ワンポイントのカスタマイズで「推し活」需要に対応
たちばなは12月21日、着物専門店の新ブランド1号店「ぜろいち武蔵小山店」(東京都品川区)をオープンする。着物初心者が安心して利用できる店づくりを目指した。着物ユーザーは女性客が大半だが、同店では顧客の3割を男性客にする目標を掲げ、男性でも着用しやすいデザインの生地を多くそろえる。集客イベントも実施し、まずは月商1000万円を目指す。
「ぜろいち」は、初めて着物に触れる初心者もターゲットにした新ブランドだ。1号店は武蔵小山パルム商店街で開店。商店街への出店は初の試みで、通行者数は平日で約2万人、土日には多い時で約4万人を見込む。集客効果を検証し、今後の出店の参考にする方針だ。商店街の利用者は50~70代が多いが、特定の年代に絞らず幅広い客層に訴求する。
着物販売店ではその場で価格交渉することも多く、初心者にとっては「正確な価格が分かりにくい」という課題があった。そこで同店では、仕立て費用も含めた総額を値札に記載し、安心して購入できるようにした。「入店の敷居が高い」、「着物の着用方法が分からない」という悩みにも対応し、「着付け教室」などのイベントも実施する。人通りの多い商店街の立地も生かし、スタッフによる呼び込みも行う考えだ。
新規客の獲得に向け、男性へのアプローチも注力する。同店でも主力客は女性とみているが、男性向け商品の棚を用意するなど、来店促進を図る。男性向けに作られた生地や着物は少ないが、男性の体格に合わせて反物の長さを調整することで対応。女性スタッフだけの着物販売店も目立つ中、同店では男性の前田慎介店長も着物を着て接客し、男性客も気軽に相談できるようにしている。将来的には男性限定で集まるイベントも企画したいという。一方、外国人に人気の着物レンタルは扱っておらず、インバウンド需要には期待しない方針だ。
前田店長は「着物の潜在需要は高まっている」と話す。特に普段着としても使えるカジュアルなデザインの着物が注目されているという。「推し活」の流行で、着物のワンポイントにデザインを書き込む「オーダー着物」の人気も高いとみている。常連客限定で実施する店が多い中、同店では一見客の依頼にも対応する。一部商品は同店が職人と連携して作ったオリジナルデザインで、今後も他店との差別化を図るためラインナップを増やす考えだ。
総務省統計局の家計調査通信(2020年発行)によると、和服の1世帯当たりの年間支出金額は徐々に減少している。2018年は2094円で、2002年(7952円)と比べて4分の1に減少した。同社は催事以外でも着物を着用する機会を提供することが需要喚起に必要と考え、顧客同士が着物を着て交流する「きものを楽しむ会」を各店舗で毎月開催。新店舗でも2024年2月10日から実施する予定で、将来的には100人規模のイベントも実施したいとしている。
1954年創業の同社は、全国で呉服店やフォトスタジオなど計37店舗を運営しており、今回の新店は東京では2店舗目となる。既存店はショッピングセンターのテナントなどが多いが、商店街での集客効果を検証する目的もあり、同商店街での開店を決定した。