パスを持たないフリー記者にも取材の機会を
野球を取材する記者は、各社の番記者だけでなく、フリーの記者もいます。
番記者はNPB(日本野球機構)パスを持っていて、それを見せれば取材申請の必要はありませんが、パスの無いフリーの記者は毎回取材の申請を出さなければなりません。球場内にある記者席には各社の社名が貼ってあるため、席も用意されていない環境で取材をされています。
我々が伝えたいのは、メディアの向こう側にいるファンです。今、ファンが情報を得る媒体も多様化していますし、メディアの看板だけで取材の許可を判断するのは、企業広報をやっていた感覚からすると「公平性の原則」に沿っていないと思いました。私は、番記者さんもフリーの記者さんも公平に対応しなくてはいけないと考えています。
ある夏の試合当日、とあるフリーの記者が取材に来ました。その日は湿度が高いうえ、顔色が悪く体調が優れない様子でした。エアコンが効いている屋内の記者席を案内しましたが、席には各社の社名が貼ってあるため「そこには入れない」と言うのです。
そのため、私がアテンドをして空いている席に座ってもらいました。私はこれに違和感を感じ、それからアルバイトさんに記者席の稼働状況を毎日確認してもらい、記者席を束ねる幹事の方とも相談し、2024シーズンから室内74席中9席をフリーの記者席にしてもらいました。
ライオンズの春季キャンプ地は宮崎県日南市で行いますが、番記者さんがいるような大きい会社は出張費も宿泊費も出ます。しかしフリーの記者はインバウンドも活況でホテル代なども高騰している今、高額な費用を自ら支払って取材に来てくれます。
その他も大手メディアの記者が当たり前のようにやっていることを、フリーの記者はできないことも。これは一般社会における正規雇用と非正規雇用でも同様ですね。
よってフリーの記者には、気を配りすぎるくらいに配慮をして、ちょうどいいのではないかと思っています。これは、今後お話しする「危機管理」にも生きてくると考えています。
このように従来の慣習にはとらわれず変えていくべきところを変えていこう、という提言ができるのも、社内の論理に留まらずステークホルダーとの対話を繰り返してきた企業広報の仕事の経験があってこそだと考えています。
次回はさらに踏み込んで、これまで「攻め」とは無縁だった「球団広報の変革」についてお話しします。