生成AIのマーケ活用を本格化 アドビサミット、2024年の目玉は

写真 adobesummit

テーマは「生成AI時代の顧客体験管理(CXM)の未来像」

今年の「Adobe Summit」は、生成AIに関連する話題が目白押しだ。

アメリカ・ラスベガスで3月26日から28日(現地時間)にかけ、アドビが主催する年に一度のデジタルエクスペリエンスのカンファレンス「Adobe Summit 2024」が開催されている。

写真 Adobe Summit
「Adobe Summit 2024」の様子。会場はラスベガスの「The Venetian Convention and Expo Center」。一部のセミナーはオンラインでも視聴可能。

初日の26日には基調講演が開催され、今回のテーマとして「生成AI時代の顧客体験管理(CXM)の未来像」が掲げられた。昨年までも生成AIを搭載した「Adobe Firefly」と「Adobe Express」の企業版を提供開始するなどAIに関するトピックは見られたが、テーマに「AI」が組み込まれたのは今回が初。昨年のテーマである「Experience led growth(エクスペリエンス主導の成長)」からもう一歩踏み込み、生成AIとリアルタイムのインサイトを通じてより大規模なパーソナライゼーションを実現する、アドビの新機能の数々が発表された。

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「Adobe Summit 2024」の基調講演より。写真はアドビのチェアマン&CEOのシャンタヌ・ナラヤン氏。「AIによってすべての事業が加速する」と話す。

今回発表された機能の目玉は、顧客体験を提供・測定・パーソナライズするためのプラットフォーム「Adobe Experience Cloud」における生成AIを活用した新機能「Adobe Experience Platform AI Assistant」と「Adobe GenStudio」だ。

「Adobe Experience Cloud」は世界で1万1000社以上が、また「Fortune 100」(米『Fortune』誌による、全米の企業の総収入ランキングの上位100社)にリストアップされる企業のうち87%が導入しているサービス。

「Adobe Experience Platform AI Assistant」は、「Adobe Experience Cloud」のデータ基盤である「Adobe Experience Platform」のアプリケーション内で、マーケティングキャンペーン戦略に関する質問を、会話をするかのようにできる機能。データの理解やワークフローの合理化に役立つもので、例えば「主な顧客層は?」などと質問をすると、年代や対象層などを会話形式で回答する。キャンペーンの成果のシミュレーションや、カスタマージャーニーの生成などにも対応している。

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「Adobe Experience Platform AI Assistant」の操作画面。

Adobe Experience Cloudのシニアバイスプレジデント、アンジュル・バンブリ氏は「(Adobe Experience Platform AI Assistantにより、)ブランドは個々の顧客のコンテキストを理解した上で、カスタマイズされたオムニチャネルの体験を提供できるようになります。これにより、ブランドが厳格なガバナンスとセキュリティ管理を確実に遵守しながら、生産性を高めることができます」とコメントしている。AI Assistantは現在ベータ版を提供中で、本格提供時期は未定。

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Adobe Experience Cloudのシニアバイスプレジデント、アンジュル・バンブリ氏。

一方「Adobe GenStudio」は、企業のマーケティング部門や広告会社の担当者が、「Adobe Experience Cloud」と「Adobe Creative Cloud」(「Adobe Photoshop」や「Adobe Illustrator」など、グラフィックデザインや動画制作のためのアプリケーション群)を横断してブランドに沿ったコンテンツを効率よく計画、制作・管理・アクティベーション・測定することができる、生成AIをベースとした機能。

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Adobe GenStudioの使用画面。
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生成したコンテンツを、メルマガやX、Facebookなどの配信したいチャネルに向けた画像にワンクリックで変更可能。
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ブランドのアセット管理も容易に。

Adobe Experience Cloud担当兼CMOのエリック・ホール氏は、次のように説明する。「世界有数の企業や広告会社が当社と提携し、コンテンツサプライチェーンを加速させています。アドビは、Adobe Experience CloudとAdobe Creative Cloudにアプリケーションを組み合わせ、生成AIをネイティブに統合することで、チームの生産性を高め、大規模なパーソナライゼーションの展開を実現していきます」。

基調講演にはまた、Adobe GenStudioを活用してコンテンツサプライチェーンをスケールさせた事例として、ファイザーのチーフデジタル&テクノロジーオフィサーであるリディア・フォンセカ氏が登壇。

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ファイザーのチーフデジタル&テクノロジーオフィサー、リディア・フォンセカ氏。

リディア氏は、同社で新薬などが開発された際に医師や患者などさまざまなステークホルダーとコミュニケーションをとる必要があると話し、その際に「Adobe GenStudio」を活用したところ「チームがコンテンツを作成することで、複雑な審査プロセスを通過するための効率的なコンテンツサプライチェーンを構築できました。市場投入までの時間が短縮されたほか、運用コストも削減されました」とコメントした。Adobe GenStudioは2024年7月以降にサービス開始を予定している。

そのほか、アドビはMicrosoftとの連携を拡大することを発表。Adobe Experience Cloud の顧客体験インサイトや、テキストを入力することで画像を生成するAI「Adobe Firefly」を、「Microsoft 365」と直接統合することで、ワークフローの刷新と生産性を高める機能をマーケターに提供するという。「Copilot for Microsoft 365」も対象となる。

アドビはまた、Havas、IPG、Omnicom、Publicis、WPP などの広告会社や、アクセンチュア、デロイト、EY、IBM、などのSIerと協業し、デジタルマーケティングからクリエイティブ制作までを横断して、生成AI への投資や業務効率化を進めていく考えだ。

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