月刊『広報会議』で振り返る広報トレンド(前編)

広報計画を練る上では、社会におけるコミュニケーションの変化や生活者の価値観の移り変わりを踏まえた上で、自社に適した新たな重点施策を決めていきたい。本稿では『広報会議』編集部が実施した広報部門110社を対象にしたアンケートの結果や、誌面のバックナンバーをもとに、昨今の広報活動の傾向を見ていく。なお広報部門110社調査の詳細については2023年12月28日発売『広報会議』2024年3月号 に掲載している。

記者の「体験」機会を創出 会話できる関係づくりは危機の備えに

広報部門の主要業務である「メディア対応」に関して、広報部門への調査したところ、「リアル記者懇親会を(コロナ前と同様に)実施した」「リアルならではの実体験の場を増やしている」といった声が集まった。記者を現地に招き試乗・試食してもらうなど、体験機会のある広報活動は、深い理解を促し迫力ある報道につながる。記者との会話を増やすことで、今後の取材テーマが分かったり、危機管理広報をする際も正しく情報を伝えやすくなったりする利点がある。広報業務の効率化に目を配りながらも、オンラインの利便性を活かす案件か、リアルが良いか見極めて広報施策を企画したい。

反響のあった企画の実例集
上場企業の広報部長に反響の大きかった施策を聞いた『広報会議』の「話題になった企画100事例」特集。リアル・体験重視の施策が多く含まれている。オンライン施策、定番施策など、多様な打ち手を一覧できる事例集。他業種の取り組みから発想を広げるヒントに。(『広報会議』23年9月号)

真価を問われるのは危機対応
『広報会議』の連載「記者の行動原理を読む広報術」では、新型コロナ「5類」移行後の記者との関係再構築について解説。普段から記者と信頼関係を築いていないと、有事の際に、ちょっとした言葉のアヤから不必要な非難にさらされるリスクも。(『広報会議』23年7月号)

パーパス(存在意義)に基づく広報に納得感 策定から浸透、実践へ

「2024年の広報活動」について広報部門にアンケートしたところ、「コーポレートブランドの管理」に注力する、との回答が前年より高まる結果となった。目立つのは「パーパスを浸透させるためインターナルコミュニケーションに注力していく」という声だ。パーパスや持続成長に向け進むべき方向性といった、社会起点に立った経営の大方針が、広報活動で活用され企業イメージを上げる事例が出てきている。特に事業の転換期など、ステークホルダーに丁寧な説明が必要となる時に立ち戻りたいのがパーパス。「日常の業務とパーパスの結びつき」が実感できる機会を社内で繰り返しつくっていく必要もある。

理念にひもづく発表で応援の声が広がった
スープストックトーキョーが離乳食を無料提供すると発表後、SNSでは賛同の声だけでなく、「子ども連れが増えるなら行かない」などの批判も。その後、公式サイトで発表された文書には理念と共になぜサービス開始に至ったのかが綴られ、同社を応援する声が集まった。(アドタイ/『広報会議』23年9月号)

顧客の語り(ナラティブ)を踏まえたコミュニケーション

SNSやオウンドメディアを活用した広報活動が一般的になる中で、「顧客とのやりとりをオウンドメディア上で紹介し、パブリシティ獲得につながった」といった声も広報部門から寄せられている。SNSでの顧客の声、クレーム投稿に対し真摯に向き合い、研究・開発に活かす姿勢を広報し、共感を集めた例もあった。また2023年はTwitterが「X」へ。プラットフォームは変化するという前提に立ち、情報発信ルートの複線化、自社サイト充実など、コミュニケーション手段の再点検もしておきたい。

顧客の目線に立った広報活動の事例
「ギョーザがフライパンに張り付いてしまった」という1件の投稿をもとに、3000個のフライパンを回収、研究するプロジェクトを実施した味の素冷凍食品。SNS上で浮き彫りになった顧客の語りに注目し、顧客目線に立って企業がコミュニケーションし共感を得た事例。危機管理広報の専門家が解説。(『広報会議』23年9月号)

プラットフォームの仕様変更に備える
プラットフォームの動向や、仕様変更に左右されないSNS施策の効果測定に関して解説した記事。目標設定が変われば、広報の注力ポイントも変わってくる。フォロワー数など計測しやすい数値だけを追うのではなく、SNS上で自社のポジティブな話題を広げることを目指したい。(『広報会議』23年8月号)

 
後編はこちら

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