120年超の歴史を持つ化学メーカーの東洋インキSCホールディングスは1月1日、「artience(アーティエンス)」に社名を変更した。1907年から社名に主力製品の「インキ」を冠してきたが、新社名は「art」と「science」を組み合わせた造語だ。
「コロナ禍を機に社会のニーズが変化する中、変革の姿勢を社内外に示す必要があると考え、2021年ごろから社名やブランドプロミスの見直しについて議論してきました」と説明するのは、広報室の渡辺健太郎室長。
現在もインキ事業が売上高の半分を占めるが、利益の3分の2はインキ以外の事業。新たな時代に企業として向かうべき方向性を明確にしたいという思いもあった。
新社名が示すのは、祖業であるインキの色彩などがもたらす感性的な価値(アート)と技術・素材・合理性(サイエンス)の融合だ。ものづくりの技術とともに、「人々の感性に響く価値」を提供していこうという意志を込めた。
ブランドの見直しにあたりパートナーとなったのは、インターブランドジャパン。クリエイティブディレクターの中村直継氏を中心に、新社名の開発から関わった。
「インキを通じてアートやビジュアルに寄与してきた起源は、他の化学メーカーにはない強み。教養の多様性を表すリベラルアーツという考え方にも通じ、ラテン語の“arte”には技術という意味合いもあります」(中村氏)。
ロゴは柔らかなフォルムの「a」に、幾何学的な2つの四角いドットを組み合わせた。これはアートとサイエンスという、相反する価値観の融合を表す。
キーカラーは濃い緑で、ドットの部分はエメラルド系の緑を組み合わせた。緑の反対色である橙色も設定し、シンボルとしての色のコンビネーションを複数用意した。
「日本企業のブランディングとしては珍しい色づかい。ロゴを起点にしたブランドの印象形成も大事にしていて、『a』の造形を広告やWebサイトなどで象徴的に使用できるデザインシステムも定めました。今回の施策によって関わる人たちの心が変わり、生み出すサービスや製品も変わっていくことがゴールなので、これからが本当のブランディングの始まりだと考えています」(中村氏)。
スタッフリスト
- 企画制作
- インターブランドジャパン
- CD +デザインディレクター
- 中村直継
- D
- 中村賢太、中村真太郎、押田明子、山崎大作
- バーバルディレクター
- Seppo Kurki