プロジェクト開発のこんな「あるある」、ありませんか?
クライアントの要望がふわっとあいまいで、何から手をつけていいかわからない。上司の指示がコロコロ変わり、出来上がったものを見せたら「こんなんじゃない」とやり直しをさせられる。色んな人があれこれやりたいことを言い出して収拾がつかない。 ある手法や細部の品質に固執して全体のスケジュールやコストを超過してしまう。計画書通りに進めてKPIも達成しているのに成果につながらない。うまくいくと思った一手が想定外の悪い事態を引き起こしてしまった―。
みなさんやみなさんの身の回りのプロジェクトで、こんな問題が起きていないでしょうか?
実は、このような問題が起きる原因にはいくつかの共通したパターンがあります。成功の定義を決めていなかったり、所与の条件を無視して成功事例を鵜呑みにしたり、間違ったKPIを設定して追い求めすぎてしまっていたり…。
申し遅れましたが、私はプロジェクトで発生・遭遇してしまう問題を予防したり対処する処方箋やトレーニング、研修プログラムを提供する「プロジェクト・クリニック」を運営しております前田考歩と申します。
プロジェクト上達の一番の近道は「場数を踏む」こと
「プロジェクト・クリニック」を運営していると言うと、どんな炎上プロジェクトであってもあっという間に問題解決してくれるように思われるかもしれません。しかし(期待を裏切るようで申し訳ないですが)、プロジェクトをうまく進めるための特効薬はありません。なぜなら、プロジェクトに必要な思考の型や技術を学ぶだけでなく、場数を踏んで経験を積むことが不可欠だからです。
ですが、多くのプロジェクトは、ある日突然降ってくるものです。場数を踏むのが大事だと言っても、「こんなプロジェクトをやるから練習しておいてね」と前もって実践する機会は与えられません。結局、プロジェクトを任されてから慌ててセミナーを受講し書籍を読み、プロジェクトマネジメントツールを導入して使いこなせず困難に直面している…それが、多くのプロジェクトを任されちゃった方々の実情です。
研修で知識をただインプットしても、実際の役には立たない。かといって現物のプロジェクトを練習用に用意するわけにもいかない。そこで私が開発したのが、「兵棋演習(へいぎえんしゅう)」を参考にした「プロジェクトドリル」です。兵棋演習とは軍事作戦を立てる際、状況を地図上にコマを置いたりして再現してシミュレーションを行う方法です。英語では War gameや Military Simulation等と言います。
擬似演習としての「プロジェクトドリル」
この「プロジェクトドリル」では、「プ譜」というフレームワークを使います。「プ譜」とは、プロジェクトの状況や諸要素の関係性を構造化し、一枚で全体像を可視化するためのシートです(『プ譜』について詳しく知りたい方は、著書『予定通り進まないプロジェクトの進め方』をご覧ください。このコラムでは、『プ譜』について知らない方でもわかるように説明していきますので、ご安心ください)。
これまで私は「プロジェクトドリル」の課題として、モノづくりやデザイン、スポーツや医療・福祉、自然生物やエネルギーといった様々な分野から200以上のプロジェクトを収集し、演習課題としてストックしてきました。私の講座や研修では、受講生の方々に合わせてその中からピックアップし、疑似的に仮説を立てたり、うまくいっていない状況の改善方法を考える課題に取り組んでもらっています。
ドリルのお題ごとにプロジェクトに必要な思考の型や技術、原理原則を学べるようになっているので、ただ座学として情報をインプットして終わるのではなく、その場で疑似的に実践してもらうことができます。それによって情報が少しでも活きた知恵になり、実際のプロジェクトで似たような状況に遭遇したとき、「これはどこかでやったことがあるぞ」と思い出して失敗を回避したり、より良い改善ができるようになったりすることを企図しています。
今回、このドリルをウェブ連載という形で一般に公開することで、プロジェクトの“筋力”づくりにつながるのでは?という思いでコラムを始めることにしました。
ドリルはプロジェクトに関する知識や経験がない方でも取り組みやすいよう、身近な題材からお題を選び、初心者向けかつ大事なものから始めて徐々にレベルを上げていく予定です。
様々なジャンルのドリルに取り組むことで、プロジェクトの“筋力”が身につくだけでなく、みなさんの身の回りの出来事や読んでいる書籍やニュースからも、プロジェクトに役立つ教訓やアイデアを引き出すことができるようになるかもしれません。そうなればもう、プロジェクトに必要な思考の型はあなたのものです。ぜひ楽しんで取り組んでみてください。