3月8日、産経新聞社は国際女性デーを記念した特別仕様のラッピング紙面を同朝刊に掲載した。
その日の朝刊は、国際女性デーのシンボルフラワー「ミモザ」に合わせて普段は青色の1面題字を黄色に変更。そして、新聞紙面にはメッセージを伝えるべく、ある仕掛けを施した。30段の紙面に描かれているのは、女性の不調に寄り添う難しさに戸惑う男性と、普段伝えられていない本音や感謝の気持ちがある女性。お互いに背を向けて、一見、分かり合うのが難しいように見える二人だが、一度紙面を裏返し、印刷された点線に沿って両端から折り合わせると……。二人が向き合い、「ぜんぶはわからなくていいかもね。あなたと私はちがうから」という新たなキャッチコピーが現れるのだ。
この企画は、フリーマガジン「メトロポリターナ」(産経新聞社発行)が取り組む「フェムケアプロジェクト」に伴う企画としてとして実施された。これはフェムテックやフェムケアに関する最新情報やイベントの実施など、女性の心と体のケアを考えよりよい未来につなげる産経新聞社の媒体横断型プロジェクト。2021年10月に始動した。
今回、「国際女性デー」に合わせ、DEIや相互理解までテーマを広げ、知ること、知ろうとすることの大切さを伝えたい。さらに、女性の健康課題や働く環境の変化などを「知る」ことで、多様な人が生きやすい社会の実現を目指すことをメッセージしたいという相談が、産経新聞社からクリエイティブチームにあったという。
「当初、今回のテーマを新聞のラッピング広告という媒体で、どのようにメッセージしていったら良いかを、幅広く、本当に全方位で考え、さまざまな可能性を検討しました」(クリエイティブディレクター 三井明子氏)
2023年に実施した『フェムケアプロジェクト』の第1弾の新聞広告は、『紙面を折る』企画だった。企画を検討する中で、その続編としても良いのではないかと考え、「『紙面を折る』企画を複数入れてご提案しました」と、三井氏。その中から選ばれたのが、今回の企画だ。
また、クリエイティブチームに相談があった時点で、青色の1面題字を黄色に変更すること。また裏面では30段を使って、国際女性デーの意味やミモザの由来などのトピックスをピックアップして理解を促す記事になることは決まっていた。
クリエイティブチームが重視したのが、30段に開いた際のインパクト。そして、内側に折り合わせることでメッセージが変化する“仕掛け”だ。
「読者のみなさまに実際に折る行為を通して、参加していただき、メッセージの変化に気づき、驚いていただきたい。そして、気づきや驚きが発話のきっかけになったら良いなと考えました」(三井氏)
二人が向き合った時に現れるコピーは、「ぜんぶはわからなくていいかもね。あなたと私はちがうから」。さらに折った広告を開くと、「知ろうとすることって、いいかもね。それも、やさしい一歩だから。」というメッセージが現れる。
「DEIやフェムケアなど新しい言葉が注目されるにつれ、『ちゃんと知らなければダメ』『間違えてはいけない』というプレッシャーも増えているかもしれません。ちがう人同士がぜんぶをわかりあう難しさや、その中でも思っている相手への気持ちに共感を示しながら、情報にふれるハードルを下げたい。そう考え、コピーは押し付けたり、決めつけたりするニュアンスを徹底的に無くすべく、ボディコピーの一言一句まで慎重に検討を重ねました。産経新聞社さんにも何度も何度もていねいにご意見をいただき、一緒につくっていきました」
昨年のプロジェクトの広告第1弾に続き、イラストはアートディレクター 澤谷直輝氏が自ら描いている。
「新聞30段のラッピング広告となるため、見応えのあるイラストにしたいと考えました。そのため、国際女性デーのシンボルでもあるミモザの花を背景や、リースの形で大きく描くことで、広告全体を見た時に華やかで、印象に残るようにしました。また、色鉛筆を用いて手書きで描くことで、異なる立場の人々がお互いに思いやりをもって関わることができるような、温かみのある雰囲気を表現しました」(澤谷氏)
SNSでは、題字部分がミモザ色になっていることとともに、メッセージが変わるラッピング紙面への注目が集まった。
スタッフリスト
- 企画制作
- ADKマーケティング・ソリューションズ、ADKクリエイティブ・ワン、産経新聞社
- ECD
- 辻毅
- CD
- 三井明子
- C
- 時田心太郎
- AD、D、I
- 澤谷直輝
- Pr
- 渡辺知明、熊倉伸吾
- AE
- 三浦貴夫、児玉礼、本庄響太、齋藤千紘