高くても満足してもらえる商品を開発
ドラッグストアがレッドオーシャンである冷食市場に「味」で勝負を仕掛けた。ウエルシア薬局は、プライベートブランド(PB)「からだWelcia」の新商品として初の冷凍食品を開発。顧客の声を反映して作った餃子と炒飯を展開する。低価格帯の競合商品も多い中、強気の価格設定だが、副社長兼商品物流担当の桐澤英明氏は「我々が作りたいのは高くても、お客様に満足してもらえる商品」と話す。ターゲットは30~50代の男女で、現在一番売れているナショナルブランド(NB)商品の3割の売上規模を目標に掲げる。
4月18日に「黒豚をちゃんと感じる幸せの肉餃子」(税込429円)、5月21日に「あの店主がつくったメニューにはない炒飯」(税込321円)を発売する。2023年に「ドラッグストアにあったらうれしい食品」に関するアンケート(2018回答)を実施したところ、冷凍おかずを求める声が多かったことから商品開発をスタートした。
冷食市場は好調に推移しており、日本冷凍食品協会の調査によると、2022年の冷凍食品の消費量は約290万トン(前年比2.3%増)、1人当たりの消費量は23.9キログラム(同3.3%増)だった。国内生産額は同4%増の約7639億円で、3年連続で伸長している。
コロナ禍で外食需要が低迷したことで冷食の需要が高まり、百貨店などでもコーナーを新設する動きが見られ、市場競争は激しさを増している。特に餃子と炒飯は激戦区で、2022年の国内生産量では餃子は約10万トン(構成比6.4%)で3位、炒飯は約9万8000トン(同6.2%)で4位だった。安価な競合商品も多い中、同社は顧客のニーズをできる限り具現化した新商品で挑む。商品企画部の岡本貴部長は「競合は多いが味で勝負できる」と自信をのぞかせた。
商品開発では、冷凍餃子に関するアンケート調査(1749人回答)も参考にしており、最も購入者が多かった「肉餃子」を選択。餃子に求める要素では「具材の量が多いこと」「肉汁があふれること」「皮が薄いこと」「大きめのサイズ」を求める声が多く、試行錯誤を重ねてこれらの要望を実現した。0.6ミリの薄皮に食べ応えのある量の具材を包み、ジューシーさを国産の「あごだし」で引きだした。肉は鹿児島県産の黒豚のみ、野菜も国産だけを使用している。
「あの店主がつくったメニューにはない炒飯」は、「TRYラーメン大賞」の総合大賞など数々の受賞歴を持つ人気ラーメン店「ラーメン屋 トイ・ボックス」(東京・荒川)が監修。同店こだわりの「鶏油」や「醤油」を使用している。
ウエルシアのPB「からだWelcia」「くらしWelcia」はヘルスケア、ビューティーケア、食品、日用品の4カテゴリで、価格でなく高付加価値をコンセプトとしている。2023年12月時点で270以上の商品を展開しており、2026年度までに400SKU(=商品の最小管理単位)を目指す。
ウエルシアの加工食品は中堅スーパーと同等の売上規模を誇り、スケールメリットを背景とした商品開発力を強みとしている。食品開発では親会社イオンのPB「トップバリュ」と競合しないよう、開発企業と意見を交換。トップバリュが扱わない高価格商品をウエルシアが開発することもある。価格ではなく味を重視した今回の冷凍食品は、既存のトップバリュにはない商品として期待を寄せている。
桐澤氏は「商圏人口が減っていく中で、客単価をあげるためには食品や日用品を広げていく必要がある」と話す。あくまで中核はヘルス&ビューティーだが、健康意識が高い顧客が多いドラッグストアの強みを生かし、両PBを美味しさと健康の両軸で訴求する考えだ。