「節約意識高いほうが、年間支出大きい」博報堂買物研究所が調査で発表

博報堂買物研究所は2月1日、「値上げ・物価高騰に関する生活者調査」の結果を発表した。

買物研究所は、「売るを買うから考える。」をスローガンに、2003年から活動している博報堂のシンクタンク。今回の調査は、生活者の実質賃金が上昇しない中、数年にわたって物価高騰・値上げが継続している今の生活者の購買行動や消費意識の変化を捉えることを目的に実施。生活者の変化を“意識(アンケート)”と“行動(購買データ)”※1の両面を捉えるかたちで実施された。※2
※1 モニターにバーコードリーダーを貸与して日々の購買データを収集・分析し、商品購入実態をリサーチするマクロミル社QPR™、およびその協力者へのアンケート配信によるもの。
※2 各社から値上げが発表されている商品項目を中心に実施。

本調査で明らかになったのは、多くの生活者が「値上げを実感」し、「節約を意識」しているにもかかわらず、節約行動が物価高騰に追いつかず、購入金額の増加につながっていることだ。

また、「節約を意識する」人のほうが、クリスマスや年末を控える12月といった“特別なタイミング”において普段よりも“ちょっとした贅沢”を楽しむ傾向も見られたという。

今回の調査の主な結果は以下の通り。

  • ①生活者の値上げ実感
  • 「食品・飲料」カテゴリーでは6商品項目において8割以上の生活者が「値上げを実感」と回答。特に「お菓子・スイーツ」「インスタント食品」「パン・シリアル」では9割を超えた。
  • ②生活者の節約意識
  • 「食品・飲料」カテゴリーの購入において「節約を意識する」生活者は全商品項目で8割を超え、特に「インスタント食品」「清涼飲料水/ミネラルウォーター」「冷凍調理品」では9割を超えた。
  • ③節約意識と購入金額
  • 「節約意識が高い」人のほうが、低い人よりも「お菓子・スイーツ」「アルコール飲料」「調味料」など複数の「食品・飲料」カテゴリーにおいて、「安価な商品を買う」という節約行動をとっているにもかかわらず、年間支出が大きいという傾向があった。
  • 「家族構成などにより購入頻度や購入量の調整が難しく、購入金額が高くなってしまう人ほど、節約意識が高くなる」、あるいは「安価な商品で我慢をしている分、買う頻度や個数は抑えられず、買い過ぎてしまう」といった生活者のジレンマも推察される結果に。
  • ④12月の購入金額状況
  • 2023年12月は他の月と比較し多くの商品項目で購入金額が増加。特に嗜好性の高い「お菓子・スイーツ」においては、「節約意識が高い」人の方が低い人よりも高価格帯商品の100人あたり購入金額増加率が高い傾向にあった。

博報堂買物研究所による、調査結果からの分析は以下の通り。

9割がお菓子、インスタント食品、パンの値上げ実感

調査の結果、多くの商品項目において生活者が「値上げを実感」※3しており、「食品・飲料」カテゴリー※4では6つの商品項目において8割以上、「トイレタリー」カテゴリーと「健康食品/栄養補助・機能性表示食品/トクホ」※5ではそれぞれ6割以上の生活者が「値上げを実感」と回答。特に、「お菓子・スイーツ」「インスタント食品」「パン・シリアル」における値上げの実感は9割を超えた(図1)。
※3 「実感している」「やや実感している」の合計
※4 「インスタント食品」「冷凍調理品」「アルコール飲料」「メニュー専用調味料/料理の素」「パン・シリアル」「清涼飲料水/ミネラルウォーター」「お菓子・スイーツ」「調味料」の8商品項目のこと
※5 「洗剤・掃除用品」「生理用品」「インバス用品」「オーラルケア・口内衛生用品」「化粧品・スキンケア」の5商品項目のこと

グラフ その他

また、特に値上げの実感が大きかった「食品・飲料」カテゴリーの購入においては、「節約を意識する」※6生活者はすべての商品項目で8割を超え、特に「インスタント食品」「清涼飲料水/ミネラルウォーター」「冷凍調理品」では9割を超える結果となった(図2)。
※6 「少しは意識して買い物する」「意識して買い物する」「とても意識して買い物する」の合計

グラフ その他

節約意識の高い人のほうが、年間購入金額が上昇

その他、「節約を意識する」人の節約行動としては、「特売・セールで購入」(35.5%)「できるだけ安い商品を買う」(29.5%)の2つの回答が多く、「商品の買い控え」は12.6%に留まる結果に(図3)。

グラフ その他

特に値上げの実感が大きかった「食品・飲料」カテゴリーでは、値上げ前(2020年)と2023年を比較しても、節約意識の有無によって購入金額の増加率に顕著な差は見られなかった。

しかし、「節約意識が高い」人※7は、「節約意識が低い」人※8よりも「清涼飲料水/ミネラルウォーター」「冷凍調理品」「メニュー専用調味料/料理の素」の購入金額が低くなった。一方、「食品・飲料」カテゴリーのその他の商品項目では「節約意識が低い」人よりも購入金額が高く、「食品・飲料」カテゴリーにおける年間支出は大きい傾向にあったことがわかった(図4)。

さらに、「お菓子・スイーツ」「アルコール飲料」といった嗜好性が高い商品項目に注目してみると、「節約意識が高い」人の方が、いずれの商品項目においても「安価な商品を買う」という節約行動をとっているにもかかわらず、年間購入金額が上昇していることがわかった。特に「お菓子・スイーツ」では「節約意識が高い」人の方が、年間購入金額が約1,600円高くなっていた。

この背景には、「家族構成などによって購入頻度や購入量の調整が難しく、購入金額が高くなってしまう人ほど、節約意識が高くなる」、あるいは「安価な商品で我慢をしている分、買う頻度や個数は抑えられず、買い過ぎてしまう」といった生活者のジレンマも推察される結果となった。
※7 図2の質問に対し「意識して買い物する」「とても意識して買い物する」と回答した人の合計。
※8 図2の質問に対し「少しは意識して買物する」「意識して買い物していない」と回答した人の合計。

グラフ その他

また、2023年12月は他の月と比較し、多くの商品項目で購入金額が増加した。嗜好性の高い「お菓子・スイーツ」「アルコール飲料」においては、「お菓子・スイーツ」が約350円増加。そして、「アルコール飲料」が約470円増加するなど、特に金額の増加が多くなった。また、「お菓子・スイーツ」では、「節約意識の高い」人の方が「節約意識の低い」人よりも高価格帯商品の100人あたり購入金額増加率が高い傾向にあったこともわかった(図5)。

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グラフ その他


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