資生堂は12月20日、グローバルで400億円のコスト削減を図る改革方針を打ち出した。「聖域なきコスト削減」として、マーケティングでも投資対効果(ROI)を高め、収益性を向上する。ブランドや製品でも選択と集中を進める。
グローバルでは、一部地域に依存した現状から、米州、欧州、アジア太平洋の各地域のバランスの適正化を図る。2023年第3四半期は中国や、空港や市中免税店などのトラベルリテールが減収となっており、グローバル全体で2.0%減のマイナス成長となった。
いずれも、東京電力福島第1原発の処理水放出で買い控えが起きた。中国では、8月の放出以降、中国におけるインフルエンサー(KOL)によるライブ配信や、新商品プロモーションを取りやめている。トラベルリテールは海南島や韓国、eコマースで2ケタ減となった。米州、欧州は好調が続いており、日本も回復傾向にある。
組織体制では各地域と、事業領域ごとの責任を明確にするとして、2024年には魚谷雅彦・代表取締役会長CEO(最高経営責任者)を委員長に、「グローバルトランスフォーメーションコミッティ」を設置する。日本をはじめとした6つの地域本社に、グローバル本社、サプライネットワーク、マーケティング&イノベーションの3つで組成し、それぞれ売上総利益の拡大と、コスト削減と人的生産性の向上の二つに取り組む。
ブランドや製品では、売上総利益を優先したブランド群、製品群になるよう、選択と集中を進める。伸長率で売上高を上回るのが目標。価格設定や原価率の改善も図る。生産性向上では、24年に完了する基幹システムの刷新と業務改革に加え、eコマースの売上構成比の向上を図るという。日本では2025年に向け、22年末時点のSKU(在庫管理単位)の3分の1を削減するほか、グローバルやアジアブランドに注力し、ブランド群を見直す。値上げや返品削減施策なども実施する。
資生堂は、2015年〜17年にも、グローバルでのコスト削減プロジェクトを実施している。当時は総額で633億円を削減した。今回もITや物流、購買、オフィス、経費などを含め、聖域を設けずにコストの適正化を目指す。マーケティングでは、データを活用してROIの向上を図る一方で、環境変化に合わせて機動的な投資をする考え。23年第3四半期累計のマーケティング費用は、前年同期比2.0%増の2506億円。