第38回全日本DM大賞の各賞が3月に発表されました。コロナ禍を経て日常が戻り、DMはどう変わったのでしょうか。受賞作品をもとに振り返ります。
本賞の受賞作、入選作を掲載した『事例で学ぶ成功するDMの極意 全日本DM大賞年鑑2024』が3月27日に発売されます。本記事はその抜粋です。全文は年鑑でお読みいただけます。
BtoBからBtoCへは本当か? 商談のきっかけをつくるDMは健在
今回出品されたDMの傾向について、「BtoB企業のDMが減り、BtoCに戻ってきた」とは多くの審査委員から聞かれた声です。コロナ下で対面による接触が制限されていた時は、営業パーソンの役割を担わせるべく、工夫を凝らしたDMが数多く登場。予算も投じられる傾向にありました。前回グランプリに選ばれたfreeeの「テンキーチョコDM」もそのひとつです。
対面接触のある日常が戻り、量的には圧倒的に多いBtoCへの揺り戻しが起きているのは自然なことといえますが、今回もユニークなDMはいくつも見られました。周年を迎える企業に向けて、プロジェクトのコンサルティングや制作などのサービスを訴求したTOPPANエッジはその一例。つくり込まれたコンテンツで周年プロジェクトへの理解を深めてもらい、商談のフックにつなげる工夫が凝らされています。
逆にシンプルなつくりなのが銅賞のPR TIMES。休眠顧客の再開拓という難しい課題を解決すべく、共感性の高い回答例を記したアンケートによって再商談につなげるという取り組みで手応えを得ました。
銀賞のオリエンタルベーカリーはインパクトのあるクリエイティブを新規開拓の突破口に活用した好例。関東圏に販路を広げるという課題にチャレンジし効果を上げています。日本郵便特別賞のアジュバンコスメジャパンはプレス向け発表会の案内状とその封筒にスタイリッシュな素材・デザインを施しています。BtoBの活用は様々な可能性を秘めているといえそうです。
紙からオンラインへの連携進む コスト効率化も背景のひとつに
二次元バーコードを掲載しオンラインへ誘導するDMは多く見られます。こうした傾向はより広まっていくものといえるでしょう。
銀賞のガリバーはリアルの展示会への案内状ですが、足を運ぶことができない場合はオンラインでも訪問できることを訴求し、ダブルで集客を図ったのが特徴。そのため、二次元バーコードをメインの位置に置いたクリエイティブが目を引いています。このケースでは、ビジネス機会拡大のためにより間口を広げる意図でオンラインへの誘導を設けたものといえます。
Webがもたらす効果のひとつに、オンライン上でのユーザーの行動を把握できることがあります。銀賞のアシックスジャパンはパーソナライズ化された商品訴求策に二次元コードからのアクセス把握を活用しています。こうした情報アクセスへの設計は今後より進化が期待される分野といえます。
DM施策に影響を与えつつある環境変化のひとつに、様々なコストの増加があります。用紙代ほか資材にかかわるコスト、発送に伴うコストともに高まる傾向にあるためです。DMに掲載する情報の一部をオンラインに掲載することで、トータルコストの削減を図るようなケースも増えてくると思われます。
銅賞のニチレイフーズはオンライン誘導ではありませんが、情報を取捨選択して掲載量を減らしたことで効果を上げたケースです。従来のカタログ送付を見直しA4サイズ4ページの圧着型にし、サービスのメリットを分かりやすく伝えるなどの工夫を凝らしています。
手触り感のあるクリエイティブ 周囲との感動の共有はDMならでは
DMの特長として、形のある、手に取ることができるものであることは今も昔も変わりません。ただ、ネット広告全盛の時代にあってこの特性に対する注目度はより高まっているといえるでしょう。
グランプリの北海道産地直送センターのほたてDMや銀賞のオリエンタルベーカリーの「パン」をかたどったクリエイティブなど、感情に訴えかけることができるのはDMならでは。社員とその関係者向けイベントへのインビテーション(招待)キットを詰め込んだ銅賞のリクルート(P64)は、社内デザイナーらによるオリジナルグッズによってイベントへの期待感を高め、会社と従業員とのエンゲージメントを強固なものにしています。
印刷や加工の技術で特別感や遊び心を演出することができることもポイント。HOYAビジョンケアカンパニーは、紫外線の量によって色が変化するメガネの「調光レンズ」の特性を伝える目的で、特殊印刷を用いてレンズの疑似体験ができるDMを作成しました。広告制作会社のハタジルシは、採用活動の一環として実施している宿泊を伴うインターンシップの参加を促すため、箔押しや封蝋を施した「招待状」をサプライズで送付し、学生の感情に訴えかけました。
金賞の常磐興産は、スパリゾートハワイアンズの来場促進の一環で、訪問前は旅行の計画書として、帰宅後は楽しい思い出を記した旅行記として残しておくことができるDMを送り効果を上げています。前年に好評を博した企画で、さらにブラッシュアップを施しました。銀賞の南相馬市は、18歳を迎えた市民に向けポジティブなメッセージとともに、「自治体らしくない」DMを送り驚かせました。こうしたケースは、受け取った本人だけでなく、家族など周囲と共有する楽しみもDMの特性であることを示しています。
各賞の詳細は「全日本DM大賞」公式Webサイトに掲載
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『【事例で学ぶ】成功するDMの極意 全日本DM大賞年鑑2024』
編集・発行:宣伝会議/編集協力:日本郵便、1,980円(税込)
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