※本記事は、月刊『宣伝会議』2月号に掲載されています。
電通
クリエイティブディレクター・コピーライター
郡司 音さん
資生堂クリエイティブ
クリエイティブディレクター・コピーライター
山本邦晶さん
博報堂
アクティベーション
ディレクター・コピーライター
室屋慶輔さん
——審査を終えて、現在の率直な感想をお聞かせください。
郡司:様々な切り口や表現があって面白かったです。こういう方向性は思いつかなかったというものもたくさんありました。一方でやはり、似たような切り口のものが複数あったので、よりオリジナリティのある視点の作品を残しています。
山本:審査ファイルを開いたときに、大変なことを引き受けてしまったなと。でもそれはポジティブなもので、フレッシュな気迫に圧倒された、という感じです。普段コピーライターを目指す人が増えている実感はなかったので、これだけの数が集まっていることを嬉しく感じました。
室屋:これだけの量のコピーは業務でも見ることはなく…でも決して嫌な疲れ方ではなくて、心地よさがありました。途中で突然「これは手練れの同じ人が書いたのかな」というような、いわゆるWhat to sayが全然違う、それぞれ発見のあるものが続いたりして。それは面白かったです。
——作品を選ぶ視点として、実務との違いはありましたか?
郡司:普段の仕事での判断基準は、第一関門は「自分が面白いと思えるか」。ふたつ目が、「本当に世の中が面白いと思えるか」。3つ目が、これらを踏まえた上で、クライアントに価値のあるものになっているのか。「宣伝会議賞」の審査に関しては、クライアントの想いはそこまで分からないので、2つ目までの、僕が面白いと思えて、世の中に機能するかどうかを基準に選びました。
山本:実務とは違うという意識を持ちながらも、クリエイターとして惹かれるコピーを選びました。惹かれるコピーというのは、対象とする商品やサービスの価値をあげているかどうか。また、自分なりのアプローチを発見できているかどうかを、見ていきました。最近は戦略ががっちり決まったブリーフを受けることが多い。コピーにあまり幅を持たせられなかったりするんです。「宣伝会議賞」では、根本から考えられるから面白いですよね。
室屋:普段の業務と地続きで、発見があるか、課題を解決しているか、新しい市場をつくったか…といった点を見ていきました。どれかひとつでも当てはまれば、提案性があるので、僕としては良いコピーだと思っていて。普段だと、そこから丁寧にブラッシュアップしていって、クライアントに提案していく…という感じです。
——「今の時代を反映しているな」といった傾向は感じるものでしょうか。
室屋:ハッシュタグを使ったり、有名な作品や言い回しのオマージュやパロディ系は目立ったように思いました。でもそのゾーンは、相当上手く言い当ててないとむしろハードルが上がる気がします。
郡司:これは課題にもよると思いますが、僕が見た中では良くも悪くも、5年前、10年前でも大丈夫だなと思う作品は多かったように思います。僕が若い頃にも書いてたなあ、というものとか…。
室屋:課題の捉え方で、ああそういう風に見えているんだ、と世代や業界のギャップを感じた部分はありました。
山本:室屋さんがおっしゃるように、今っぽい表現手法を感じるアイデアは多くありました。そういう案に対してハードルがあがる、というとおこがましいですが、こちらもしっかり見なければと思いますね。年を重ねたからこそ思うのかもしれないですが、時代を超えても変わらない普遍的なインサイトに基づいて書かれているものを評価したいと。やっぱり「どんな時代か」って後の評価で定まるものなので、背景を含めて時代を言い表しているいいコピーだったね、と後でわかることがある。時代とコピーの関係性って、評価しづらいのかもと感じています。
…全文は、月刊『宣伝会議』2月号でお読みいただけます。