AIと言っても活用方法はさまざま
電通デジタルでAIエンジニア/プランナーを務める石川です。初回では「AI×クリエイティブ」をテーマに対する記事を執筆しましたが、その過程でAIの使用方法と倫理観について再考する機会がありました。今回は「いま注目すべきAIの技術と表現」に焦点を当て、お話しできればと思います。
近年、AIは急速な進化を遂げ、画像や文章をつくりだす生成AIが登場しました。生成AIについて簡単に説明すると、これまで画像生成と言語生成が別々のAIとして研究されていましたが、2022年にテキストを入力することで言語から画像を生成する技術が誕生しました。これにより、これまで人間の感覚では考えられなかった言語の可視化が可能となり、生成AIに大きな注目が集まりました。
翻訳のように言語から言語への変換やイラスト化のように画像から画像への変換 は直感的に想像できるのですが、言語から画像を生み出すという人間でもかなり難しいタスクをこなせることに衝撃を受け、これは世の中が変わると感じたのを今でも覚えています。
僕自身もこのAIを初めて利用した際、自分の言葉を絵に変えてくれる新しい感覚をどうクリエイティブに応用できるか模索し、実際に様々なキャンペーンでこのAIを活用しています。AIを活用した企画を考えれば考えるほど、広告においてもまだまだ新しい表現が可能だと感じています。
また前回の記事でも触れましたが、ここ数年で広告領域においても生成AIを用いた表現が増ており、様々な事例が出てきています。
例えば、Midjourney、Stable Diffusion、DALL-E3などの画像生成AIを応用した事例で、Coca-Cola社はテレビCMの作品内に登場する絵画に画像生成AIや有名な絵画のスタイルを転写できるイラスト化AIを利用し、3DCGともアニメーションとも違うAIならではの表現で、多くの注目を集めました。これにより、従来の広告表現にはない新しさや未知の視覚体験など強いインパクトを残しました。
伊藤園もまた、生成AIを活用してテレビCMに登場するタレントを生成し、さらに生成されたタレントの数十年後の姿を描き出し、この表現が国内で話題を呼び起こしました。
普通は特殊メイクやCGを用いて老後の姿を再現しますが、生成AIではそれが容易にできるため、とても効率的なテクノロジーの活用方法だと思います。
auでは今話題のイラスト化AIを用いて、人気イラストレーターの作品を約200点学習させ、過去のCM約160本の厳選シーンをイラスト化することで新しい表現へと生まれ変わらせました。
これらの事例を見てわかるように、AIと一口で言ってもその活用は様々あり、AIを用いた広告クリエイティブの表現も増えていることが伺えますし、AIは広告クリエイティブに対して新しい風穴を開けたと感じています。
一方で、ただAIを使うだけでは無機質な作品が出来上がってしまいます。
生成AIは、驚きと今までに経験したことのない表現を生むことを可能にしましたが、AIを用いてどのようなユーザー体験をさせたいか、どのような印象を作りたいかをしっかりと考えることが重要で、そこを突き詰めることでAIクリエイティブに人間味が生まれるのではないでしょうか。この人間味とは、何も考えずに全てをAIにやらせるのではなく、あくまでも人間の思考が介在する作品にあるのだと僕は感じています。AIを工数削減のツールとして使うのではなく、例えば古い作品を生まれ変わらせたり、もう存在していない画家のタッチを再現したり、3DCGやアニメーショでは出来なかったことを表現するための、あくまでもクリエイターの新しい表現手段として活用することが必要だと思います。
これからもAIとクリエイティブは新しい体験を作り続けると思います。
チャレンジングな未来が待っていますが、新たなアイデアで次なる革新を追求していくことが必要になることでしょう。
僕も、これからもテクノロジーを巧みに活用し、人間の感性と組み合わせて新たな広告表現を創り続けていきます。