デジタルで新しいキャリアをスタート 大切なのは人が“教えたくなる”キャラクターになること!?

マーケティング×デジタル×プロジェクトマネジメントを兼ね備えた人材を目指すあなたへ、成長のヒントを様々な切り口で解説していく本コラム。今回は「仕事への姿勢。持つべき意識」についてお話しします。

とにかく強みを伸ばすことに時間を使う

私はデジタル人材としてキャリアをスタートする際、まずどういう人材を目指すのかハッキリさせることから始めました。デジタル専門人材と呼ばれるエンジニアやデータサイエンティストなのか、デジタル事業を推進するビジネス開発やプロジェクトマネジメントを行う人材なのか。

私がここで意識したのは、自分の「得意な仕事×好きな仕事」の総量を大きくするにはどうすればいいか?ということでした。私はプロジェクトマネージャー(PM)の経験を積んできたこともあり、モノを作るより、物事を推進する方が向いているし楽しかったので、後者のタイプでキャリアを積んできました。このとき良かったのは、苦手分野をどうにかするより、強みを徹底して伸ばすことに時間を使ったことです。

デジタルという新しい分野での仕事だからといって、それまでに培ったスキルが活かせないわけではありません。私は情報整理と説明が比較的得意だったので、デジタルの専門知識は平行して備えつつ、とにかく土台となるこうした能力を他の人と差別化できるまでに引き上げることを目指しました。

特にデジタルの仕事では、新サービスやシステム環境、仕組み、障害対応など関係者に説明する場面が実によくあります。例えば障害対応では、広範囲に散らかった情報を集約→要点整理→原因特定→対策思案→関係者へ説明→実行という流れをごく短い時間で対処しなければなりません。ですが、正確な情報整理と言語化をもって関係者へ即座に理解させられる人はさほど多くなかったので、自分の強みを伸ばして存在価値も発揮できるという意味では、目指す価値がありました。

さらに得意分野の学びであれば、吸収性が高く、成長速度も速い。人材として強くなるには成功体験を積み重ねて自信を得ることがいちばんなので、その足掛かりにすることを意識していました。

教えたくなる存在になること

新しいキャリアをスタートした直後は分からないことだらけなので、周囲の偉大な方々からの教えに支えられる時期があります。教科書通りに進められる仕事はほとんどないので、生きた教えを必死に吸収します。この時期に、私は「教えたくなる存在」になることを意識していました。

というのも、皆さまご存じの通り、新人の頃に人様から施される教育はお金に換えられないほど価値がありますよね。独学では早々に限界がくるなか、継続的に受ける高度な教えは成長を加速させてくれます。

しかし、(デジタル人材に限った話ではありませんが)右も左も分からない成長過程だからといって何もかも周囲から懇切丁寧にサポートをしてもらうのが当たり前かというと、そんなはずはありません…!社会にはたまにそういう意識の方がいますが、教える側からすると、(極端なところ)その人が急速な成長をしなくても別に困らなかったりします。適当にあしらわれることもあり得る。しかし、現場ならではの考え方や進め方が多いデジタルの仕事で、放置教育をされてしまうとお手上げです。だからこそ、教えたくなる存在になる必要がありました。

ちなみに私が考える教えたくなる存在とは、以下の4つの要件を満たす人でした。1.教えられたことを実行する、2.質問する、3.指導者とのコミュニケーションを大切にする、4.自分で考えて動ける人。当たり前の内容に見えるかもしれませんが、これをできる人は意外に少ないのです(指導する側になるとあらためて感じます)。

例えば、1.では自分が腑に落ちない教えであれば実行しない人もいますし、2.ではあやふやな理解のまま突っ走る人もいます。3.では相手を理解してさらに自分も理解してもらうための動きをしない人もいますし、4.では言われたことだけをやって満足する人もいます(教えを糧に自ら能力を高めようとすることが大事)。ひと言でいうと、教え甲斐のある存在です。指導者も相手から成長意欲を感じられないと教えるモチベーションが下がってしまうからです。

そして一方で、他人に物事を教えることは教える側も情報や考えが整理できてプラスの側面もあります。つまり、自分が物事を教えたくなる存在になることが、私には大きな有益性があり、また相手にもメリットがあるwin-winの関係を築くことができる。それが相手への敬意も含め、重要だと思ったのです。何より、お互いにそうした関わりがあるとその後の人間関係の強度が上がるので、長い目で見てもメリットだらけなのです…!

知識に価値を与えるのは、実務

マーケティング×デジタル×プロジェクトマネジメントでは、経験する領域が多岐にわたりますが、仕事を選り好みしていては前に進みません。とにかく飛び込んで体験する。実務を大量にこなせば知識が備わり、知恵が出るようになります。それを繰り返せば、誰とでも具体的な会話ができるようになり、案件が回せる、相談に乗れる、解決策を考えられる、人を評価できるという段階へ進んでいきます。

マーケティングやプロジェクトマネジメントには、何かひとつを経験すれば万全というものはありません。再現性のある理論はありますが、それが実務で再現できるかは別の話です。知識も同様に、備えるだけでは意味がありません。例えば、ITパスポート(ITに関する代表的な資格)を取得すること自体は素晴らしい行為ですが、ではITパスポートを保有する方が全員実務でも優れているかというと、そうでもありません。

知識は大切ですが、それを現場でどう使うかが大事であり、使い方をマスターするには実務を繰り返し経験するしかないのです。知識を得て、資格を取って満足ではなく、実践を通して自分なりの理論を蓄積していく。そこまで行動して、初めて知識に価値が生まれるのです。

アドバイスを見極める

(ここから少し失礼なことを話しますがご容赦ください。本コラムは本音で語るをモットーにしていますので…)

まず、自分が進めているプロジェクトに対して、アドバイスをしてくれる人は貴重です。特に大規模案件では、忙殺されていると自分の進め方や方向性が正しいのか、分からなくなる瞬間があります。そのとき、注目度の高いプロジェクトであれば、様々な人がアドバイスをくれます。それ自体は良いことです。関心を持って、うまく事が運べるように意見をくれるのですから。

しかし、なかには悪いアドバイスというものも存在します。チャレンジを阻害する意見です。「前例がないから止めた方がいいよ」、「かなり大変な取り組みだしリスクあるけど責任とれるの?」、「これはどんな成果物になっても絶対周りから文句いわれるね」…などなど、下記の図でいう左下のご意見ですね。

図

ネガティブでも本質的なアドバイスなら、プロジェクトの推進にはマイナスでも、自分も見落としている盲点へのリスクヘッジとなる可能性があることから有益です。

しかし、ネガティブで表面的なアドバイスは、恣意的な意見であることが多い。であれば、真剣に耳を傾ける必要はありません。何より、その恣意的な意見の発言者は、やめることによる損失の責任は何も取らない。あなたがPMであれば、その責任はあなたが取るしかありません。たくさんのアドバイスには感謝をしつつ、覚悟をもって意識的に取捨選択する必要があるのです。

点の仕事、線の仕事、面の仕事

私は業務を、個人の作業ベースである点の仕事、複数の領域に関与する線の仕事、事業やプロジェクト全体を推進する面の仕事と分類するのですが、私が指導するメンバーには線か面を担当してなるべく多くの領域を対応できる人材を目指すよう話します。

例えばEC事業なら、売上拡大、環境構築、UI/UX、運用効率化、分析、施策展開、外部サービス連携など様々な仕事がありますが、どれかひとつが得意ではなく、一連の対応ができるからこそ価値が上がるからです。

そうしないと「環境構築はしたけど、売れるECとしてのアドバイスはなかった」とか「分析結果の施策案は提案するが、必要な運用対応はしない」という話になってしまいます。これは単純なところ、対応幅が限られる人材は淘汰されかねない時代に生きている、ということなのです。悪い意味での意識的サイロ化を排除して、柔軟に幅広く対応できる人材の強さが、これからの時代には求められるのだと思います(なかなか難儀な時代ですよね…)。

ティーチングとコーチングを使い分ける

ここで少し育成する側の視点でお話ししたいと思います。経験を積んで立場が変わると、メンバーを育成するフェーズに移ります。育成をするうえで私が意識しているのは、答えを教えるティーチングと、ヒントを元に相手に答えを導き出してもらうコーチングを使い分けることです(特にPMに対して物事の捉え方や進め方について行います)。どちらが良いかは一概に言えませんが、育成の面では相手の思考力を鍛える意味でコーチングが好ましいとされています。しかし、これがなかなか難しい…!まず、答えまで時間がかかる。さらに、こちらは答えを知ってる風なのに相手はヒントを連発されるとやきもきしてしまうこともあります。そして何より、コーチングは自分と相手の対話を重ねて答えに近づいていく手法なので、相手のモチベーションに頼る部分が大きい(そもそもすべてのメンバーにコーチングは必要か問題があります)。なので、最初は相手を選んでスモールスタートがグッドです。コーチングがうまくできると対話中に発見もあるので、実りある時間になることは間違いありません。

危機感が、自分を高めるエネルギーに

いろいろと意識や姿勢についてお話ししましたが、これら必要なことをひと言で表現すると、私は「危機感」なんだろうと思います。あなたが何かひとつを習得しても、それが他者との差別化になるとは限りません。仮に差別化できても、半年後には陳腐化している可能性もある。誰もがやれることを延々やっていても差別化にはならないからこそ、自分の得意なスキルを絶対的な存在になるまで高める意識と姿勢が重要なんだろうと思います。

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冨田良介(ゴールドウイン システム部 ITストラテジーグループ マネージャー)
冨田良介(ゴールドウイン システム部 ITストラテジーグループ マネージャー)

外資系総合広告代理店でデジタル領域のプロジェクトマネージャー(PM)、アパレルメーカー及び消費財メーカーにて新規事業開発やOMO強化など全社横断プロジェクトのPM、EC事業責任者を経て、2019年1月にゴールドウインへキャリア入社。2020年7月にローンチしたECシステムのリプレイス・OMO強化のプロジェクトをPMとして推進。現在は全社のデジタル開発案件全般に携わっている。

冨田良介(ゴールドウイン システム部 ITストラテジーグループ マネージャー)

外資系総合広告代理店でデジタル領域のプロジェクトマネージャー(PM)、アパレルメーカー及び消費財メーカーにて新規事業開発やOMO強化など全社横断プロジェクトのPM、EC事業責任者を経て、2019年1月にゴールドウインへキャリア入社。2020年7月にローンチしたECシステムのリプレイス・OMO強化のプロジェクトをPMとして推進。現在は全社のデジタル開発案件全般に携わっている。

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