社内ブランドがシームレスに社外につながる構造をつくる
これからのインターナル・コミュニケーションはどうあるべきなのか。相山氏は会社と従業員の関係性が「拡大志向から共感志向」「利益優先から目的(パーパス)優先」「求心力が利害関係から志・信念」にそれぞれ転換していることなどを理由に挙げ、コミュニケーションを本質的に転換する必要があると主張する。変わりゆく価値観の中で双方が求める関係性を明らかにし、合致させることが高いエンゲージメントにつながるというのが相山氏の考えだ。そして、そのためにもMVVの社内への浸透が求められているのだ。
最近では社内報とオウンドメディアが融合するケースが増加していると相山氏は言う。その象徴的な存在が、トヨタ自動車がリリースしている「トヨタイムズ」だ。社内(=インターナル)な取り組みなどを社外(=エクスターナル)に発信し、“裏表のない”コミュニケーションを実現しようというものだ。ここでは「新たなインターナル・コミュニケーションへの挑戦」という言葉が明文化され、会社のブランドを強力な発信力でアピールすることに成功している。
相山氏はトヨタイムズの事例について「裏表がないところが狙い」と分析している。会社が存在する意義(目的/パーパス)に基づいて策定したMVVやブランド定義を、経営計画や人事制度に浸透させることで、従業員の選択・判断・行動に反映されるように設計されている。その結果、製品やサービスに会社のエッセンスがアウトプットされ、グループ会社や従業員の家族、そして顧客…といったように、外部・ステークホルダーにビジョンが波及するという。しかし、従業員や製品、サービスが理念を体現できていないと、評価が落ちることにつながりかねない。「まずは従業員のブランディングを浸透させてからアウトプットするのが理想です」と相山氏は語る。
社内にブランディングを導入するための基本的なフレームワークを「認知(MVV)」→「(背景を含めた)理解」→「納得」→「実践」→「定着」と紹介した相山氏だが、これはあくまでも一例に過ぎない。「会社ごとに個性も魅力も違うので、教科書通りの対応をするのではなく、要素をしっかりと洗い出して戦略を設計することが大事です」という相山氏。エンゲージメントの源は各社それぞれであり、インターナルブランディングの定型は存在しない。エンゲージメントの低下に悩んでいる企業の場合、まずは「社内にMVVを浸透させる」ためのコミュニケーションを見直してみる必要がありそうだ。
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