マックスは12月18日、充電式鉄筋結束機の発売30周年を記念した「鉄筋まる見え広告」を渋谷駅に掲出した。
同社は、ロングセラーのホッチキス針をはじめとする文具・オフィス機器のほか、釘打機や鉄筋結束機などの建築・建設工具を扱う機工品事業を手がけている。今回、主力事業のひとつである鉄筋結束機事業の認知を拡大すべく、交通広告を展開した。
「ホッチキスの針のイメージ」を超える 認知度拡大へ
同社のIR広報・ESG推進室 主任の橋本愛美氏は、掲出までの過程を次のように語る。
「マックスというと、“緑を基調としたパッケージのホッチキス針”のイメージを持っていただくことも多いですが、実は、文具以外にも幅広い事業を行っています。しかし、当社の製品は、一般の方の目に触れないものが多く、認知度が低い点が課題です。今回の広告を通じて『マックスってこんな事業もやっていたんだ』と知ってもらうきっかけを作りたいと考えました」。
マックスの事業を伝えるという目的の中で、広告の対象として選定したのが発売から30周年を迎えた鉄筋結束機だった。
「鉄筋結束機は発売から30周年を迎えます。そのタイミングで鉄筋結束機や、鉄筋結束の作業そのものを知ってもらいたいという想いがありました。普段生活している中で、建物の内部を想像する方は少ないと思います。実は、身の回りにある建築物には、鉄筋が使われていて、その一つひとつが職人さんの手によって結束されています。広告掲出を通じて、職人さんへの感謝の気持ちや、当社の事業意義を広く伝えられればと考えました」(橋本氏)。
渋谷駅掲出の背景とは 大規模再開発を活用
しかし、「鉄筋結束機」という単語を聞いて、その詳細が思い当たる人は少ない。
認知度が不足している事業を、効果的に分かりやすく伝えるアプローチを考慮した中で生まれたアイデアが、「建物の中に鉄筋が使われていることを意識してもらい、鉄筋結束という作業を知ってもらう。その際に、重要となる鉄筋結束機がビジュアルで伝わる広告を目指す」ことだったと、橋本氏は振り返る。
さらに、課題となったのは場所の選定だったという。
「目に留めてもらえる大きな掲出スペースでインパクトを出しつつ、近辺で必ず鉄筋結束機が使われているエリアや、広告掲出スペースを通る際に工事現場を通りそうなエリアを希望していました。そう考えていくと、100年に1度ともいわれる大規模な再開発を実施している渋谷駅には、多くの工事現場が存在していることに気づきました。そのため、最適な場所だと考え、掲出を決めたのです」(橋本氏)。
工事現場のリアルを追求した実寸大広告
制作に携わった、アンティルのクリエイティブディレクター 冨田健斗氏は、制作背景を次のように振り返る。
「30周年を迎えるにあたり広告を掲出したとしても、生活者にとっては関わることがほとんどないため、興味を持ってもらえません。商品を生活者と接触させるためには、広告から“違和感”を持ってもらえるような工夫の必要があると思いました。また、なぜそこに広告を掲出するのか、というストーリーも重要だと考えています。再開発を進める渋谷での掲出は、多くの工事に携わっている職人のみなさんを応援するという意味を持たせる点でも高い親和性を感じました」(冨田氏)。
実際の広告は「リアルすぎる工事現場“鉄筋まる見え広告”」と題している通り、芝浦工業大学建築学部建築学科教授 蟹澤宏剛氏に監修を依頼し、制作を行った。
ダジャレとデザイン アートディレクター・デザイナーの井上裕一氏は、今回の広告ビジュアルは全てが実寸大で制作されていると話す。
「鉄筋の太さや配置間隔、看板等の大きさ、作業員のコスチュームまで。蟹澤氏に細かく監修いただき、リアルな鉄筋結束作業現場を再現することができました。鉄筋や仮囲いなど、それぞれの素材やサイズ感をリアルに表現するため、作業員以外は3DCGで制作しました。また、『建築計画のお知らせ』を『広告掲出のお知らせ』にするなど、広告の一部に誰もが一度は見たことのあるモチーフをアレンジした仕掛けを入れています」(井上氏)。
スタッフリスト
- 企画制作
- アンティル
- CD+企画
- 冨田健斗
- C
- 藤田健太郎
- AD+D
- 井上裕一
- 撮影
- Andy、山田将史
- CGデザイナー+レタッチ
- フジモトタカシ、ナカムラサアヤ
- PRプランナー
- 板谷卓
- 出演
- 林志毅