ヤッホーブルーイングは3月8日、「卒乳」などの節目に合わせた新セット、新ブランドの発売など、2024年度の事業方針を発表した。売上は前年度比で2ケタ伸長を目指す。
5月上旬にも新ブランドを発売する。ヤッホーブルーイングの井手直行社長は方針発表会で「プレミアムどころかすごいビール」と話し、期待を高めた。「現在、日本にはない市場」だとして、ネット販売から始める考え。
既存ブランドでは、ローソン限定で販売する留め型ブランドの「僕ビール君ビール」で、ローソンと共同で10周年企画を実施する。同ブランドだけでなく、クラフトビールに勢いをつける取り組みも強化する。23年に全国に販路を広げた「正気のサタン」は、アルコール度数0.7%を強調し、「微アル」の表記を追加する。ヤッホーブルーイングはことし1月、アサヒビールや、クラフトビールも販売するトリクミ(鳥取県八頭郡)と共同で、消費者イベントを開催。参加者数は24人だが、次回参加意向率は100%と好評だった。
3月8日には、「隠れ節目祝いセット」を、公式ネット通販サイト「よなよなの里」などで発売した。基幹ブランド「よなよなエール」2本と、専用の“卒業証書”1枚、賞状筒のセットで、2690円(税込)。売上目標は公表を控えた。
「妊娠によってアルコールを摂取できなくなった」という理由で定期購入(サブスクリプション)サービスを退会した利用者の声をきっかけに開発したもの。2023年3月に、消費者プレゼントとして提供したところ反響が大きく、定番商品化した。
プレゼント企画は対象者5000人に対し、応募総数は1万7000件に。特に多かったのが「卒乳してビール飲めるねセット」で、4000セット増産した。応募数も2万7000件まで増え、ヒット企画となった。卒乳は、子どもが授乳を必要としなくなることを指す。
「母親だけでなく、夫から妻に対し、卒乳のギフトとして贈られるケースもある。こうした、ちょっとした節目を『隠れ節目』としてお祝いする文化を広めていきたい」(プロモーション責任者の河津愛美氏)
ヤッホーブルーイングの2023年度(22年12月〜23年11月)は、前年度比微減で着地。コロナ禍で伸びたコンビニでの売上が一服した影響が大きく出た。食品スーパーは変わらず好調で、ビアレストランの「よなよなビアワークス」や、本社を置く長野・軽井沢の観光需要は復調。
2024年は、前年度から復活した消費者向けイベントを拡大する。1000人規模の参加者がある「よなよなエールの超宴」を5年ぶりに開催するほか、数十人〜100人ほどの小・中規模イベントも、「去年以上に参加件数を伸ばしたい」と井手社長は話す。
「強いて言えば『隠れ節目祝いセット』は、これまで当社のクラフトビールを知らなかった、あるいはさほど接点のなかった方向けと言える。イベントはファンの方向け。ただ、あまりどちらにフォーカスする、というのを決め込みたくない。イベントにもファンの方がご友人などを連れてこられるし、実は全体の3割ほどを占めている」(井手社長)
泉佐野市(大阪府)との共同プロジェクト「ヤッホーブルーイング大阪ブルワリー」は、開業時期を25年春から26年に延期する。当初の投資予算を15億円としていたことについて井手社長は、「障害があって延期というよりは、やりたいことがどんどん出てきてしまってずれ込んでしまう。ただ、26年中には必ず開業するし、できるかぎり早めたい」とした。