2024年3月に開催された講演会「アドタイ・デイズ2024(春) 東京」に、LMIグループ 取締役副社長 共同創業者の望田竜太氏、モバイルバッテリーのシェアリングサービス「ChargeSPOT」を手掛けるINFORICH 代表取締役社長 秋山広宣氏が登壇。リテールメディアに焦点を当て、リアルメディアの可能性について語った。
リアルメディアの可能性を考える
サードパーティーcookieの廃止を踏まえ、望田氏は「ポイントは個人情報を保護しながら、生活者の方から合法的にデータを得ること」と話し、リアルメディア、特にリテールメディアにおける可能性を3つ挙げた。1つは、Webに負けないトラフィック数だ。Instagramの日本のデイリーアクティブユーザーが1100万人に対して、小売店で1番来客の多いセブンイレブンでは1日2000万人が訪れるという。1社だけでなく、いろいろな小売店と掛け合わせると、かなりのトラフィック量が生まれることがわかる。2つ目は、リテールメディアにおけるファーストパーティーデータを用いてデータ活用ができる点。そして3つ目がコンテクストマーケティングができる点だ。店舗に消費者が訪れた理由、求めているものなどを落とし込んだ上で広告を配信できると、ターゲティングの精度が上がると考えられる。
次に、リアルメディアが必要な理由として、スリーヒットセオリーといわれる、広告効果を発揮するために消費者と3回の接触が必要だという理論を紹介。さまざまなポイントで広告に接触すると、購買や行動につながるため、この考えがリアルメディアでも活用されている。加えて、一般的にWeb広告のコンバージョン率は2割だといわれており、残りの8割を狙うためにもリアルメディアへの掲出が必須で、「リアルメディア、特にリテールメディアにとても可能性を感じています」と望田氏は語る。
メディアとして選定した理由は?
そんなリテールメディアの可能性に着目し、LMIグループはINFORICHと協業。PoCに取り組むことを決めたという。
INFORICHは、モバイルバッテリーのシェアリングサービス「ChargeSPOT」を事業としており、コンビニエンスストア3社、キャリア、駅などを中心に日本国内に約42,400台(2023年12月時点)を設置、世界7拠点で展開中。バッテリースタンドに付いたサイネージを広告配信先として活用している。「ChargeSPOT」は月間208万回のレンタル実績があり、借りる・返す際にサイネージに一度近づかなければならないという点が広告としての魅力になる。また、サイネージは最大6分間で、15秒おきに広告を流し、自社広告を2分間、他社広告枠として2分間販売。残り2分間を設置先のキャンペーン用とし、設置のメリットを感じてもらっているという。秋山氏は「コンビニエンスストアのほかに、ドラッグストアや駅、空港にも設置しており、いろいろな掛け算ができ、かつ生活者との接点がとれることがポイントです」と話す。
広告としてのリテールメディアとは
今のリアルリテールメディアは、店舗で販売している商品の広告を流すというスタイルで、販促を目的としたものだ。「そこに商品を置いていない人でも広告を出していけると、購買体験の価値につながると思います」と望田氏は話す。
そこで2023年11月にリリースされたのが、消費者へのリワード提供型広告を行う「AdCoinz®」だ。消費者・広告主・小売店にとって三方よしを目指す広告プラットフォームだという。具体的には、店舗サイネージにAIカメラを入れ、交通量や視認量のデータを収集。消費者がサイネージ上のQRコードを読み取り、広告主の求めるコンバージョンポイントまでたどり着くと、広告の設置場所であるリテールで使えるクーポンを手に入れることができるサービスだ。消費者にとっては、その場で即時に使えるお得さもあり、誘発性のあるものになっている。
「ただ、注意しなければならないのは、店舗に来ている消費者の属性をしっかり認識して、本当に当てはまる広告主のコンバージョンへつなげないといけません。カラオケ店では、食事の持ち込みをしたいというニーズをふまえて、フードデリバリーの広告、書店には学びや投資に関わる広告など、マッチングが重要です」(望田氏)
リアルメディアでデータ収集・分析が可能に
これまではリアルメディアにおいてデータ収集が課題とされていたが、AIカメラとトラッキングシステムを組み合わせることで、サイネージ視認からQRスキャン数、コンバージョンまでデータを集めることが可能に。店舗へのデータ提供の観点だと、クーポンの利用数まで確認することができるため、各ポイントでの課題などダッシュボード化してデータ提供もできるという。視認に関しては、年齢・性別のデータを取り、狙った層にキャンペーンが届いているのか確認もすることも可能だ。
「消費者ファーストで意味のある広告情報を伝えて、さらに生活者に行動していただくために、お返しとしてリワードを返していくことで、リテールという場所の体験価値を上げることにつながります。店舗には置いていない商品だけれど、親和性があり、トライしてみようと思ってもらえるような広告にしていきたい」(望田氏)
「サイネージ提供という協力ですが、今回を1つのモデルケースとして捉えて、海外でも取り入れることができることを楽しみにしています」(秋山氏)
お問い合わせ
LMIグループ株式会社 リテールメディア部
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担当:園内俊昭