生産者・消費者・地球環境の視点に立つものづくり KAPOK JAPANのマーケティング戦略

生活者の意識・行動の変化が激しい時代。生活者の支持を得るブランドになるためには市場の動向に合わせてスピーディーな意思決定も必要です。こうした市場で顧客を増やし成長を遂げるスタートアップ企業では、どのようなマーケティング戦略が企画され、また実行されているのでしょうか。新興企業の戦略から新しいマーケティングの方法論を導き出します。
※本記事は月刊『宣伝会議』2月号の転載記事です。

写真 人物 プロフィール KAPOK JAPAN
        代表 深井喜翔氏

KAPOK JAPAN
代表
深井喜翔氏

サステナブルで機能的な“木の実”由来のファッションブランド

木の実由来の天然素材「カポック」を使用したものづくりを行うファッションブランド「KAPOK KNOT」。2019年の立ち上げ当初はECサイトでの販売がメインだったが、2022年9月には渋谷ミヤシタパークにブランド初の旗艦店をオープン。百貨店や人気セレクトショップでの取り扱いも増加し、近年注目を集めているサステナブルブランドだ。

写真左 カポック 右 「KAPOK KNOT」キービジュアル
天然素材「カポック」を使った「KAPOK KNOT」。

KAPOK JAPANの創業者で代表を務める深井喜翔氏は、創業77年の老舗アパレル企業の四代目。大学卒業後、ベンチャーの不動産会社、大手繊維メーカーを経て、2016年に家業である双葉商事に入社。現在は家業とKAPOK JAPAN両社の経営に参画している。

ブランド立ち上げのきっかけは、双葉商事に就職後、ブランドからオーダーがあった洋服をカンボジアで制作しているときのことだった。「東南アジアでは、この5年で最低賃金が2倍に上がっているにもかかわらず、日本で我々が購入する服の値段はほぼ変わらず、むしろ平均単価は下がっている。このままでは現地で過重労働や児童労働を強いるか、自分たちの利益を削るかしかない状況だと危機感を抱きました。これから跡を継ごうとしている事業が全く持続可能ではないことに気づき、人にも地球にも負荷が重くのしかかっている構図を根本的に変える必要があると感じました」。

大量生産・大量廃棄を前提としたビジネスモデルから脱し、生産者・消費者・地球環境の視点に立つものづくりが必要だと考えた深井氏。そこで注目したのが「カポック」だ。カポックは東南アジアに自生する植物で、繊維はコットンの8分の1の軽さで、吸湿発熱機能を備えており、木の実のため木の伐採も必要ない。さらに、原料の価格はダウンの20分の1程度だ。軽くて繊維が短すぎるがゆえに加工が難しいという弱点があったが、繊維をシート状にすることで製品化に成功。羽毛の代替素材としてアウターの中綿に活用している。

「当時は、代替肉のマーケットが欧米を中心に広がっている時期でした。動物由来のものを植物由来へ変えることで環境負荷を下げられるのはもちろん、動物愛護にも貢献できて、コストも下げられる。これまでのサステナブル文脈は利他的な要素が多かったのが、『自分にとっても嬉しい』という利己的な魅力も訴求できる。この“動物由来のものを植物由来へ”という変化をアパレル業界で起こしたいと考えました」。

……この続きは月刊『宣伝会議』2月号 で読むことができます。

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『宣伝会議』2月号(12月28日発売)

書影 宣伝会議2024年2月号
  • 特集
  • 2024年、マーケターの思考を
  • アップデートする15の論点
  • —法令、社会の動き、生活者トレンドから読み解く
  • 【12のマーケティング用語アップデートポイント】
  • ・マーケティングテクノロジー
  • 完全性、正確性…自社データの“質”がより重視されるように
  • データ資産への投資が企業の最優先課題になる
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  • ・アドベリフィケーション
  • 生成AIの浸透でMFA(made for ads)が大きな課題に
  • より精度の高い広告主側の対策が必要とされる
  • 武田 隆
  • ・広告メディアと監査
  • マスメディアにも広がる「広告監査」
  • コンプライアンス意識の高まりから日本国内でも関心高まる
  • 小久江士郎
  • ・顧客インサイト
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  • 堀 宏史
  • ・生成AI
  • AIによる広告制作の変革が本格化
  • 企業の知財戦略に影響を与える法規制の動きにも注目
  • 岡本青史
  • ・デザイン思考
  • 生成AIが浸透する時代だから必要な「人間中心」の倫理観
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