これは良書である。著者は日々指数関数的に変貌する“カンヌライオンズ”(以下カンヌと記す)の“今”を密度の高い言葉を散りばめ我々に熱くレポートしている。このところカンヌのクライテリア(評価基準)といえば「for good」、さらに解像度を増して「D&L」ダイバーシティ・インクルージョン、そこにE(equity /公平性)が加わり最重要課題は「DE&I」であると。翻ってニッポンはこれに4、5年後塵を拝しているとも言われるが、これこそが日本の広告界のいわれぬ閉塞感の一つの要因かも知れない。未だ現役、長年広告界から恩恵を得てきた私も黙ってはいられず拙著を拝して「広告から公告へ」、今こそ“広告の社会化”を目指そう!と老爺の戯言のように呟いているのだ。
いつまでも「欲望を喚起するだけの産業的広告」いわゆる20世紀型広告に止まってはいけない。「オーセンティシティ」(真正性)こそ今の時代のキーワードである。平明に言えばウソのない、ホンモノであることが求められている!と著者はよく人口に膾炙(かいしゃ)した世界の名作キャンペーンを指し、提言している。
「彼は、自慢の後輩です!」と恥ずかしいので茶化して後輩を紹介するのが私の慣いなのだが(笑)、ここにまた一人“自慢の後輩”が誕生した!著者名・橋本怜悦くん、広告史の新たなる証人だ。
杉山恒太郎(すぎやまこうたろう)
株式会社ライトパブリシティ 代表取締役社長
立教大学卒業後、1974年電通入社。東京本社クリエーティブディレクターとして活躍。1999年よりデジタル領域のリーダーをつとめ、インタラクティブ広告(ビジネス)の確立に寄与。トラディショナル広告とインタラクティブ広告の両方を熟知した数少ないエグゼクティブ
クリエーティブディレクター。2005年取締役常務執行役員を経て、2012年ライトパブリシティへ移籍。2015年代表取締役社長に就任。主な作品は、小学館「ピッカピカの一年生」、セブンイレブン「セブンイレブンいい気分」、サントリーローヤル「ランボー」シリーズなど。国内外受賞多数。2018年第7回ACCクリエイターズ殿堂入り。2022年全広連
日本宣伝賞「山名賞」を受賞。
『世界を変えたクリエイティブ 51のアイデアと戦略』
dentsu CRAFTPR Laboratory 著
本書はWEBサイト「LIONS GOOD NEWS 2023」に掲載したコンテンツをベースに、コミュニケーションの真理を9つに整理。それぞれの意味を表す花と花言葉に託し、カンヌライオンズの過去および最新事例とともに、コミュニケーション課題とその具体的な解決方法を紹介。また、本書で紹介した事例の日本語版字幕付き映像のQRコードも掲載しています。