ロート製薬は2024年1月、連続ドラマ『院内警察』(フジテレビ系列)の番組提供に合わせてドラマとコラボレーションし、謎解きの要素を盛り込んだ交通広告を展開した。一見するとドラマの番宣広告のようだが、広告主はあくまでロート製薬。「目」やアイケアの重要性にちなんだクリエイティブが展開された。
出演者の名前に隠された「謎」とは
フジテレビは2023年10月の番組改編で金曜21 時のドラマ枠を新設した。ロート製薬はこの改編のタイミングからスポンサーとなり、タイムCM を流している。今回、コラボレーション広告が実現したのは、新設枠で2 作目となるドラマ『院内警察』。桐谷健太が主演し「院内交番」を舞台とする漫画原作の作品だ。
本広告はロート製薬が企画・提案し、博報堂とフジテレビの協力のもと実現。目的はロート製薬による「アイケアの啓蒙」と、ドラマを楽しみにしている層への期待感の醸成だ。
ロート製薬で宣伝業務を担当する尾﨑嵩さんは「ドラマは非日常に没入するコンテンツ。その面白さを活かし、通常の広告では実現できないようなメッセージを発信することを期待しました」と説明する。
グラフィックはフジテレビによる番組宣伝ポスターをベースに、ロート製薬の目薬「V ロートプレミアム」を配置した。ところが出演者名を記した赤い明朝の文字をよく見てみると、出演者(桐谷健太・瀬戸康史・長濱ねる・市村正親)の漢字の一部分が欠けている。
「面白いドラマに集中していると目が疲れてしまう。だから目を大切にしましょうね、という流れです。ドラマ、アイケアのどちらにも落ちる内容にしています」(博報堂 コピーライター 高木俊貴さん)。
フジテレビのロゴも「目」を奪われた
広告はドラマの初回放送の前日にあたる1月11日から、ゆりかもめの車両内とゆりかもめ新橋駅に掲出した。「目を奪われるドラマです。」「ちょっとお茶目なシーンにも期待。」など、目にちなんだコピーが6 種あり、それに対応して出演者4 人の名前のうち、「目」「メ」と読める部分にデザインを加えた。
「目を奪われる~」では文字が欠けたデザインに、「ちょっとお茶目な~」では、ハートマークをあしらうなど「よく目を凝らすと違いがわかる」仕掛けを施している。掲出サイズやデザインの種類を掛け合わせると、制作したポスターの数は82 種にも上った。
この表現のアイデアを出したのはロート製薬側だった。「出演者の名前に『目』『メ』と読める字が多く含まれていると気付いたことがきっかけです。近年は謎解きや考察もののコンテンツが増えているので、広告を見た人に面白がっていただけるのではと。やがて電車内の広告ジャックの案が出て、それなら複数パターン考えようと決まったんです」と尾﨑さん。
コピー案は高木さんと2 人で出し合った。アートディレクターを務めた博報堂の竹内堅二さんは「コピーが決まるたびに、ハートや渦巻きなど文字に施すアイコンを考えました。タイトな中でなかなか大変でした(笑)」と振り返る。
掲出後は、SNS 上でドラマや出演者のファンが複数のポスターを投稿するなど、一定の反応が見られた。「事前に大々的な告知はしませんでしたが、熱量の高いコアなファンに届いた実感があり反応としては合格点。ちなみに、実は誰にも発見されなかった“謎”がひとつあるんです」。
「フジテレビといえば目のマークが有名ですが、今回のポスターではフジテレビの社名の後ろに空白があるバージョンがあります。これは“目を奪われる”というコピーにかけて“目のマークが奪われた”ということを意味しています。同時に、広告の考査でロート製薬とフジテレビのダブルスポンサーと見なされないようにするという実務的な配慮でもあるんです。こういった細部に至るまで、チームで遊び心をもって挑戦できたことに意義がありました」(尾﨑さん)。
スタッフリスト
- 企画制作
- 博報堂、ミズ
- ECD
- 尾﨑嵩
- CD+AD
- 竹内堅二
- 企画+C
- 高木俊貴
- D
- 矢木重治
- メディアプロデューサー
- 伊藤光平、鈴木慶
- AE
- 飯諭、坂本泰敏
- 出演
- 桐谷健太、瀬戸康史、長濱ねる、市村正親
- 掲出
- ゆりかもめADトレイン(1/11 ~ 1/20)、ゆりかもめ新橋駅構内(1/15 ~ 1/21)