劇場で体験する上質なCM「シネアド」制作をサポート
映画館というほぼ全員がスクリーンに注目する環境に加え、立地や上映する映画の客層にあわせたターゲティングも可能なことからも効果を発揮しやすいとされているシネアド。宣伝会議とシネコン大手・イオンエンターテインメントが連携して発足したプロジェクト「エールシネアドプロジェクト」は、「応援」をテーマに企業とクリエイターの架け橋となり、これからの活躍が期待されるクリエイターと共創したブランドのシネアドを放映する。第1弾は安室奈美恵・乃木坂46・Aimer・SixTONES・ハナレグミなどさまざまなアーティストのMVやCMの監督を務めてきた三石直和氏が、ホンダアクセスとタッグを組み、シネアドを制作した。
課題を一つに絞り、人の温もりを通して心に訴える
今回の案件における広告主・ホンダアクセスは、ホンダ車の純正用品の製造・販売を手がけている企業だ。これまでは新車を購入した顧客に対し、ディーラーオプションとして購入と同時に純正用品を選んでもらい、一緒に納品するというビジネスが主流だった。担当の五井宗平氏によると、これまでBtoC向けの大規模な広告展開を行ったことはほとんどなかったという。シネアドを活用した経緯について五井氏は「『(購入時だけではなく)車を購入した後で純正用品を取りつけられる』ということが、皆さんに広く知られておらず、課題に感じていました。新しいビジネスとして知ってもらう取り組みを模索するなかで、宣伝会議さんからご提案いただいたのがきっかけです」と話す。
エールシネアドプロジェクトはイオンシネマで放映されるのが大きな特徴のひとつで、なかでも「郊外型のイオンシネマは来場者の7割以上が車を利用していることが特に魅力的だった」と五井氏は言う。
制作前のオリエンでは、三石氏と作品がめざす方向性のすり合わせを行った。「純正用品は車の人の距離感を縮める存在だと思っているので、できるだけ人の温もりを感じる、エモーショナルな内容にしてほしいという希望はお伝えしました」。
ユーザーの客層のみならず、その気持ちにも寄り添う
三石氏はもともと「映画の本編が始まるまでの長い時間を、もっと効果的に使う方法があるのではないか」と考えていたという。MVを多く手掛けてきた三石氏は、最近では連続ドラマにも活躍の幅を広げているが、シネアドにフォーカスした映像制作は今回が初めてだ。「まずは『なにを意識してコンテンツを仕上げるべきか』ということを考え、どういう落とし込み方をするのかをデザインします」という三石氏。さらに「僕らがイメージした通りの印象を受け取ってもらえるかどうかというところまで考えなければいけないと思っています」と続ける。
自由な場所・時間で視聴するスマートフォンと違い、シネアドの場合は“映画を見る”という目的で集まった客に対し決められた時間に放映されるという媒体の特徴がある。また、利用客の気持ちや、扱う商材についての理解度・認知度などにも気を配る必要がある。そしてクライアントからの要望をもとに最適な落とし込み方を提案していくという。三石氏は「分析して、ユーザーの視点になってものを考えて作ることを大事にしています」とこだわりを見せる。
ターゲットを分析し、クライアントとターゲットの共通項を探る
三石氏は今回のシネアドプロジェクトのオファーを受けてから、どのように制作を進めていったのだろうか。「宣伝会議の担当者からは『温かくて人情味のある、ヒューマンなものを作りたい』と伺い、自分の立ち位置は決まりました。劇場で流れることは最初から決まっていたので、この2つを軸に、クライアントであるホンダアクセスさんがどう思っているかをオリエンで聞き、アプローチやターゲティングを分析していきました」。
ホンダアクセスからは「愛車を純正用品でアップデートする文化を醸成する」「お客さまがHonda Carsに来店するきっかけにする」というリクエストがあった。三石氏はオリエンと上映作品、映画館の立地からターゲットを「子育て世代のママ」(20代後半~40代)に設定した。ホンダアクセスの純正アクセサリーで愛車をフォームアップさせる“変化”と、ターゲット層の女性たちのライフスタイルの“変化”の共通項に着目したからだ。「子どもが大きくなって自分も年齢を重ね、世の中のトレンドも変わっていく。その中で、『車は購入したままの姿でいいのか?』という話に落とし込みたかった」という三石氏。車を買い替えるのではなく、純正アクセサリーで内装をリフレッシュしてもらうチャンスを作り、その必要性を訴えるというホンダアクセスの狙いを表現する映像の制作に着手した。
社内にもたらされた、シネアド上映後の思わぬ副産物
「子育て世代の女性にアプローチするという発想はなかった」。完成した映像の感想について、五井氏はこう振り返る。上映開始後は従業員にイオンシネマで映画を鑑賞できるチケットを配布して視聴を促したほか、社内の式典でも上映。五井氏自ら、今回のシネアドに込めた思いや狙いを説明した。「新車購入と一緒に購入いただくというビジネスが主流のなか、新しいビジネスに対してもなかなか(従業員の)マインドは変わらない。そこでシネアドという大規模な取り組みをしたので『会社の本気度』が従業員に伝わり、マインドセットが変わったような気がします」と話す五井氏。ターゲットへの訴求効果だけではなく、社内の文化醸造にも手応えを感じているようだ。
シネアドの可能性、シネアドを出発点とする可能性は、もっとある
クライアントであるホンダアクセスの熱意と、三石氏の綿密な分析によって制作された「エールシネアドプロジェクト_Vol.1_ホンダアクセス×三石直和」。制作を通し、三石氏は「作品や商材によりますが、シネアドじゃないと実現できない映像広告の作り方はまだまだあるのでは」と前向きだ。例えばシネアドの続きがネットで見られるといったコンテンツ的な構造や、4DXを利用したアトラクション的な作品など、さまざまな施策の可能性を探るべきだとした。さらに「映画の性質を狙ってターゲットをしぼることができる。一例ですがファストフードで楽しむシーンを放映すれば、映画鑑賞後にはそのお店で食事をしてくれるのでは」と広告としての効果にも言及した。
ホンダアクセスは今回制作した映像を、販売店であるホンダカーズでも放映する予定だという。「シネアドは一度しか見てもらえないもの。せっかく作ったので、もっと活用したい」と五井氏は意気込む。二次利用も含め、まだまだ可能性は広がりそうだ。
三石 直和
愛知県出身
丹下紘希氏に師事し、YellowBrainに参加。現在、広告・音楽・映画と幅広く活動。
「人間」や「商材」題材の未来を見据え 「見る側」との価値ある映像コミュニケーションを目指し、プランニングから演出をする。
安室奈美恵・乃木坂46・Aimer・SixTONES・ハナレグミなど MVやCMを監督。
近年は長編にも意欲的に活動中。
スタッフリスト
- 出演
- キタキマユ(アプレ)
- 出演
- 村越 莉桜(ウォーターブルー)
- 出演
- 室伏 凛香(ウォーターブルー)
- 企画演出
- 三石 直和
- 撮影
- 山本 宣明 、栗原 崇
- 照明
- 大堀 治樹、前田 諒
- 演出
- 内田 知樹
- ST
- 篠塚 奈美
- HM
- 伊藤 絵理
- CAS
- 山下 葉子
- 編集
- 三石 直和(オフライン)、廣岡 瑶平(オンライン・レスパスビジョン)
- カラ
- 高山 春彦(レスパスビジョン)
- MIX
- 中田 啓祐(レスパスビジョン)
- PM
- 金子 信弦
- Pr
- 渡邊 敬太、栗林 佑丞
- CPr
- 守谷 拓真
- 制作会社
- isai inc.
- 音楽
- odol 「不思議」