この映画が大変な人の逃げ場になればうれしい(前田弘二・倉悠貴)【前編】

【前回コラム】3期生のおかげで、櫻坂46がパワーアップした(藤吉夏鈴&山﨑天)【後編】

今週のゲストは、2023年10月27日に公開された映画『こいびとのみつけかた』の監督・前田弘二さんと、主演を務める倉悠貴さん。なんと8日間で撮影したという映画の撮影秘話や役作りについてお話いただきました。

今回の登場人物紹介


写真 人物 (左から)中村洋基、権八成裕(すぐおわパーソナリティ)、澤本嘉光(すぐおわパーソナリティ)、前田弘二、倉悠貴
(左から)中村洋基、権八成裕(すぐおわパーソナリティ)、澤本嘉光(すぐおわパーソナリティ)、前田弘二、倉悠貴

※本記事は2023年11月5日放送分の内容をダイジェスト収録したものです。

「ムトゥ?」と踊り出すCM

澤本:はい、みなさんこんばんは!CMプランナーの澤本です。

権八:こんばんは〜。権八です。よろしくお願いします。

中村:Web野郎こと中村洋基です。

権八:澤本さんの今のテンション。

中村:澤本さんテンション高いですね、うれしい。

澤本:あの先週、先々週の。

権八:そして急に下がる(笑)。

澤本:櫻坂46の方々がゲストだった回の番宣を自分で聞いてみて、「何この暗い人」と思って(笑)。

中村:番宣ね、1回しか流れなかったらしいんですよね。

権八:番宣流したんだ。すごい。

中村:せっかくの櫻坂46のおふたりってことで。

権八:それで澤本さんも気合入れて聞いたと。

澤本:うん。そしたら「みなさんこんばんは……CMプランナーの澤本です」みたいな。

権八:でもその落ち着いた感じも……

澤本:でも聞こえないよ、あんなの、声。

権八:そうですか。でもそれが好きだっていう方も。

澤本:聞いたことがない。具体名ある?

権八:知らないけど(笑)、でもいると思うよ本当。

中村:FMは本来そんな感じですしね。大丈夫ですよ。

権八:いいんですよ、マイペースでも。ありのままで。

澤本:頑張りまーす……

中村:最近見た仲野太賀さんが出ていたCM(-196℃瞬間凍結「ムトゥ踊る無糖レモン」篇)。これ権八さんじゃかってないかっていうタレコミ情報が。

権八:はい。何人かの方に「これどうせ権八だろ」みたいなことを言われまして。

中村:僕も「どうせ権八さんだろ」と思いましたけど。

権八:どうせって言うな(笑)。

中村:『ムトゥ 踊るマハラジャ』(1995年、監督:K・S・ラヴィクマール)のやつですよね。

権八:無糖レモンを飲んで、あまりにレモンみが強くて、「ムトゥ?」って感動して歌って踊ってしまう。

澤本:でもさ、踊るマハラジャってみんな知ってんの?最近の人。

権八:あれ公開されたのって90年代とか?

澤本:そうだよ。

権八:映画で知らない人もいるでしょうね。

澤本:『RRR』(2022年、監督:S・S・ラージャマウリ)と間違えるんじゃないの。

権八:だから僕も企画通らないと思ったら、わりとサントリーさんも即決で。「これだー!」ってなって。でもおかげさまでとっても反応がよくて、売れ行きもよろしく。ありがたい。だから知らない人も面白がってくれるんですよ。

澤本:それは太賀さんがインドの方になりきってくれちゃって。

権八:振り切ってるでしょ。

澤本:だって顔もインドの方だもん。

権八:いろいろメイクもしました。言っておきたいのは、『ムトゥ 踊るマハラジャ』の公認なんですよ。

澤本:あっ本当?

権八:はい。だから映画側に許諾取って、「パロディーさせてください」って相談しながらつくっていますので。ここをぜひ声を大にして言いたいですね。インドといろいろやり取りしながら「オマージュしていいよ」って許可をもらっています。

中村:知らない人、まだリーチしてない人は「ムトゥ 196」とかで検索してみてください。

では、今回も素敵なゲストにお越しいただいております。映画『こいびとのみつけかた』(2023年、監督:前田弘二)監督の前田弘二さん、そして主演の倉悠貴さんです。こんばんは、よろしくお願いします。

辛ければ辛いほどうまい派の教徒

中村:前田監督は澤本さんのご紹介ですかね。

澤本:はい。Twitter(現・X)で「来てもいいよ」って言っていただいたんで。

権八:来てもいいよ!?いきなりそうはならないでしょ(笑)。

澤本:なんだっけ、メッセージ的なやつで。

中村:DMでね。それはもうジャンピング土下座で「来てください」ですけどね。

澤本:すごい昔に、僕が水戸短編映画祭の審査員をやっていたことがあって。だって権八もいたじゃん、水戸短編映画祭。

権八:水戸短編映画祭、やりました。

澤本:やったよね。そのときのグランプリ監督なので。

権八:えっ、あのときですか。

澤本:何年やった?

権八:僕は1回だけです。

澤本:1回か。でもその回かな、2006年ですよね。

前田:はい。

権八:あ、その頃かも。

澤本:そうそう。

前田:じゃあそのとき僕も見てますよね。

澤本:『古奈子は男選びが悪い』(2006年)っていう、もう何かね。

権八:面白そうだけど。

澤本:すぐに男の人と仲良くなりすぎちゃう女性の話で。短編っていってもそこそこ長かったですよね。

前田:そうですね、50分ですね。

澤本:それがめちゃめちゃ面白かった。で、そのときに少しだけ話をさせていただいていて。その後『婚前特急』(2011年)っていう吉高(由里子)さんが主人公の映画を撮られていて。あれ吉高さんが殴る蹴るの暴行を加えていてすごく面白くて、というふうなことからたまに拝見させていただいたりとかしていて。

中村:はいはいはい。で、今回はね、映画『こいびとのみつけかた』についてということで、ではまずはじめにこの映画についていろいろ聞いていきたいんですが。毎回ゲストの方にお願いしている「20秒自己紹介」をお願いできればと思いまして。この「すぐおわ」は広告の番組ということで、ラジオCMの秒数が20秒なんですね。なので20秒ぐらいで自己紹介とか、何でも構いませんのでやっていただけないかなというコーナーです。これは前田監督と倉さんのどちらから?

:あ、じゃあ僕から行きます。プレッシャーを感じたんで(笑)。

中村:じゃあ主演の倉悠貴さんから「20秒自己紹介」、ご準備よろしいでしょうか?

:はい、よろしくお願いします。

中村:では、どうぞ。

カーン♪

:こんにちは、倉悠貴です。映画『こいびとのみつけかた』に出演しております。この番組を見て気になった方は、ぜひ見ていただきたいなと思っております。最近ハマっているものはカレーです。よろしくお願いします。

前田:余ってる。

:あー、よろしくお願いします。見てください!

カンカンカーン♪

澤本:初々しい。

権八:そうなんだ。この番組を見てってね、見れないですけどね(笑)。

:あっ。聞いて!

権八:一応ね、ツッコみました。いやでもそうですよね、ぜひ見ていただきたいと。で、カレーが好きなんですか。

:はい。最近カレーの辛さをどんどん上げていくのにハマってて。

権八:どんなカレー?ココイチ?

:みたいな。今8辛とかまでいっていて。

中村:2辛ぐらいでもう結構辛いはずなんですよ。だけど、20辛とかまであって。

権八:そんなにあるの?

中村:YouTuberが挑戦してるのとかそんな感じなんじゃないですか。

澤本:おいしいの?それ。

:まだギリおいしいが勝ってるかなぐらいですけど。

中村:どっかで勝たなくなりますよね。

:そうですそうです。

澤本:その先なんでお金払ってそんなもん食わなきゃいけないの?

中村:痛い痛い、みたいなね。

:ドMなのかもしれないです。挑戦してます。

澤本:食ったっていうのに達成感があるの?それって。

:「俺一歩強くなったかな」とはやっぱり思いますね。

権八:辛いの好きな子ってそういうのがあるのかな、レベルアップしたとか。

中村:あ、でもありますよ。Web野郎中村も辛ければ辛いほどうまいんじゃないか派の教徒です。信者です。

権八:そうなんだ。

中村:だからいつも限界超えて、「お腹が痛いよ」みたいな。

澤本:どちらかというとお腹痛い派じゃない?

中村:お腹痛い派でもあります。

澤本:もともとね。

中村:お腹痛い派の教徒でもあります。

権八:そうだよね。倉さんはお腹は大丈夫?

:お腹は一定のラインを超えると、次の日に大体お腹が痛くなるんですけど。でも食べたその直後からお腹が痛くなる(辛さの)ラインが来るんですよ。今もうそれに差し掛かってて、次食ったら危ないんじゃないかなって思ってます。

全員:あははは(笑)。

権八:そうなんだ。8辛が倉さんの瀬戸際だということがわかりました。

:はい、今崖っぷちです。

中村:では続きまして前田監督、ご準備よろしいでしょうか?

前田:はい。

中村:行きます。では、どうぞ。

カーン♪

前田:こんにちは、前田弘二といいます。普段は映画を見たりつくったりしてます。結構変な映画をつくることが多いです。最近ハマってるのは、なんだろう、海外ドラマとかそういうの、結局見ることが多いですね。はい。

カンカンカーン♪

全員:あはははは。

権八:淡々と。すごくいいキャラ。見たりつくったり、やっぱり見たり(笑)。

前田:つくるときのストレス解消でも、結局映画見たりとかしてるので。よくわかんなくなりますね。

:つくってるのが好きなのか見るのが好きなのか。

前田:つくることにもう疲れてきて、でもその鬱憤を晴らすために見て。

:発散してみたいな。

権八:今度はまた見ると監督の職業病で、イマジナリーラインがどうだとか、撮り方とか脚本の構成とか、そういうつくり手の目線ばかり気になっちゃって、結局仕事モードになっちゃったりとかないんですか?

前田:見る作品にもよると思うんですけど、わりかし現実逃避みたいな感じでもうまったく関係ない世界に飛び込んだ方が気持ちが結構リラックスしたり楽になったりとかはありますかね。

主人公が前田監督に似ている……?

権八:リスナーの方に向けて、『こいびとのみつけかた』がどんな映画かっていう紹介を、まず倉さんからお願いしていいですか。どんな映画なんですか?

:どんな映画かって言われるとかなり難しいんですけど。

権八:これ本当に独特な。

:僕が演じた大島杜和(とわ)という男の子が、コンビニで気になる女の子を見つけて、落ち葉をコンビニの前から自分がいるところまで並べたら、その子と話せるんじゃないかっていうところから始まるんですけど。

中村:やばい。やべえ奴ですね。

:で、その女の子も仲良くなっちゃう。本当に来ちゃって仲良くなって、そこからどうなるかっていう。冒頭はそんな感じです。でも何て説明したらいいか難しいんですけど、「これはメロドラマです」って最初に出てくるんで、メロドラマなんだろうなって。

全員:あははは。

権八:先に出てきてるよね。

:はい。

権八:「メロドラマです」って宣言することの意味って何なんですかね。

前田:なんですかね。脚本に書いてあったんですよね。最初に「これはメロドラマである」って。普通ジャンルを紹介しないじゃないですか。「これはコメディーです」とか。何か妙なおかしさが最初あって、それでどう考えてもメロドラマの人物じゃない人間が登場してっていう話じゃないですか。『こいびとのみつけかた』って言って木の葉を並べるのもおかしいし、全部が間違っているような雰囲気でありながら、脚本を読んだ時もそうだったんですけど、最終的に「あ、メロドラマだ」って着地する感覚があって。それが面白いなっていう。ザ・コメディーではないんですけど、どっか僕らのなかでは喜劇じゃないですけど、シャレも含めて愉快な気持ちになりたいなみたいな。何か妙な面白さがあるなと思って、つけてみた、乗っけてみたっていうのはありますね。

:僕も今回脚本見て想像と違ったのが、恋の話でもあるんですけど、母性や母親を求める感じとか、それこそ現実からの逃避がテーマだったり、いろんな要素がいっぱい散りばめられていて。ラブストーリーなんですけどちょっと違う、I LOVE

YOUとして描いたメロドラマなのかなと。これも漠然としてますけど。

権八:具体的に言うとネタバレになっちゃうからね。漠然とせざるを得ないんだけど、いわゆる主人公の杜和くんも普通の常識のなかでは生きてなくてね、ヒロインの園子ちゃんも変わり者で、その2人のラブストーリーなんだけど、最終的な着地も『こいびとのみつけかた』と言いつつ、やっぱり常識から外れた場所に行くじゃないですか。「これってアリなの?」みたいな。だけどアリじゃないですか、ああいう終わり方もね。だから本当に本質的な「人生って何なんだろう」とか、「幸せって何なんだろう」とか、「生きるって何なの」みたいなことに、もうすごくピュアに子どものような目線で監督が肉薄してる。そしてそれを見事に演じてましたよね。

:ありがとうございます。

権八:いやいやもう。だって本当に杜和くんになってましたよね。

澤本:倉さんはやってみてどうでした?

:前田さんと僕は『こいびとのみつけかた』以前にも『まともじゃないのは君も一緒』(2021年)でご一緒してるんですけど、本当に物腰の柔らかい方で、今回演じた大島杜和と本当にそっくりなんで。

中村:えっ、そっくりなの?

:はい。こんなにピュアに映画に取り組む人っているんだなって思うぐらい、感じてるものも考えてることもすごく面白いですし、本当に杜和のまんまだなって思いながら僕はやってました。

中村:そう思ったエピソードとかってあります?やり取りとか。

:劇中にケーキを食べて「おいしいね」っていう2人で言って、餃子を食べて「おいしいね」って言う、ワンカットのシーンがあるんですけど、「映画のなかでそこが一番感動した」って言ってて。

全員:あははは。

:変わってる。

前田:「ケーキと餃子どっちが好き?」ってシーンがあって、そんで、ケーキ食べて「おいしいね」、餃子食べて「おいしいね」っていう、余計な言葉がなくてそれだけで成立しちゃう感じが撮っていて、グッときたんですよね。本当は昨日聞いたこととか、いろんなことがあったりするじゃないですか。でもそれだけで2人が成立しちゃうっていう感じが「なんかいいな」と思って撮ってて感動したんですよね。

:だからそういうことを素直に感じられるのがすごくピュアで、主人公の杜和らしいなって思いました。

権八:めちゃくちゃいいシーンですよね。だから本当にピュアな方なんですね。ちなみに僕が一番グッときちゃったのは、園子さんが床屋さんで焼きそばを食べるところ。焼きそばを食べ始めた瞬間もうすごいウッてきちゃいましたね。そこは救いがね、グッと救われるシーンでもある。最初オファーがあったときはどういう感じだったんですか?

:『まともじゃないのは君も一緒』で主演されてた成田凌さんもこの映画に出ているんですけど、成田さんって僕の先輩なんです。それで「これ面白いよ倉」って言われて、すごく圧を感じたところがあって。「これ面白いから、面白くなくなったら俺のせいなんだ」って。

全員:あははははは!

:すごいプレッシャーを感じてましたけど。

権八:めちゃくちゃ面白いな、最初に脚本を読んだときはどう思われたんですか?

:スッと胸が軽くなるような話だったので、読んだ後にいつもと空の色が違って見えるなみたいな。

権八:素敵。

:これはしっかり準備して臨みたいなって、本当に心から思って。台本をもらったのが多分2カ月前とかだったんですけど、それから毎日毎日読んでましたね。読めば読むほど何か、杜和はおかしな奴なんだけど、それを受け入れてる自分が出てきて。全然普通のことかもしれないみたいな、杜和が馴染んできたんですよね。そういう感覚がすごく楽しくて。

権八:あ、じゃあ倉さんはこういう人じゃないんですか。

:でも僕も挙動不審な部分とか。

全員:あははは!

:肥大化しました。

権八:いやあ、愛すべきキャラクターですよね。もしこういう子が近くにいて、自分の同級生とかだったらどうなんだろうなとか。途中で奥野(瑛太)さん演じる脇坂さんが「ちょっと付き合いきれないんだよ」ってなる瞬間ありましたけど、どうですか?近くにいたら。

:僕は今だったら全然受け入れられる気がします。「どんな人間がいてもいいじゃないか」っていうのが前田監督の世界観で、それが僕は好きになったので、もう大好きです。

現場で仕掛けてみた演技がフィットした

中村:倉さんは杜和くんを演じるための役づくりとかご苦労されたんですか?

:前田さんの作品って結構セリフが多かったりして、今回は特に新聞の記事をずっと読んでて暗記してるみたいな子だったんで、僕も杜和と同じように新聞の切れ端を自分のポッケに入れてスーパーとかで読みながら覚えたりとか。あとはキーボードを演奏するシーンがあって、その練習もかなりしたかなと思います。

権八:記事の切り抜きをいつも持ち歩いてって、それはこの映画の大きなキーアイテムなんだけどもそれだけじゃない、例えば杜和くんの歩き方とかも目線の動きとかも。

:そうですね、まあでも仕掛けてみたって感じですね。現場で仕掛けてみて、ダメって言われたらやめとこうって思ってたんですけど、まったくダメって言われなかったんで、もう最後までそれで押し切ったって感じですね。

前田:いやもう本当に本番でいきなりやってきたんで、「おっ、そんな歩き方をする?」っていう。でも倉くんもそうだし、園子役の芋生(悠)さんもそうでしたけど、「これってどうなんだ」っていうのをいきなり出してくる感じで、それをスッと「ああいいな」と思えて。2人ともまっすぐ演じてくれていて、出してきた答えがすごくいいので。

澤本:撮影の順番って、コンビニのシーンから撮ったんですか?

:いや、出会いのシーン。

前田:出会いのシーンですね。木の葉を並べて出会うシーンで、そこではじめて歩き出しがわかったという。さっき言ったコメディー要素だったり、ここで笑わそうかなと思うところが正直あったりするじゃないですか。脚本で「ここ笑えた」とかもあったんですけど、でも2人がすごく素直に演じてて、笑わそうとすることがある種あざとく感じてきて。むしろこの素直な演技を見てみたいっていう感じがあって、そこで2人の出してきた答えが本当に素直にすごく良かったんで、邪魔しないようにしてましたね(笑)。だからすごく楽しみでした。どういう感じでやってくるのかなって思ったし、2人の空気感もなだらかな感じがあったので、ロケも含めてただ居心地いい場所だけを選んでたって感じ。そこで心地よく演じてくれればいいなっていう、それぐらいかな。

:そうですね、特に動きとか言われることもなかったですし、「こう言って」とかもあまりなかったですね。

前田:あと8日間の撮影だったんですけど。

澤本:8日間ですか?

前田:天候が完璧でね。

全員:あははは。

前田:木の葉を並べるシーンとかは、風が吹いたら台無しになっちゃうんだろうなとか、かわいそうだな杜和くんとか。ならなかったんですよね。無風だった。

澤本:でもあれ8日で撮ったんですか。すごいな。

権八:すごいですよね。すごい撮影量。ていうかほとんどNGなしじゃないですか?

前田:そうですね、ほぼなかったですかね。歌も一発撮りですもん。

権八:えっ、すごい。

:一発OKでしたね、基本的には。長回しでグッと撮っていく感じだったので、止まることはあんまなかったですね。

権八:2人がはじめて出会って、2人でいる妙な気まずさがあるじゃないですか。多分2人にとっては気まずくないんだけど見てる側は気まずくて「これどうするんだろう」と思っていたら、園子ちゃん役の芋生さんが「移動する?」って(笑)。移動って何だろうみたいな。「どっか移動しよっか」って移動しだして、その後の歩き方が「こんな挙動不審な人いる?」って感じで、変じゃないですか。

:そうですね。

権八:ていうところから始まるので、だから僕「これずっと見てるのつらいかもな」って思ったんですよ。そしたら思わぬ展開でグッと惹きつけられて、いや本当に面白かった。

前田:そうなんですよね。ある種のピュアさなんですけど、ある種危ないところもあって。純粋ゆえに。

権八:そうそう、純粋ゆえのね。だからなんだろう、実在しそうなんだけど実在しないのかなこの2人は、みたいな不思議な魅力があって。いそうでいない2人じゃないですか。でもいるのかもしれないなと思わせる説得力とリアリティもある。ファンタジーを見てるような、すごい独特の読後感があって。

澤本:ね。

権八:素敵な映画でした。

中村:監督はどんな人に特に見に来てほしいですかね。

前田:いろんな人に見てほしいですけど、これはもうただのこっちの理想でしかないんですけど、結構大変なことがいっぱいあるなか、この映画がどこか逃げ場みたいになれればいいなと。あと周りが決めた型や枠からはみ出してる世界なので、スカッとする部分が感じられたらいいなっていうのはありますね。

中村:逃げ場。監督にとっての海外ドラマみたいな。

全員:あはははは。

前田:そうですね。

<次回につづく>

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