サントリー、伊右衛門リニューアル 「濃さ」重視の戦略で挽回を図る

緑茶本来の味わいで差別化

サントリー食品インターナショナルは、緑茶ブランド「伊右衛門」をリニューアルし、3月12日に全国販売を開始する。緑茶本来の濃い味わいを追求し、茶葉の量は現行品の1.5倍、「旨み抹茶」は3倍に増加。初の試みとして抹茶は2種類をブレンドし、香りと旨味を引き出している。

写真 商品・製品 現行品と比較して茶葉や抹茶の配合量が増えたリニューアル後の「伊右衛門」(右端)
現行品と比較して茶葉や抹茶の配合量が増えたリニューアル後の「伊右衛門」(右端)

機能性表示食品の「伊右衛門 濃い味」と比較し、より旨味が感じられる濃さを目指したという。現行品のメインターゲットは40~50代を中心としていたが、リニューアル後は若年層にも訴求したい考え。パッケージも一新しており、現行品よりも緑色ラベルの面積を広げることで、味が濃くなったことをアピールしている。

2004年発売の伊右衛門は今年で20周年を迎えた。昨年の飲料総市場の出荷実績は前年並みだったが、同社の飲料出荷実績は102%で過去最高を更新。一方で伊右衛門(本体緑茶のみ)の販売数量は過去最低となった。20年のブランドリニューアルで一旦回復したものの、それ以降は減少傾向が続いている。

同社によると、気温の上昇傾向で水分補給のニーズが高まり、飲料もすっきりとした飲みやすさが求められているという。緑茶飲料メーカーもこの需要に応え、すっきりとした味を追求しており、スタンダードな緑茶では味の差別化が難しくなっている。価格が重視されるようになり、価格上昇が目立つナショナルブランド(NB)よりプライベートブランド(PB)が伸長傾向にあるほか、のどを潤すための飲料として麦茶やミネラルウォーターを選ぶ人も増えているという。

こうした背景が伊右衛門の不振要因とみており、単なる止渇飲料ではなく「旨味」や「濃さ」など緑茶本来の味わいを訴求するブランド戦略を打ち出した。日本茶系飲料は飲料市場で最も大きなカテゴリーで、伊右衛門ブランドの構成比は同社飲料の約13%(出荷ベース)を占めているため、リニューアルで挽回を図りたい考えだ。

物価高騰の結果、価格に見合った品質も求められるようになったことも新しい伊右衛門にとって追い風になるとみている。マイボイスコムのアンケート調査によると、消費者のお茶の好みについて「濃い味、こってりした味が好き」と答えた人の割合は、2017年と比較して、約5ポイント上昇。クロス・マーケティングが2023年に実施した調査では「なるべく濃いものを好む」と答えた人の割合が6割以上だった。

写真 人物 集合 2月29日に実施した新CM発表会で登壇した堺氏(左)と古川氏
2月29日に実施した新CM発表会で登壇した堺氏(左)と古川氏

イメージキャラクターとして俳優の堺雅人氏、古川琴音氏を起用。両者の初共演となる新テレビCMとして「美容室」篇を3月9日から、「レストラン篇」を3月18日から全国で順次放映開始する。お茶に関心がない主人公を演じる堺氏に古川氏がリニューアルした伊右衛門を勧めるという内容で、飲み手の視点に立ったCMは今回が初となる。

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