子どもへのアプローチと教育コンテンツ 15年続く東武鉄道のオウンドメディア

自前の情報発信拠点として多くの企業・団体が注目するオウンドメディア。戦略の立て方や効果測定の方法、制作のコツを探ります。今回は東武鉄道のオウンドメディア「TOBU Kids」の制作の裏側に迫りました。

※本記事は、広報会議2024年4月号の転載記事です。

DATA

URL:https://www.tobu-kids.com/
開設:2009年3月22日
コンセプト:小学生をメインターゲットとした、参加・体験型のサイト。親子で楽しめる様々なコンテンツを展開しているほか、参加者を募集して体験型イベントを開催するなど、楽しく、安心して遊んで、そして学べるサイトを目指している。
所管部門(うち人数):広報部(3名)
制作体制:記事の制作・更新については外注
更新頻度:CMS・LINEともに月4回程度
総記事数:2019年以降は約120本
PV数:約5万8000PV/月
CMS:TOBU Kidsサイト用に独自カスタマイズしたものを使用
効果測定:PV数で実施

東京、千葉、埼玉、栃木、群馬の一都四県で鉄道を運営するほか、まちづくりやレジャー事業など多くの事業を営む東武鉄道。

次世代教育にも力を入れており、2009年に子ども向けの参加・体験型メディア「TOBU Kids」(以下、「キッズ」)を開設した。東武鉄道沿線のおでかけ情報をはじめ、鉄道のしくみや鉄道にまつわる職業など、動画や写真、イラストをたっぷり使って紹介している。

ターゲットは鉄道好きの小学生を中心とした子ども。「東武鉄道のみならず、グループ沿線地域への興味関心や愛着を醸成することで、大人になった際に東武グループの利用はもちろん、沿線に住んでいただいたり、就職先として考えていただいたりと、長期的なファンになってもらえたら」と広報部に所属している担当者は語る。

蓄積された社内外の協力関係

約15年もの歴史がある「キッズ」だが、現在も月に4つの記事を更新する。

社内担当者で季節に合った内容や鉄道の新しいトピックなどを中心に立案。メディアの開設当初より関係が続いている委託会社にも過去の事例等を踏まえたアドバイスをもらい、ブラッシュアップしている。

「社内の各部署から、企画を提案してもらうこともあります。『キッズ』は当社唯一の子ども向けメディアで社内認知も高いので、子ども向けのイベントや鉄道好きのお子様が好きそうなネタなどは共有してもらえることが多いです」(担当者)。

子どもの関心と教育のバランス

効果測定として主に見ているのはPV数。また読者アンケートをとり、どんな記事が人気なのか、定性的な調査もしている。子どもたちに好評なのはイベントやお出かけといった体験につながる内容だ。

一方で、編集方針として教育につながる発信も重視。「ホームドアの設置でバリアフリーを推進していること」や「防災にまつわる体験ができる施設」などの情報を発信するほか、「こども版社会環境報告書」を毎年更新している。

これは、同社が毎年発表している「社会環境報告書」から一部を抜粋し、子ども向けに書き換えたもの。写真やイラストを使用した分かりやすい説明に加え、クイズで楽しく学べる仕掛けをつくっている。

「お子様に楽しんでもらうことを一番に考えつつ、教育という社会的責任も果たしていきたいと考えています」と川村氏。子どもの関心と教育のバランスがとれたコンテンツで、親が子どもに見せたいと思えるメディアを目指す。

15年経っても成長を続ける

同メディアは2019年にリニューアルした。「TOBU BomBo Kids」から「TOBU Kids」に名称を変更したほか、動画などコンテンツを充実させた。

開設当初から登場しているキャラクターもリデザインされ、東武鉄道の制服を着用。「キャラクターはメディアの認知拡大のための紹介カードに登場させたり、シールを制作しイベントなどでお子様に配ったりしています。やはりキャラクターがいるとお子様の反応が良く、関心を惹くきっかけとして機能しています」(担当者)。

子ども向けに作成している「TOBU Kids」の紹介カード。イベントや駅長の学校訪問などの際に子どもたちに配布している。

 

リニューアルにあわせ、LINE@公式アカウントを導入した。「キッズ」の更新通知をするほか、イベントやキャンペーンの募集窓口としても活用し、メディアとLINE公式アカウントの両方の成長を狙う。

少子化の中でいかに新規のファンを獲得し、定着させるか。

大きな課題を前に、川村氏は「キッズ」を「15年経っても成長段階」とした。「今年はイベントとメディアの連動がうまくいきました。今後もお子様に喜んでいただけるリアルイベントと連動して、メディアもさらに盛り上げていきたいと思います」。また、他社とのコラボも積極的に行いたいという。

「2023年度は花王さん、タカラトミーさんとコラボし、『クイックル×プラレール こども目線プロジェクト プレゼントキャンペーン』を実施しました。これを機に視野を広げ、『お子様』というキーワードで他業種の方々ともコラボをしていければと思っています」と語った。

 
 

広報会議の連載「オウンドメディアの現場から」では、このほかにも様々な業種・業態の企業のオウンドメディアの制作の裏側を紐といています。

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