全日本広告連盟は3月13日、広告界の発展・向上に貢献した企業や広告・メディア関係者、クリエイターらを称える「全広連日本宣伝賞」の結果を発表した。
選考の結果、「松下賞」を磯崎功典氏(キリンホールディングス 代表取締役社長)、「正力賞」を戸田奈津子氏(映画字幕翻訳者)、「吉田賞」を天野幾雄氏(天野幾雄クリエイティブ・スタジオ アートディレクター/グラフィックデザイナー)、「山名賞」を故・篠山紀信氏(写真家)にそれぞれ贈賞することを決定した。
各賞は、5月15日に帝国ホテル東京で開催される第72回「全日本広告連盟東京大会」式典内で贈賞を行う予定。
優れた広告主に贈られる「松下賞」を受賞した磯崎氏は、キリンビール社長を経て2015年よりキリンホールディングス代表取締役社長。2024年3月28日より同社・代表取締役会長CEOに就任予定。CSV経営を掲げ、食・医・ヘルスサイエンスの3領域で世界を舞台にキリングループの変革・価値創造・価値向上を推進した。広告界においても、長年にわたり、ブランディング、商品開発などで高い存在感を示すとともに、広告関係者にとって大いに参考となる多数の成功事例を生み出している点が高く評価された。
メディア・イベント・コンテンツ関係者に贈られる「正力賞」受賞の戸田氏は、フランシス・フォード・コッポラ監督が来日した際の通訳がきっかけで映画『地獄の黙示録』の日本語字幕を担当し、以後長年にわたり洋画の字幕翻訳者として活躍。『E.T.』『タイタニック』『ミッション:インポッシブル』などを担当し、第一人者としての地位を確立した。年間50本もの翻訳を長年続け、日本のエンターテインメント界の発展に大きな貢献をするとともに、数多くの洋画を日本に紹介し、映画ファンを愉しませてくれたことが高く評価された。
広告関連会社などから選ばれる「吉田賞」の天野氏は、資生堂で宣伝部部長、役員待遇宣伝制作室長を歴任。1998年に開催された資生堂企業文化展「美と知のミーム、資生堂」展のプロジェクトリーダーを務める。東京アートディレクターズクラブ(ADC)賞、カンヌ国際広告祭金賞、銀賞、日本雑誌広告賞金賞など受賞多数。現在、日本デザイン団体協議会DOO、ジャパンデザインミュージアム設立研究委員。日本グラフィックデザイン協会(JAGDA)の運営に長年にわたり尽力。また、全広連日本宣伝賞選考委員および山名賞選考準備委員会委員長を21年間務めるなど、次世代の人材育成と広告デザイン界の発展に貢献した。
クリエイターが対象となる「山名賞」の篠山氏は、大学在学中の1961年に広告写真家協会展APA賞受賞。ライトパブリシティで活躍し、1968年よりフリーランス。1970年日本写真協会年度賞。1972年芸術選奨新人賞受賞。1976年ベネチア・ビエンナーレ国際美術展の日本館の代表作家に選ばれる。1998年国際写真フェスティバル金賞。2020年第68回菊池寛賞を受賞。2024年1月逝去。三島由紀夫、山口百恵、ジョン・レノンとオノ・ヨーコらその時代を代表する人物をとらえ流行語にもなった「激写」、複数のカメラを統合し一斉にシャッターを切る「シノラマ」など新しい表現方法と新技術で時代を撮り続け、広告・アート領域の発展に多大な貢献をした。