花王のマーケターが副校長に転籍して1年 、初めての卒業生を送り出して今、思うこと

生徒と一緒に企業見学、TBSラジオにも出演

民間から茨城県の下妻一高の副校長に移籍した私が、自分の強みを活かして行ってきた「マーケティングゆるゼミ」。コンセプトは、マーケティングに興味がある生徒が、「ゆるーく」お昼休みに集まってマーケティングついて勉強するというものです。

そんな「ゆるゼミ」メンバーを含めた高校3年生が、3月5日に行われた卒業式で、下妻一高を卒業していきました。

写真 人物 集合 卒業生と筆者

24年間務めた花王から、全く違う業界に飛び込んで不安な毎日を過ごしていた昨年の4月。

そんな時に私に手を差し伸べてくれたのが、「ゆるゼミ」の生徒たちでした。

行動経済学の本を片手に、消費者の購買行動やマーケティングに興味を持って、私に話しかけてくれた時の様子は、今でも鮮明に覚えています。大学入試に向けた受験勉強の忙しい中、自分の進路実現のために、マーケティング分野について学ぼうという意思を示してくれたのは、本当にうれしいことでした。

時事問題をマーケティングフレームワークを使って勉強したり、生成AIの事例をみんなで勉強したり、サイバーエージェントさんやTBSさんに企業訪問させていただいたことは、生徒たちにとって、かけがえのない経験になったと思います。まさかTBSラジオに出演させていただくなんて、夢にも思いませんでしたから。

こんな経験を積むことで、自分のやりたいこと、社会に出て仕事をするイメージが少しでも持てる機会になったことは間違いないと思います。このような機会をいだいた、企業担当者のみなさまに、心から感謝の気持ちでいっぱいです。

このような1年間を、みんなと過ごした思い出が走馬灯のように頭をかけめぐり、卒業式では思わず涙ぐんでしまいました。その時、「自分が生徒のために役に立てて良かった」「勇気を出して転職に挑戦して本当に良かった」と、心から思いました。

花王では営業やマーケティングを経験し、商品を売ることに人生をかけてきた私ですが、そうした仕事とはまた違い、人を育てるとは、本当に責任重大な仕事だな、と教育という仕事の重みを改めて感じています。なぜなら、その人の人生を大きく左右してしまうからです。だからこそ、無責任な発言や行動はできない。あらためて、学校の教員は、やりがいのある偉大な仕事であると感じました。次世代の人材育成こそ、産業界の発展や、私を育ててくれた花王に恩返しできるのではないかと考えています。

写真 人物 集合 卒業生と筆者

4月からは126年の歴史を誇る伝統校の校長に就任

私は、4月から副校長で学んだ経験をもとに、126年の歴史を誇る伝統校の学校長に就任予定です。在校生はもちろんの事ですが、妻一OBも面倒を見てあげたい。そこまでが私の出来る守備範囲だと考え、「ゆるゼミ」OBコミュニティも新たに発足させました。

受験勉強をやりきった卒業生。これからは様々な大学に進学しますが、たまにはみんなで集まって、近況報告やマーケティングについて勉強したいと思います。大学生になれば、今までよりは時間がつくやすいですものね。

私がこの1年間学校現場で仕事をして思ったのは、いま学校に足りないものを加えたり、企業と学校を繋いだりする、ハブになるリーダーが必要だということです。

ハブ(架け橋)になるには、企業のことも学校のことも両方を知り、お互いの接点を見つけて結びつける必要があります。今私は、教育業界の学校現場で教育について勉強しています。

この貴重な経験を活かして、自分にしかできない「オンリーワン」の仕事をしていきたいと思います。そのひとつが、産学連携かもしれません。卒業した生徒たちにも次のようなメッセージを伝えて、自分らしく生きて欲しいとエールを送りたいと思います。

答えのない時代を生き抜く力を身につけるために、どんなことでもいいから世界一になって欲しい。余人をもってかえがたいオンリーワンになってほしい。
自ら課題を設定し、逆境に負けず、果敢にチャレンジして欲しい。
こんなアントレプレナーシップ精神こそが、今の時代に必要な心構えだと。

「マーケティングというスキル」があったからこそ、「ゆるゼミ」メンバーに出会えましたし、自分のマーケティングスキルを身に付けさせてくれた、前職の花王には感謝の気持ちでいっぱいです。今は違う業界にいますが、外から応援し続けたいと思います。

最後に、あらためてご卒業おめでとうございます!!
これからの益々のご活躍を祈願しております。これからも頑張れ、妻一OB生。

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生井秀一(茨城県立下妻第一高等学校・附属中学校 校長)
生井秀一(茨城県立下妻第一高等学校・附属中学校 校長)

花王の販売子会社に入社し、営業部門で大手流通チェーンを担当。ヘアケアブランドのマーケティングを担当した後、2015年にECの営業マネジャーとなり、花王のECビジネスを推進。2018年に全社DX推進をするプロジェクト型組織の先端技術戦略室に異動。2021年にDX戦略推進センターを設立、全社DX戦略を担当した。過去3度、社長賞を獲得。花王グループのDXを推進し、ECビジネスの構築などの推進役を担う。

2023年に茨城県とエン・ジャパンが実施した「ソーシャルインパクト採用」において、茨城県内の中高一貫校・専門高校の「校長」を教員免許不問で公募するプロジェクトに応募。1645人の応募者のなかから選ばれ、花王を退職して2023年4月から民間出身者の校長として茨城県立下妻第一高等学校・附属中学校に着任。

生井秀一(茨城県立下妻第一高等学校・附属中学校 校長)

花王の販売子会社に入社し、営業部門で大手流通チェーンを担当。ヘアケアブランドのマーケティングを担当した後、2015年にECの営業マネジャーとなり、花王のECビジネスを推進。2018年に全社DX推進をするプロジェクト型組織の先端技術戦略室に異動。2021年にDX戦略推進センターを設立、全社DX戦略を担当した。過去3度、社長賞を獲得。花王グループのDXを推進し、ECビジネスの構築などの推進役を担う。

2023年に茨城県とエン・ジャパンが実施した「ソーシャルインパクト採用」において、茨城県内の中高一貫校・専門高校の「校長」を教員免許不問で公募するプロジェクトに応募。1645人の応募者のなかから選ばれ、花王を退職して2023年4月から民間出身者の校長として茨城県立下妻第一高等学校・附属中学校に着任。

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