これからのCRMとは?マイルドCRMと、NFTを活用したweb3時代のCRM ―電通

顧客と長く良好な関係を築くCRMの最新ソリューションについて、「宣伝会議マーケティングウェビナー2023」にて、電通の谷澤正文氏と電通デジタルの松林哲也氏が解説。後半ではNFTを活用したweb3時代のCRMについて、電通の越前康氏、平崎巧氏、武藤隆史氏、電通グループの文元慎二氏の4名が紹介した。

より多くの顧客体験を作ることができる「マイルドCRM」

マイルドCRMとは、 企業がCDP(Customer Data Platform)を構築していなくても、SNSなどを活用して、簡単に始められるCRMだ。現行のCRMより顧客とつながりやすく、かつハードルが低いために購買前からつながることができる、と松林氏は紹介。従来は購買を起点とし、購買後のつながりをメインと捉える傾向にあった。だがマイルドCRMは、タッチ&トライやイベント参加など購買前から顧客育成へ利用していくことができるという。

さらに松林氏は、マイルドCRM活用事例としてB.LEAGUE を挙げる。「B.LEAGUE会員」という顧客基盤を持っていたB.LEAGUEは、LINEとパートナーシップを締結し、LINEのユーザー基盤と組み合わせて顧客体験を大幅にバージョンアップさせた。まず「試合観戦の熱量」を感じてもらうためにLINE公式アカウント でメッセージを送信。スタンプを配信し、好感触が得られたユーザーを分析し、性別・年齢だけでなく興味関心のあるカテゴリー(スポーツ・インテリアやショッピング等)を把握することでメッセージ送信内容の工夫を行った。他にも、スタンプを通じてファンを増やし、現地観戦や映像配信の視聴を促進し、関心層から大ファンへの移行を促したと松林氏は強調する。

スクリーンショット イベント ウェビナー 宣伝会議マーケティングウェビナー2023

電通グループが目指すCRMとは

「購買データなどを保有しているが活用できていない」「既存顧客会員はいるがリテンションなどができていない」「SNSを運用しているが、そもそも日用消費財でファンをつくる必要はあるのか」など、CRMに関する悩みを持つ企業は多い。だが、成長鈍化傾向にある日本経済のなかで事業成長をしていくためには、既存顧客との関係性を大切にしていくことは必要不可欠だと谷澤氏は説明した。

一方で、現在はさまざまな顧客データを取得可能であるものの、その活用法に限界があり、経済合理性だけを追求した効率重視のアプローチが多いことを指摘。ブランド・商品・サービスを、エンドユーザーに好きでい続けてもらうためには、顧客を「一人の人間」として捉え、社会のなかでどういう生活をしているか、どんな人生を送っているか、どのようにしてその人の人生を豊かにすることができるのかを考え続けることが重要であり、それが結果的に顧客と長いお付き合いができるという。

消費者理解と創造力、広告分野で強みを持つ電通は、個人情報保護を考慮した「プラットフォーム事業者のデータ 」を使用し、マイルドCRMを提供している。これまでは広告接触の検証をメインに使われてきたデータを、人物理解にも活用していくという。

LINEマイルドCRMの考え方

マイルドCRMを考えるにあたり、LINEには4つの優位性があると松林氏が紹介。「圧倒的な普及率」「レスポンスの良さ」「デュアルファネル」「One IDの統合」だ。そしてLINEを活用した体験作りからスタートし、LINE公式アカウントへの友だち化、友だち分析、効果改善とPDCAサイクルをまわすことが重要だ。自動車メーカーの事例を紹介しながら、どのようにLINEマイルドCRMを設計していくべきかを伝えた。また、LINE公式アカウントの友だちが、どれくらいの人数なのか、優良度はどの程度なのかを診断する、電通のOA診断についても紹介した。

これからのCRMは、事業そのものを進化させていく

顧客が日常使いしているアプリやメディアなど各接点において、豊かな体験を提供することがこれからのCRMに必要だと松林氏は説明。谷澤氏は継続購入につながる優良顧客を獲得することを重視すべきだと強調した。

web3時代のCRMとは?

後半では、web3時代のCRMについて解説。2024年夏以降、大手プラットフォーム事業者の3rdパーティーデータ(Cookie)廃止などの動きを受け、web3領域における企業のビジネスを統合的に支援する組織を、電通グループ横断で発足したという。

web3とは、大手プラットフォームが中心的にデータと信頼を管理する構造とは異なり、ユーザーが自らの情報を管理し、参加者全員がwin-winを築くことを目指す状態である。オープンデータとなるブロックチェーン技術と、改ざん困難なブロックチェーン技術を使ったNFT(トークン)、NFTの受け取りや管理を行うウォレットといったツールを活用して実現を目指していると越前氏は紹介。匿名性を担保しながらデータ活用が可能となる。

web3が登場することで、web 2.0と共存しいていくのではないかと越前氏は推測。一般生活者が選択し、それを企業が適切にマーケティング活動へとつなげていく必要性が出てくるという。

スクリーンショット イベント ウェビナー 宣伝会議マーケティングウェビナー2023

顧客との関係が「管理」から「フラット」へ

続いて平崎氏は、web3時代の新しいCRMについて説明した。データの主導権が企業から個人に移るweb3時代では、顧客との関係性が「管理」から「フラット」へと変化。共通目的やビジョン、価値観でつながり、共創する関係性になると、アビスパ福岡の事例を交えながら話した。また、マーケティングCRMの仕組みも「分断・統合」から「横断・分散」へと変化。ブロックチェーン上で個人が管理するデータが蓄積されるため、 企業はチャネル横断で顧客行動を把握・管理することが可能となり、顧客アプローチの手段・領域についても、広告「面」からさらに「個人」のウォレットにアプローチすることができ 、より新規顧客獲得を目指すようになると平崎氏は説明した。

アニメ「作品」により、顧客が共感しやすくなる

web3時代の新しいコンテンツの形については、Dentsu Japanimation Studio代表でもある武藤氏が同社の事例を交えながら紹介した。ジャパニメーションを活用するメリットとして、①独創性&高品質 ②共感度の高さ ③伝わりやすさ という3点を列挙。実写広告よりアニメ「作品」に近づけるほど、企業の好感度やシェア意向、SNSエンゲージメント率の向上につながるという分析結果があることを、JRAのオリジナルアニメの事例を見せながら伝えた。web3時代にはNFTを含め、企業が用意するコンテンツに魅力を感じてもらえるかが重要であり、自由度が高く最適なコンテンツを構築しやすいオリジナルアニメのメリットが活かせることを強調した。一方通行なコンテンツから、生活者と作られるコミュニティーで情報が流通し、ファンと一緒にコンテンツが作られる時代がやってくる。マンガやアニメを共創したり、ファン共創型コンテンツを作られたりと、すでに実験的な取り組みが増えてきているという。

NFTが現状のCRMの課題を打破する!?

最後に登場した文元氏は、web3CRMソリューションについて紹介した。戦略立案からコンテンツ開発・実証・検証までを行う電通と、NFT発行を行うSUSHI TOP MARKETING、web3ウォレットを提供するsiviraとが協業し、ワンストップパッケージを開発中とのことだ。現在提供可能な機能として、NFTの発行・配布・受取やNFT配布状況の分析、特定のNFT保有者へのプッシュ通知機能がある。web3CRMソリューションは、企業による個人情報の管理リスクや、チャネル分断によるデータ統合のタイムラグ、ポイントによる囲いこみ施策への閉塞感といった、従来の課題に対して効果的な打ち手であることをアピールした。

※本記事は2023年11月開催「宣伝会議マーケティングウェビナー」で配信された講演のレポート記事になります。

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