ブランド体験を訴求できる実演販売などで差異化へ
ではどうすればよいのでしょうか。その鍵は、非価格主導型プロモーションにあります。
というのも、一般消費財メーカーの売上獲得において最も重要なのは売り場、つまり店頭です。非計画購買が多いスーパーであればなおさら、店頭の刺激による購入促進はダイレクトに「顧客の購入回数」に影響を与えることができます。ここではいかに価格主導型プロモーションを“減らせるか”が重要です。
私の考えでは、店頭での実演販売や商業施設内でのタッチ&トライイベントに勝機があると思っています。しかし、このような施策は、小売チェーンとの細かな調整や協力金、オペレーションコストも要する割には、大きなリーチを得られない「非効率」な施策として位置づけている人も多いでしょう。なのになぜ、実演販売やトライアルイベントを有効と考えるのでしょうか。
それは、コモディティ化による価格競争の荒波にもまれる商品こそ、背景に持つ技術やこだわり、ブランド体験を訴求することが競争優位の源泉になると考えるためです。
価格主導型プロモーションに依存しないこれからの戦略
可能な限り効率的に多くの物量をさばきたいメーカーの大半は、テレビCMによるマス広告と、大手流通チェーンの店頭における価格主導型プロモーションを戦略軸にします。しかし、考えることは競合も同様です。つまり店頭は「同じ戦略を練る企業が真正面からぶつかり合う、削り合いの場」になっているのです。このゲームで勝利するのは、最も多くの宣伝および販促予算を投下した企業になります。
しかし、この戦いの延長線上にあるのは、価格主導型プロモーションを止めてしまうと、すぐに売上が低下するという悪循環です。要は売上を保つために、来年も、再来年も、値引きや価格主導型プロモーションを続けなければならない状態から脱することが難しくなっていきます。
そう考えると、健全で持続可能なLTVの向上は、できる限り価格主導型プロモーションに依存しない状態で、いかに「お客さまに買い続けていただけるか」を実現させるかが重要となってくるのです。
戦略をシフトできるかの分岐点 今後のLTV向上に向けて
LTVに最も影響を与えるのは製品そのもののパフォーマンス力と、その価格でも買い続けたいという価格ロイヤルティの高さです。そのため、LTVの向上は、企業やブランドを挙げて全部署が連携して取り組むべき一大テーマになります。しかし、全部署の連携は理想論であり、取り組みのハードルが高い。だからこそ、販促部署単独でも、実演販売やイベントを軸とした非価格主導型プロモーションに取り組む必要があるのです。
ここまで読まれた方からは、「非価格主導型プロモーションを増やし、価格主導型プロモーションを減らしたら、月や年単位の短期的な獲得売上が下がってしまい、年度の売上目標を達成することができない!」という声が聞こえてきそうですね。
しかし、戦略とはトレードオフです。販促予算を増やしながら年間のLTVを最高にする価格主導型プロモーションを打ち続けるか、どこかで非価格主導型プロモーションの割合を増やし、健全かつ持続可能な売上を増やす取り組みにシフトするか、各社の戦い方が問われます。
最後に、売上にはトライアル売上とリピート売上の2つしかありません。トライアルもリピートも、いかに価格主導型プロモーションから脱却する流れをつくることができるか。今こそ、その真価が問われているのかもしれません。
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