掲げるのは「デジタルマーケティングの健全化」
元イスラエル国防軍の諜報機関である8200部隊の技術者を中心に2016年に設立されたマーケティングに特化したセキュリティを提供するチェク・ジャパン。技術者らがそれまでに培われたセキュリティ技術を転換し、全世界で1万5000以上の企業で利用されている。掲げているのは「デジタルマーケティングの健全化」。近頃はデジタルの世界でもいろいろな犯罪がある。ますます巧妙化していくデジタル犯罪に対し、不正を検知して防ぐといった作業を日々行っている。
盗みとられた広告費はESG経営においても損失に
「2025年には広告費におけるデジタルの割合が60%に到達する」という電通の発表について、「不正を行うユーザーからすると大チャンス」だとチェク・ジャパン営業部の佐々木俊道氏は語る。デジタルへの投資が増えれば増えるほど、不正を行うユーザーたちが大事な広告予算を盗み取るチャンスも増えてしまうというのだ。盗み取った広告費はテロ組織の活動費や武器の購入費にも使われることもあるという。企業は被害に遭ってしまえば利益の損失だけでなく、企業のブランディングや、環境や社会への配慮、労働者の人権など持続可能な発展を目指すESG経営という観点においても損害となるのだ。
不正について白・黒・グレーを見極めて対策
佐々木氏はデジタル犯罪の事例を挙げた。それには、競合から狙われて攻撃されるものや、たまたまウェブ広告を出稿していたがゆえに巻き込まれてしまうケース、金銭目的にターゲットにされる場合など、目的は様々だという。また、ボットを使って会員登録して不正に入手したクレジットカード情報を使って、ECサイトで商品を購入し、転売するといったような目先の利益を追うケースもある。ただ、対策をとり、不正クリックを阻止することで、本当のお客様も防いでしまうのではないかという懸念するマーケターもいらっしゃるかもしれないが、そうならないよう、チェク・ジャパンでは自社の技術とクライアントが持っているデータを駆使して白と黒とグレーを見極め、顧客に応じて設定をすることが可能だとしている。
デジタル犯罪の危険にさらされていることは、当事者も気づかない
同じく登壇者で、バイク王&カンパニーのデジタルプロモーション部門 デジタルマーケティンググループマネージャーの大石和生氏は、同社でアフィリエイト広告も含めて、さまざまなデジタル広告を手がけている。同社はチェク・ジャパンを利用している会社の1つだ。利用するまでは、ボットを使うようなデジタル犯罪の危険に自社がさらされているという意識はまったくなかったという。ところが、チェク・ジャパンを利用して、アフィリエイト領域において不正が発覚し対処することとなった。「不正なアフィリエイターというのは違法なサイトに人間の目には見えないような小さなアフィリエイト広告を埋め込む。ユーザーはその広告をクリックした自覚はなく、たまたま広告に表示されていた商品を購入した場合、アフィリエイト広告にまったく触れていないのにもかかわらず、アフェリエイト広告を見て購入したとして、企業は払わなくてもいい成果報酬を不正なアフィリエイターに支払うことになる」。「さらに、企業の広告を自作の偽サイトに表示するようボットを使って回遊させ、大手プラットフォーマーに偽サイトが優良なサイトだと誤認識させることで広告費を荒稼ぎするものもいる。」と佐々木氏は語る。
不正トラフィック対策により、有効な媒体に再配分できる
ただし、新しいサービスを利用するとなると、毎月の投資が必要となる。社内説得について、大石氏はこう語る。「デジタル広告における不正トラフィックを低減することにより、その分を有効な媒体に再配分できる。無駄な広告投資を減らし、デジタル広告の投資効果の向上に貢献できるんです」。新たな予算を確保するのではなく、使う先を見極めるということだ。広告費を適正に使うことで、より効果が高まると社内を説得したそうだ。また、デジタル犯罪は新しい手法がどんどん生まれ、不正を見つけてもまた発生するといったような、まさにいたちごっこのような世界。いろんな企業がチェク・ジャパンに参画して継続していくことで、デジタル犯罪対策の精度もより上がることとなり、「社会のためにも続ける意味はあるのかな」と大石氏は明かす。
サービス導入において、どう社内を説得するか
CHEQ を導入するにあたっては、まずは無料で現状、どれだけ無効クリックが発生しているか、どのキャンペーンからどの不正ユーザーが訪れていて、それがいくらぐらいの損失になっているか、細かいデータをレポートとして受け取ることができる。そのデータをもって社内で「このぐらいの被害が実際に出ていて、このライセンス費用で投資する価値があるかどうか」検討することができるという。導入してからは、定例会で不正がどの媒体でいくらぐらい発生したのか、最新の市場の動向、たまに不正クリックが急激にスパイクすることがあり、それについての報告などを受けることができる。
生成AIにより、海外からのアタックが増加する 可能性も
今後の展望を佐々木氏、大石氏がそれぞれ自身の立場から話した。佐々木氏はデジタル犯罪から守る側として、「日本企業のセキュリティは、IT部門によりサーバー側の対策が多重かつ強固に管理されていることが多いです。一方で、クライアント側のセキュリティ対策においてはまだ手付かずな企業が多いのではないでしょうか。近年、侵入しづらいサーバー側よりセキュリティが脆弱な3rd partyタグに悪意のあるJSコードを仕込むといった事象が起きています。実際、高度なプログラムの知識がなくても生成AIを使って学生が瞬時にボットを作成できる現状が存在しています。セキュリティ対策を講じることは、自社のブランド価値をを守ることに通じます。そのため、サーバー側の対策だけでなく、クライアント側のセキュリティにも十分な注意が必要です。CHEQは、マーケターが企業のために行った施策が気づかぬうちに大きな損害を受け、さらには企業に忍び寄る脅威の入り口になってしまわないように脅威からお守りします。」と語った。
また、サービス利用側の大石氏は「不正クリックでのお金を、適正な媒体に再配分していくことが重要」だと、広告主としてしなければいけないことに改めて目を向けた。「弊社でいうと、バイクのことが好きで、当社のサービスを広げてくださる媒体がいるなかで、その方々に適正な広告費を配分するのが大事。本来はきちんと収益が得られる媒体がなくなってしまうことも防げるし、デジタル広告の健全な環境を作っていくのは、広告主という立場からも考えていかないといけない」と語った。生成AIの発展により、これまで「日本語」という壁で海外からのデジタル犯罪が入りにくくなっていた環境が、変わってしまう可能性がある。デジタル犯罪の事例認知をもっと国内で広げて、対策していくことが必要となりそうだ。
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