本コラムでは、プロジェクトマネジメント力を高めるために必要な思考の型・原則・技法を身につけるドリル(練習問題)を、「プ譜」という共通フォーマットを使用して提供します。出題のネタは、古今東西のビジネス事例、歴史上の出来事、SNSで話題になった事例、マンガなどから幅広くピックアップ。すきま時間で楽しく取り組みながら、プロジェクトの計画立案や意思決定の力を高めることを意図しています。今回は実際の配膳ロボット導入プロジェクトを題材に、プロジェクトの進捗管理や評価に必要となるKPIの設定方法を考えます。
今回のドリルで鍛える力(ドリルの狙い)
・取るべき指標を設定する力
・指標の測定方法を決める力
こんな問題に心当たりがある人にお薦め
・取るべき指標が多すぎたり細かすぎたりして、測定コストが高くついている
・KPIは基準を満たしているのにプロジェクトが成功しない
プロジェクトドリル5問目「ロボット導入の成果を測るための指標を設定せよ」 難易度★★☆
ドリルのシチュエーション
今回は大手ファミリーレストランの配膳ロボットを導入したオペレーション改善プロジェクトを事例に取り組みます。みなさんはあるネコ型配膳ロボットの営業担当者です。この度、大手ファミリーレストランのフロア業務でロボットの実証実験プロジェクトを行うことになりました。ここでの検証がうまくいけば、全国にある2,100店舗にロボットが納入されます。全店への納入を判断してもらうには、ロボット導入の効果を示す必要があります。
そこで、フロア業務のどのような要素が導入効果を判断するための指標として相応しいのかを考えることになりました。獲得目標は「3,000台のロボットをレストラン2,100店舗に導入する」で、勝利条件は「生産性と接客サービスが向上している」です。この勝利条件を実現するための要素(指標)が中間目的に該当します。
問題1
今回の問題は2段構えです。1つ目の問題は、下のプ譜の左端に記載した「要素=指標例」から5つを選んで、中間目的のa~e欄に必要と思う指標を入れてください。
問題2
2つ目の問題は、設定した指標を測定するための方法を選ぶことです。aからeの指標を測定するための方法・ツールを何にするか、左端に記載した測定方法・ツール例から選んでください。
来店客の視点に立てば、「入店から着席までの時間」→「着席から注文までの時間」→「注文から料理が出てくるまでの時間」→「会計にかかる(レジ待ち)時間」というふうに要素と指標(時間)を並べられます。ホールスタッフの視点に立つと「料理ができて厨房からテーブルに配膳するまでの時間」や「片付け完了時間」を並べられます。いずれかが正解ということではなく、まずはプロジェクトの成否を評価するのに相応しいと思えるものを選べばOKです。
肝心なのはどのような方法・道具で測定し、その測定方法が予算や時間に見合っているかどうか?です。
「片付け時間」であれば、最も簡単なのは専任スタッフがストップウォッチを持って測ることですが、そのための人件費が発生します。配膳ロボットに料理を載せた時間と、客が料理を取ってロボットを帰らせるボタンを押した時間を取得する機能があれば、配膳までの時間は測れそうです。でも、もしこのような機能がなかったらどうしましょう?エンジニアチームにこのような機能の開発を依頼しますか?その開発コストは今回のプロジェクトで得られる売り上げに見合うでしょうか?また、開発に要する時間は、実験期間中に収まるでしょうか?
士気・やる気を測るためにヘッドギアなどをつけて脳波を取得して分析するでしょうか?その分析コストは非常に高いものになりそうです。そんなことをせずとも、「ロボットとの協働は楽しいか?」「業務はラクになったと感じるか?」といった項目を設けたアンケートをつくり、尺度で回答してもらった方がいいかもしれません。
ドリルの教訓
数値はプロジェクトの進捗管理や評価を行う上で非常に便利でわかりやすいものです。しかしそのわかりやすいものが、選ぶ方法によっては使ったお金や時間と成果を見合わなくさせてしまう原因になる可能性もあるのです。
このドリルで参照したWebコンテンツ
すかいらーくは3000台のネコ型配膳ロボットをどうやって導入しきったのか。(安藤 健/ロボット開発者さんのnote)
すかいらーく「ネコ型配膳ロボ」3000台導入を成功させた「特命チーム」に迫る(ビジネスインサイダー記事)
すかいらーく、ネコ型ロボ「主役」 3000台で運営変革(日経新聞記事)
『プ譜』についての詳細はこちら
『予定通り進まないプロジェクトの進め方』 (前田考歩・後藤洋平著)
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