4月に下妻一高に赴任してきた私が、前職の花王での営業やマーケティングの経験を生かして取り組んだ最初の試みが、図書室の集客施策でした。
花王で小売企業向けのセールスを担当していた際に経験した、売り場作りのノウハウを活かしたもので、下妻一高の図書室は「情報発信型の図書室」として学校内でも認知されるようになってきました。最近では近隣の学校の先生がベンチマークのために来校するなど、県西地区の高校の図書室のモデルケースとなりつつあります。私が赴任してきた4月に比べて、図書室に足を運ぶ生徒の数が明らかに増えてきた事も実感できます。
“陳列”する本によって、売り場の鮮度を保ちつづける図書室とすべく、花王時代に実践してきた、「旬な売り場提案」のノウハウを図書室の運営にも取り入れてみました。
「旬な売り場提案」とは、花王のセールス担当時代の営業手法です。
1年間のイベント行事やカテゴリーの季節指数に応じて、その時の旬な商品を並べて、売り場装飾をして売上拡大を狙います。店舗装飾は、店の雰囲気や商品の見せ方を大きく変える要素です。
洋服を衣替えするように、季節に応じて店舗装飾を変更している店舗も多いと思います。
例えば、6月をテーマにした店舗装飾であれば、部屋干し対策や除菌関連商品など梅雨を題材にしたもの、7月なら日焼け止めや制汗剤、海水浴など夏休みを題材にしたものが例として挙げられます。季節を伝える店舗装飾にすると季節商品を魅力的に見せることができ、お客様さまの目を引き、集客効果が得られるといったメリットがあります。
この「旬な売り場提案」を下妻一高にも取り入れ、入り口にあるフリースペースを「旬な売り場コーナー」として作ってみました。今回は、具体的に取り組んだ事ことをご紹介します。
夏休み明けの9月は、社会問題として心の病が多くなる時期です。妻一図書館では、癒しどころ、「夏の疲れた心とカラダを癒しまくれ!」と題して心癒される本をまとめてコーナー化しました。心を癒すために、可愛い人形も飾ってあります。実は図書室の先生は前職が小売業で、そこでPOPを書いたり、店内装飾などの経験がありますので、本棚のプロモーションの演出がとても上手なんです。今まで、このスキルを活用しなかったのが、もったいないくらいです。
10月からは高校3年生向けに「小論文、推薦入試対策コーナー」の設置、過去の推進入試で出題された本をまとめて棚を作りました。また最近、新聞などでも話題になっている、「アントレプレナーシップ(起業家精神)コーナー」を設置し、私の推薦図書も含めて陳列しながら、少しでも生徒に興味を持ってもらえるように心がけています。
私の専門分野という事もあり、図書室の先生に陳列スペースを広く取っていただいているので、マーケティング・アントレプレナーシップコーナーも、月々の本を入れ替えて、トレンドをとらえて鮮度を保っています。このように、学校行事や、季節に合わせた旬なコーナーを作る事により、妻一図書室も提案型営業の図書室へと進化させています。
そんな中、お昼休みに私が学内の有志学生を対象に実施している「マーケティングゆるゼミ」を終えたメンバーが、このコーナーを見て、本を借りて勉強する姿も見て取れて、生徒たちの反応も上々です。「マーケティングゆるゼミ」で学んだことを、図書室に足を運んでさらに知識を深めるといういい流れができてきました。
私がマーケティング業界から全く異なる教育業界に飛び込んで、まもなく9カ月が経とうしています。1年目の今年は、とにかく現場に出て、いろんな先生方と話をして、意見を聞きたい。現状分析をしっかりして、課題を見つけたい。そんな思いで、この図書室の先生とも少しずつ取り組みを進めてきた事が、ここまでの成果に繋がりました。
9か月を経た今、勤務して思っていることは先生方の短所を指摘するのではく、長所をさらに伸ばして上げる事がとても重要だということです。一緒に取り組んできた図書室の先生の今までの経験を図書室の運営に活かすと、このような活動に繋がるわけです。
花王時代のマネジメントでも行ってきたことですが、人の長所を見つけて、さらに伸ばしてあげて、仕事と繋いであげる。そんなマネジメントスタイルが学校でも活きると思いました。業界は大きく変わりましたが、私のマネジメントスタイルは今まで通りでいいのかなと思った取り組み事例のご紹介でした。