させる方法を理解するための「マーケティング研修」を新規で外部企業のサポートを受けて導入することにしました。マーケティング・ブランディング研修のプログラムは、宣伝会議一択で決めさせてもらいました。
世の中にない研修プログラムは、宣伝会議との共同開発
ーマーケティングの研修を行っている会社は多数ある中で、なぜ宣伝会議を選ばれたのでしょうか?
山崎:それは、マーケティングやクリエイティブにおいて一番よい教育コンテンツを提供されているのが宣伝会議だと思ったからです。また、オリジナルの研修・講座を共同で開発できる点にも魅力を感じました。私たちはファッション業界のリーディングカンパニーでいたいという思いがあります。その思いが根底にある中で学ぶマーケティングやブランディングは、業界向けにフィットした内容にしたかったのです。そうなると、すでに世の中にある既存の研修ではフィットするものがありませんでした。しかし御社からオリジナルの研修・講座を開発できる「アジャスト研修」のメニューを提案していただき、まさに「これだ」と思い選ばせていただきました。
ーありがとうございます。実際にオリジナルの講義を開発、実施してみていかがでしたか?
山崎:開発時の狙いとして、“ブランド戦略”という単一解のない世界に、「思考を通じて解を見出す経験」「白熱した議論を通じて新たな視点を手に入れる」の2点を取り入れたいと考えました。この2点の狙いが100%しっかりと反映された講義が実施され、感動しました。また、ファッション業界に特化して開発していただきましたので、事例や演習がすべて自分たちにフィットしていた点は他の研修にはない大きな点でした。「うちの場合は……」と咀嚼する必要がなく学べるため、理解までの間に無駄な工数がなくなり受講する社員の頭の中に、学びがスッと入っていっているように感じました。
社員にはこの学びの機会を通じて、魂が震えるような白熱した体験をしてもらい、次の学びへのモチベーションにつながるような経験をさせたいと考えていました。その要望も、最高の講師の方と宣伝会議の研修プログラムによって達成されたと感じています。
また、研修形式も、知識のインプットをオンデマンド動画配信で行い、その後はリアル開催とオンラインライブ開催で行い、効率のよいプログラムとなりました。受講者にとっては頭を使う分、負荷がかかる講義になりましたが、受け身ではない受講希望者が集まったことで、満足度も高く、より深い学びの場になりました。今回の研修を通じて、社員たちが不安を課題や目標に置き換える一歩を踏み出したと思います。
松橋:受講後のアンケートを見ても、他部署やキャリアの違う普段関わることがない社員同士が、同じ講義を受け、ディスカッションを行ったことで、「新鮮で刺激になった」という声がとても多かったです。今後、この刺激から新たな事業やアイデアが生まれる兆しを感じています。今後は個人のケイパビリティをより生かすために、マネージャー職の研修を強化していきたいと考えています。希望者にはより成長の機会を提供できるように目指していきます。
山崎:実際に教育投資を拡充した結果、今年度の社内調査では、教育制度そのものに関する満足度が13ポイント向上し、エンゲージメントスコア(eNPS)が16.4ポイント向上しました。エンゲージメントへの影響度が高い人事施策の1位は変わらず「教育」でしたので、来年度も充実を図っていきます。
宣伝会議の「アジャスト研修」でした。
自社や業界の課題に合わせて、講座カリキュラムを共同で開発できるのが、宣伝会議の「アジャスト研修」です。アパレル業界をはじめ、メディカル領域、食品・飲料領域、BtoG領域などの実績がございます。詳細はぜひお問い合わせください。
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