ECやD2Cと大手メーカーのLTVには解釈に差異が
それでは、LTVを向上させる具体的な取り組みを考えていきましょう。LTVを上げるためには主に、購入単価を上げる/コストを下げる/購入回数を増やす(購入頻度を上げる)/継続率を上げる(解約率を下げる)といったことがよく挙げられます。
しかし、これは顧客と直接つながり、顧客ごとの購買データから最適な1to1マーケティングがかなうECやD2C事業者は実現できますが、販売チャネルの大半を大手流通チェーンに依存し、顧客の購買データを直接保有することのできない大手メーカーには実現困難な取り組みだといえるでしょう。
もし、調査会社などによるID-POSデータを得られても、どうしても拡大推計にならざるを得ない大手メーカーの場合、自社の商品を「いつ、誰が、どの店で、どのくらいの量を、どのくらいの頻度で」購入してくれているのか、さらにそれが「新規購入なのかリピート購入なのか」も正確にはわからないからです。
そのため、大手メーカーがLTVを向上させる方針を打ち出した場合、ほとんどは「ファンマーケティングによるロイヤルティ向上」や「ロイヤルティ向上による再購入意向の向上」を指す場合が多く、ECやD2C事業者がデータドリブンにLTV向上を目指す活動とはニュアンスが違うことに注意する必要があります。
販促と相反するLTVに向き合うべき理由
前述した計算式の通り、LTVを向上させるためには、購入単価や頻度を上げる必要があります。
もし購入頻度を向上させたい場合には、エンドでの特売や定番値引きキャンペーンなどの販促施策が有効になるでしょう(図2)。しかし、これら価格主導型プロモーションの乱発は消費者の参照価格を引き下げ、ブランド価値を毀損させてしまう可能性があります。そのため、ブランド価値が下がれば店頭価格も下がり、購入単価も下がってしまうという悪循環につながってしまうのです。
次ページでは、販促担当者がLTVに寄与できる領域を詳しく解説