進化する「エンタメの総合代理店」
ソニー・ミュージックソリューションズは、1987 年にCBS・ソニーコミュニケーションズとして設立、CD ジャケットの製作・製版などから事業をスタートした。2019年のグループ再編と現社名への変更を経た現在について、「音楽を中心としたエンタメの全てを一気通貫で制作し形にできる企業」と同社クリエイティブプロデュース本部 スペースプロデュースオフィス(SPO)次長の中村貴雅さんは語る。
その言葉通り、ソニーミュージックグループの資産や技術などを活かした制作プロデュース機能を持ち、音楽・映像ソフトなどの製造・物流・販売やEC サイトなどのデジタルソリューションの提供、グッズの企画・制作・販売、スタジオ運営や放送事業などエンタメの舞台裏を支えている。多彩なクリエイターが在籍する同社では、最新の技術やトレンドを取り入れながらグループ内外問わずニーズに合わせたソリューションを提供する。中村さんが率いる「スペースプロデュースオフィス(SPO)」と呼ばれる空間プロデュースチームも、その一角を担う。「グループ内に各分野のプロフェッショナルが多数所属しています。たとえばイベント運営なら空間デザインから現場の運営、グッズ制作、物販、撤収まで実現可能。“エンタメの総合代理店”として、ワンストップでのビジネス展開を実現してきました」(中村さん)。
オフィス空間のプロデュース実績も
SPO は一級建築士事務所として登録され、一級・二級建築士や一級建築施工管理技士ら有資格者のほか、プロデューサーやディレクターらが在籍。グループが持つ音楽や映画、アニメ、キャラクターなどのリソースを活用した総合空間プロデュースを主要事業として、イベント空間やオフィス空間などの内装・設計・施工を数多く手がけてきた。空間デザイン・施工を担う他の企業などにない特徴として、中村さんは「グループの強みとともに、これまでエンタメ業界で培ってきたノウハウや知見、技術を空間にも応用できます」と説明する。
近年、同社では空間に心を動かすデザインを加えて新たな付加価値をもたらすことを「EX(エンタテインメント・トランスフォーメーション)」と定義。テクノロジーによる快適性や効率化の実現、場のあり方の変革を超え、その先にある“感動空間”のデザインを目指している。ソニーグループならではのテクノロジーを活用した設計、施工を一貫して担うことで、「心にふれる空間化=EX化」を実現させている。
「“人を楽しませることに価値がある”と考えエンタメに徹するマインドが、ソニーミュージックグループの軸となります。SPOも例外ではなく、顧客に楽しんでもらい、感動を与えられるかを常に考えています」(中村さん)。グループが持つ映像技術なども駆使しつつ、テクノロジー偏重ではなくユーザー目線でいかに体験価値を高められるかに注力している。
最近ではオフィスリニューアル分野などにも進出。デロイト トーマツのビジネス拠点「Deloitte Tohmatsu Innovation Park」やスマートフォン向けゲーム『Fate/GrandOrder(FGO)』の開発・運営で知られるラセングルなどのオフィスも手がけた。イベント全体や個別の展示ブースなどの実績も多く、東京ビッグサイトで毎年3 月に開催されるイベント「AnimeJapan」では、アニプレックスやTOHO animation、『FGO』などのブースの内装・設計・施工を担当してきた。
SPO では現在、事業拡大や案件増加に伴い人材を募集中だ。建築士や建築施工管理技士などの有資格者のほか、エンタメ業界やイベント業界などの経験者、近接業界でエンタメに興味のある人が対象となる。「SPO には企画制作課と企画設計課があり、いずれも技術と予算を照らし合わせる“企画脳”が重要。有資格者以外も多数活躍しています」と中村さん。自身も経済学部出身で、20 代で中途入社した。「グループにSPO のような部門があることを驚かれますが、この分野で約30 年の実績もある。空間プロデュースやエンタメの仕事に挑戦したいという熱意があれば、ぜひ門を叩いていただきたいです」(中村さん)。